最大限を知る日

✳︎






春の午後。

窓から差し込む光が、部屋の床に長く伸びていた。

私は机の前に座ったまま、
何度目か分からない時計を見上げる。

(そろそろ……)

雄英高校の合格発表。

郵送で届くと聞いている。

けれど、待っている時間は思ったより長かった。

入試のことを思い出す。

巨大ロボット。

瓦礫に挟まれた女の子。

そして――

緑色の髪の男の子。

(あの子……)

あの一撃。

ポイントにならない敵に向かって、
それでも迷わず飛び込んだ。

ヒーローみたいだった。

でも。

(得点、0って言ってたよね)

思い出すと、少し胸がざわつく。

あの後、どうなったんだろう。

その時。

――ピンポーン。

インターホンが鳴った。

私は椅子を蹴るように立ち上がる。

玄関へ走る。

「はーい!」

ドアを開けると、配達員の人が立っていた。

「雄英高校からのお届け物です」

(来た)

胸が一気に高鳴る。

私は封筒を受け取った。

大きな白い封筒。

そこにははっきりと書かれている。

雄英高校

ヒーロー科。

「……っ」

手が少し震える。

私は急いで部屋へ戻り、封を切った。

中に入っていたのは、小さな機械。

(……?)

スイッチを押した瞬間。

柔らかな電子音と共に、ホログラムが立ち上がる。

そこに現れたのは――

小柄な体。

白と黒の毛並み。

スーツ姿の知的な姿。

雄英高校校長。

根津

「やあ、受験生の諸君」

穏やかな声が、部屋に響く。

「雄英高校へようこそ」

私は思わず画面に近づいた。

根津校長は楽しそうに続ける。

「君の実技試験の結果は
――とても興味深いものだった」

胸がドキンと跳ねる。

「雄英高校ヒーロー科は、
単に敵を倒す能力だけを評価するわけではない」

校長の目が、優しく細くなる。

「ヒーローとは、人を救う存在だからね」

私は思わず、あの瞬間を思い出した。

瓦礫。

悲鳴。

助けた受験生。

そして――

緑色の髪の男の子。

「その行動を含め、総合的に判断した結果」

一拍。

「君は――」

私は息を止める。

次の瞬間。

「雄英高校ヒーロー科に、合格だ」

一瞬。

本当に一瞬、頭が真っ白になった。

「……え」

言葉が追いつかない。

でも次の瞬間。

胸の奥から、何かが一気に溢れた。

「……やった!!」

気づいたら、声が出ていた。

思わずその場で飛び跳ねる。

「やった!!やった!!」

手を握りしめる。

胸がいっぱいで、じっとしていられない。

(合格……!!)

雄英高校。

ヒーロー科。

私、本当に――

「受かった……!」

思わず笑いがこぼれる。

体の奥が熱い。

嬉しくて、胸がぎゅっとなる。

「やったぁ……!」

そのままベッドに倒れ込む。

枕に顔を埋めて、もう一度叫ぶ。

「やったーーー!!」

声が部屋中に響く。

少しして、私は天井を見上げた。

胸の鼓動がまだ速い。

でも、気持ちははっきりしていた。

私はゆっくり起き上がる。

封筒をもう一度手に取る。

雄英高校。

ヒーロー科。

私は小さく拳を握った。

「よし」

胸の奥で、星みたいな光が灯る。

次は――

雄英高校。

ヒーロー科A組。

そこから、全部が始まる。








✳︎



..