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一旦下に降りて、
今度は女子棟のエレベーターへ向かう。

(いよいよこっちか……)

さっきまで“見る側”だったのに、
今度は完全に“見られる側”。

(ちょっと緊張するかも)

そんなことを思いながら乗り込むと、
三階で扉が開いた。

トップバッターは響香ちゃん。

扉の前で足を止めたまま、少しだけ振り返る。

「まじで全員やるの…?大丈夫?」

(ちょっと嫌そう)

「大丈夫でしょ!多分!」

透ちゃんは軽い。

(この差すごいなあ)

「………ハズいんだけど」

そう言いながらも、響香ちゃんは
観念したようにドアを開ける。

中を覗いた瞬間、

「思った以上にガッキガッキしてんな!」

上鳴くんの声が響く。

(わあ……)

視界いっぱいに広がる機材。

キーボード、ドラム、ギター、アンプ。

色も赤、黒、白で統一されていて、
空気が完全に“音楽”。

(かっこいい……!)

自然と目を引かれる。

部屋というより、スタジオに近い。

上鳴くんと青山くんが余計なことを言った瞬間、
イヤフォンジャックが伸びる。

(あ、怒った)

容赦なく拘束されているのを見て、
少しだけ笑いそうになる。

(響香ちゃんの部屋、好きだなあ)

次は透ちゃん。

「次あたしー!」

ぴょんぴょん跳ねながら扉を開ける。

中は一気に雰囲気が変わる。

(かわいい……!)

ピンクの家具、花柄、ぬいぐるみ。

女の子らしさがそのまま詰まっている。

(分かりやすく可愛い)

見ていて楽しい。

その横で、峰田くんがこそこそと
タンスに手をかける。

案の定、

すぐに透ちゃんに止められる。

(当然だよね)

(私の時は絶対入れないようにしよ)

心の中でしっかり決める。

次は四階。

三奈ちゃんが勢いよく前に出る。

「じゃーん!!カワイーでしょーが!」

扉が開く。

(すごい……)

柄、色、装飾。

全部が主張している。

(派手だ……!)

いわゆるギャルっぽい部屋。

でも不思議とまとまっている。

(これもセンスなんだろうなあ)

目が少しチカチカして、瞬きをする。

次はお茶子ちゃん。

「何もない部屋ですが…」

少し照れながら扉を開ける。

中は――

(落ち着く……)

派手さはない。

でも、どこか安心する空間。

ローテーブルに置かれた煎餅と急須。

(生活感あるなあ)

自然体。

(こういうのもいいなあ)

「次は綺羅ちゃんだね!」

透ちゃんの声。

皆んな楽しみにしてそうだけど、

「でも皆んなの部屋見てると、
私のもつまんないと思うなあ」

正直な感想が口から出る。

(派手じゃないし)

そう思いながら扉を開ける。

――一瞬、静かになる。

「おしゃれ!!」

「大人!!」

「なんか良い匂い!」

(え、そんなに?)

少し驚く。

自分では普通に整えただけのつもりだった。

(ちょっと安心したかも)

「こ…これが良い女の匂い…!?」

峰田くんが変なことを言い出す。

(うわ来た)

即座に響香ちゃんのイヤフォンジャックが
首に巻き付いた。

「これ宝石!?」

三奈ちゃんが棚に身を乗り出す。

「それはパワーストーンだから
そんな高価じゃないよ」

自然に説明する。

「星宮って風水とかそっち好きなん?意外だなー」

瀬呂くんの声。

(確かにスピリチュアル系に見られるのか)

「綺麗なものが好きってだけだから、
あんま気にしてない!」

特別な意味はない。

ただ、好きで置いているだけ。

「でも綺羅っぽくて好きー!」

「あはは!ありがとー!」

三奈ちゃんの素直な言葉に嬉しくなった。

そして五階へ。

「次は蛙吸さん…」

緑谷くんが周りを見渡して私も釣られて見るけど、

(あれ、いない)

「ってそういや梅雨ちゃんいねーな」

切島くんの声。

「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい!」

お茶子ちゃんがすぐに答える。

(そっか……)

あの夜のことが、少し頭をよぎる。

「優れんのは仕方ないな。
優れた時にまた見してもらおーぜ」

上鳴くんの言葉に、自然と頷く。

(梅雨ちゃん大丈夫かな…)

そのまま八百万さんの部屋へ。

「さあ!ラスト!ヤオモモのお部屋〜!」

三奈ちゃんが扉を開ける。

瞬間、

「ベッドでかあ!!?」

全員の視線が中央に集まる。

(大きい……)

部屋の大半を占めるベッド。

それだけで空間が埋まっている。

机や椅子もあるけど、どれも一つ一つが高そうで、

(なんか圧がある)

「お部屋がこんなに狭いとは思ってもおらず…」

八百万さんが少し申し訳なさそうに言う。

(狭い……?)

感覚の違いに少し驚く。

(やっぱりお嬢様なんだなあ)

改めて実感する。

全部見終わって、共有スペースに戻る。

匿名投票。

(どうなるんだろ)

結果――

(口田くんか)

理由ははっきりしている。

(うさぎ強いよね)

少し納得する。

峰田くんや上鳴くんは不服そうだけど、
可愛いが勝つから仕方ない。

「終わったか?寝ていいか?」

轟くんの声。

(限界そう)

「終わるまで待ってたのんだ…」

緑谷くんの言葉に、

(律儀だな)

意外と人付き合いが良い轟くんに感心した。

そのままそれぞれ部屋へ戻ろうとした時、

「あっ、轟くん ちょ待って!」

お茶子ちゃんの声で足が止まる。

「デクくんも飯田くんも…それに、
切島くん八百万さん星宮さんもちょっといいかな」

(このメンバー……)

自然と視線が集まる。

(あの時の6人だ)

一瞬で分かる。

少しだけ空気が変わる。

足を止めたまま、頷く。

そのまま、お茶子ちゃんについて外へ出る。

(……何の話だろ)

さっきまでの賑やかさが、少しだけ遠くなる。








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