私は仮面のヴィランを追い掛けた。
木々を跳ぶように移動するその影を、
視界から外さない。
足に纏わせた光粒子が空中で弾け、
次の一歩を押し出す。
足場を作らずとも加速できる――
この距離なら、まだ追い付ける。
(捕まえる)
一直線に距離を詰める。
「速ッ…!!?」
仮面のヴィランが振り返る。
その一瞬。
「爆豪くんと常闇くんを返して!」
光粒子を収束。
輪を形成し、腕と胴体をまとめて拘束する。
――捕えた。
「!?、んだこれ…、
でも拘束が甘いよ学生さんよ!」
指が光に触れた。
ポンッ、と軽い音と共に輪が消える。
(消えた…)
壊されたんじゃない。
“触れて消された”。
(近寄りすぎちゃ駄目だ)
距離を保つ。
(もう一度――)
今度は同時に拘束する。
そう思って手を伸ばした瞬間。
「今度は俺からのプレゼント」
弾かれた小さな球体が、こちらへ飛ぶ。
「なに…?」
次の瞬間。
視界が塞がれた。
「え…!?えええー!!」
巨大な岩が、目の前に出現する。
そのまま、落ちてくる。
(避ける…?)
一瞬の判断。
でも――
(下に誰かいたら)
足が止まる。
(駄目だ)
避けない。
(止める)
光粒子を一気に展開する。
岩の表面に沿わせ、均一に配置。
圧縮。
固定。
落下が、わずかに鈍る。
でも止まらない。
じりじりと押し込まれる。
(……集中)
余計なことは考えない。
押されても、崩さない。
そのために――
(ブーツ、いらない)
足の光を解く。
機動を捨てる。
制御に、全部回す。
その瞬間。
自分の体が、重力に引かれる。
(落ちる)
分かってる。
それでも。
(優先はこっち)
岩の固定を続ける。
下を見る。
誰もいない。
(今)
固定を解除する。
ドンッ、と鈍い音を立てて岩が地面に落ちた。
同時に、私の体も落ちる。
「っ…!」
枝にぶつかる。
葉が散る。
体が回転して、背中から地面に叩きつけられた。
衝撃で、一瞬呼吸が止まる。
「……っ、は…」
空気を吸い直す。
痛い。
肩、背中、足。
でも――
(動ける)
問題ない。
「星宮さん!!」
上から声。
見上げると、木々の上を駆ける三人の姿。
緑谷くん、障子くん、轟くん。
(追ってる…)
安堵と同時に、
(爆豪くんが…!)
焦りが上回る。
すぐに立ち上がる。
足に再び光を纏わせる。
痛みはある。
でも止まる理由にはならない。
(行かなきゃ)
地面を蹴る。
再加速。
木々の高さまで一気に上がる。
視線の先。
仮面のヴィラン。
逃がさない。
ただそれだけを考えて、再び追い掛けた。
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