翌朝。
ゆっくりと目を開けて、上体を起こす。
視界に入るのは、
白とベージュで整えた自分の部屋。
見慣れているはずの景色なのに、
どこか違和感がある。
鼻に届くのは、いつも使っている
ルームフレグランスのやわらかな香り。
(……あ、寮か)
家具の配置が違う。
それだけで、ここが実家ではないとすぐに分かる。
(慣れるまで不思議な感じだ…)
軽く伸びをしてからベッドを降り、
スリッパを履く。
まだ少し寝ぼけたまま、
部屋着のまま廊下へ出て、
そのまま階段を下りた。
1階はすでに人の気配で満ちていた。
洗面台の方では、水の音と歯ブラシの擦れる音。
誰かの欠伸。ぼんやりした空気が漂っている。
寝癖のままのクラスメイトたちが、
思い思いに朝の支度をしていた。
(ほんとに一緒に住んでるんだなあ…)
昨日までの“非日常”が、
当たり前みたいに目の前にある。
「星宮おはよ」
「響香ちゃんおはよー」
ちょうど支度を終えた響香ちゃんとすれ違い、
自然に挨拶が交わされる。
その流れのまま、私も洗面台へ向かった。
歯を磨いて、顔を洗う。
冷たい水で一気に意識がはっきりしていく。
鏡を見ると、軽く跳ねた寝癖。
軽く手で整えてから、
いつものポニーテールにまとめる。
それだけで、いつもの自分に戻る気がした。
食堂へ向かうと、
すでに何人かは食事を終えかけていた。
(早い人ほんと早いなあ)
トレーを手に取り、洋食を選ぶ。
パンとスープとベーコンと
スクランブルエッグとコールスローサラダ。
ホテルのような朝食だった。
視線を巡らせると、緑谷くんと轟くんの姿が見えた。
「緑谷くん、轟くんおはよ」
「ほ、星宮さんおはよう!」
「はよ…」
いつも通りの丁寧な返事と少し眠たそうな声、
向かいの空いている席に座った。
「起きてすぐ皆んなに会うの
合宿の延長みたいだねー」
手を合わせてから、スープを一口。
温かさがじんわり広がる。
「確かに!これからずっと続くの
不思議な感じだね!」
「ああ…慣れねえ」
二人の前にはしっかりした和食。
(朝からちゃんとしてるなあ…)
「轟くんは実家が日本家屋だから
余計慣れるの大変そうだね」
「そのうち慣れるだろ」
淡々としてるけど、ほんの少しだけ
環境の違いを感じているようにも見える。
「星宮さんは朝パン派なんだね!」
「うん!食べるの遅いから
手軽さ優先しちゃった結果洋食派になったー」
そう言いながらパンをちぎる。
こうして普通に会話しているだけなのに、
少しだけ安心する。
(ちゃんと戻ってきたんだな)
昨日のことを思い出す。
笑って、謝って、泣いて、また笑って。
(“紡ぎ直した”って、こういう感じなんだ)
ふと視線を上げると、
窓の外の光が差し込んでいた。
新しい生活の、最初の朝。
それは思っていたよりもずっと、穏やかだった。
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