体育館γで始まった必殺技考案。
広い空間のあちこちで、
コンクリートの地形が変わり、分身が動き、
生徒たちの個性がぶつかり合っている。
(すご…もうバトル会場じゃん)
そんな中で、
私もエクトプラズムの分身と向き合う。
軽く踏み込んで、光粒子を足元に集める。
一気に加速して、間合いに入る。
蹴りを放つ。
――ヒット。
けど、
(浅い)
手応えはある。でも“決めた”感じじゃない。
距離を取って、今度は光弾。
パシュッ、と放つ。
当たる。でもやっぱり軽い。
(うーん…)
少し距離を取りながら、呼吸を整える。
自分は、出来ることが多い。
防御もできるし、拘束もできる。機動力もある。
でも――
(決定力が足りない)
それが一番しっくりくる。
光のブーツでのキックは近接向き。
光弾は中距離で便利だけど、まだ威力が弱い。
(“これで終わり”って技がないんだよね)
必殺技って、たぶんそういうものだ。
ここで決める、っていう一手。
(もっと可能性広げなきゃ)
手を軽く上げると、光粒子がふわっと集まる。
範囲はもう10メートルまで広がるようになった。
壁を作る。
形を変える。
曲げる。
(これ救助にも使えるし…)
考えれば考えるほど、用途は広がる。
(あーでも…)
やることが多い。
考えることも多い。
でも――
(やばい…めちゃくちゃ楽しい!)
思わず笑ってしまう。
もう一度踏み込んで、
エクトプラズムに向かっていく。
その時。
体育館の扉が開く音がした。
視線を向けると、
「やってるねえ皆んな!」
(あ!)
思わず顔が明るくなる。
そこに立っていたのは、オールマイト。
「私が呼ばれてないけど、
今日は特に用事もなかったので来た!!」
いつものテンションでポーズを決めて――
一瞬だけ、筋肉の姿になって、すぐに萎む。
(やっぱりまだ…)
右腕のギプスが目に入る。
「いや 療養してて下さいよ。後期に備えて」
「オイオイ つれないな 必殺技の授業だろ!?
そんなの見たいに決まってるんだよ。
私も 教師なんでね…」
(ほんと好きなんだなあ…)
少し安心する。
そのやり取りの最中、
ドォンッ!!
大きな爆発音。
思わずそちらを見ると、
「久々に暴れるとスッキリすらァ!
エクトプラズム!!死んだ!!もう一体頼む!!」
(元気だなあ…!)
爆豪くんが、容赦なく分身を吹き飛ばしている。
「彼は凄いな」
「ええ、もっと強くなりますよあれは」
(先生たちも評価してる)
その通りだと思う。
圧倒的な“攻撃”。
「爆豪くん張り切ってる!」
「あいつもう技のビジョン沢山あるんだろうな」
「入学時から技名つけてたもんね」
(そういえば…)
確かに最初からあった。
「オイラだってガキん時から温めてる
グレープラッシュっつう技あんぜ!」
「つーか誰でも一度は考えるだろ!
俺 電撃ソードとか考えてた!
こう…電気で剣をつくる的な!
それをこうやって実現出来るってんだから
テンションも上がるぜ!」
(男の子だなぁ…)
なんとなく、微笑ましくなる。
でも同時に思う。
(ずっと考えてきてる人も多いんだ)
その分、“型”がはっきりしてる。
その時、
「星宮少女」
(あ、)
声に振り向くと、オールマイトがこちらに来ていた。
「オールマイト!」
自然と笑顔になる。
「必殺技は順調かな?」
「うーん、元々の機動力や最近出来た防御と
拘束の技は名前を付けるくらいで、
形にはなっているんですけど…
私実はこれといった圧倒的な攻撃力を持つ
必殺技ってまだ無くて…
やれる事が多い分考える事も多いです」
話しながら、手のひらに光を集める。
無意識に、正二十面体を形作る。
(これも普通に出来るようになったなあ)
「うん。君の場合は、
もっと大胆に考えても良いと思う」
「大胆に?」
(え、そっち?)
ちょっと意外だった。
(精密の次は大胆って…振り幅すごいな)
「うん。攻撃性とも考えれば、
爆豪少年を参考にすると良い。
衝撃を与えると考えれば、近いのは彼だろう」
「爆豪くんから…」
視線を向ける。
ちょうどコンクリートの上で、
爆発を繰り返している。
BOM!BOM!、と連続する衝撃。
(攻撃的な個性だけど…)
でも、
(私とはちょっと違うよね)
そう思って視線を戻すと、
「何も全てではないよ。
個性伸ばしで鍛えた事を活かした
君らしい必殺技を期待している」
それだけ言って、オールマイトは離れていく。
(行っちゃった)
少しだけ呆気ない。
でも、
(ヒントはくれた)
手のひらの光を見つめる。
(大胆な攻撃性…)
ちらっと爆豪くんを見る。
(でも私の戦い方は中距離寄りに変えたし)
もう一度、光を動かす。
広げて、絞る。
(どう繋げる…?)
思わずその場で立ち止まる。
頭の中でぐるぐる考えながら、
「うーん…」
小さく唸る。
(もうちょいで何か掴めそうなんだけどなあ)
あと一歩。
その“形”が、まだ見えない。
✳︎
..