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オールマイトからのアドバイスの後、
私は自然と爆豪くんの方へ
視線を向ける時間が増えていた。

体育館γのあちこちで戦闘音が響く中でも、
あの音はすぐ分かる。

ドンッ、と空気が震えるような爆発。

その中心にいるのはやっぱり爆豪くんで、
次々とエクトプラズムを吹き飛ばしている。

(相変わらず派手…)

近接が多い。でも、
ただ突っ込んでるわけじゃない。

距離を詰める前に、爆破で牽制してる。

間合いを作ってる。

(あれ、ちゃんと考えてるんだよね)

当たり前だけど、改めて見ると分かる。

そして――

(爆破って、私の個性と確かに近い)

音と衝撃に目が行くけど、
その瞬間、確かに“光っている”。

手のひらから弾ける一瞬の光。

私の光粒子も、圧縮して解放すれば
同じように“弾ける”。

(仕組みは似てる)

音があるかないかの違い。

でも、

(衝撃を出すって意味では同じ)

視線を細める。

爆豪くんが中距離で放った爆破を思い出す。

入学してすぐの戦闘。

(あれ…)

ただの近接じゃなかった。

(距離あっても、ちゃんと当ててた)

そのイメージが、頭の中で重なる。

(光でやるなら…)

フラッシュで視界を切って、

そのまま圧縮して――

(弾く?)

ぼんやり形が見えかけた、その時。

「星宮さん!」

「ひゃっ」

急に声をかけられて、肩が跳ねる。

「ご、ごめん!驚かしたよね!?」

慌てた緑谷くんが手を振る。

「ううん!大丈夫!どうしたの?」

両手を振って大丈夫アピールしながら、
気持ちを切り替える。

(今のあとで考えよ)

「実は、足技を教えて欲しくて…!
飯田くんには昨日から教えて貰ってるんだけど、
色んな人の意見聞きたくて迷惑じゃなかったら…」

(足技?)

少し意外で、目を瞬かせる。

「足技?緑谷くんってこう…
殴り合いなイメージだったけど戦術転向するの?」

「う、うん!腕これ以上壊すとダメって
言われてるし、脚なら壊さずに調整して
戦えそうなんだ!」

(あー…)

納得する。

今まで何度も見てきた、あの無茶な戦い方。

腕を壊して、それでも前に出る。

(確かにそれはやばいよね)

思い出して、思わず苦笑いがこぼれる。

「私で良ければ任せて!何から教えれば良い?」

自然と前のめりになる。

こういうのは、教えるのも楽しい。

「えっとね…!」

少し離れた場所に移動する。

エクトプラズムの分身を一体借りて、軽く構える。

「まずは重心かな。蹴りって体全部使うから」

 足を軽く踏み込んで見せる。

「こうやって――軸ぶらさないようにして」

そのまま、軽く回転して蹴りを入れる。

パシッ、と乾いた音。

「今のは軽めだけど、
ちゃんと乗せると威力上がるよ」

振り返ると、緑谷くんは真剣な顔で見ていた。

「やってみて!」

「うん!」

ぎこちない動きで踏み込む。

バランスが少し崩れる。

「もうちょい腰入れていいよ!あと視線こっち!」

「あ、こう!?」

「そうそう!」

少しずつ形になっていく。

その様子を見ながら、

(いい感じ)

自然と笑みが浮かぶ。

でも頭の片隅では、
さっきのイメージが残っている。

(フラッシュ+圧縮)

(タイミング合わせれば…)

蹴りの指導をしながら、
もう一つの“形”も組み上がっていく。

(これ、いけるかも)

まだ曖昧だけど、確実に手応えがある。

視線を少しだけ、爆豪くんの方へ向ける。

また爆発が弾ける。

(……ちょっと聞いてみよっかな)

そう思いながら、
もう一度緑谷くんの動きに視線を戻した。

「もっとお腹に力を入れて!体幹大事!」

自分の腹部を軽く叩いて見せると、
緑谷くんも同じように意識して踏み込む。

「な、なるほど!確かに星宮さん体ひっ…
引き締まってるもんね…!」

勢いよく言いかけて、声のトーンがしぼんでいく。

顔も赤くなって、

(……どうしたんだろ?)

よく分からなくて、私は小さく首を傾げた。

 今、変なこと言ったっけ。

「そ、そういえば、中断させちゃって
アレなんだけど、星宮さんは必殺技もう
何個か出来てるの?」

慌てて話題を変える緑谷くんに、
私は「ああ」と納得して頷いた。

「うん!光ブーツとか形になっていたものは、
もう名前考えてるよ!ただ決め技みたいなのは
これから形にしていく予定!」

言いながら、さっき頭に浮かんだイメージを
思い出す。

フラッシュ、圧縮、弾ける衝撃。

(あれ、ちゃんと形にしたいな)

「星宮さん自由度高いから楽しみだなあ…!」

目をキラキラさせている緑谷くんを見て、
思わず笑みがこぼれる。

本当にこういう話、
好きなんだなあって伝わってくる。

「期待に応えられるように頑張るよ!
後で爆豪くんに聞きにいくつもり!」

そのままの流れで口にすると、

「かっちゃんから!?」

緑谷くんが目を見開いて、驚きの声を上げた。

(そんなに驚く?)

「必殺技悩んでたら、オールマイトが爆豪くんを
参考にすると良いってアドバイスをくれて、
良いの浮かび上がったんだけど、
一応爆豪くんに聞こうと思って…、
勝手に使ったら怒られそうだからエヘヘ」

想像出来てしまうから思わず苦笑いをする。

そう言うと、緑谷くんは一瞬固まってから、

「オールマイトが……。
確かに星宮さんの個性は光粒子の圧縮させて物理化させていくから、光速移動の原理を考えたら圧縮させて破裂させて衝撃による反動の勢いと考えればそれを攻撃として利用する方が中・遠距離技の自由度が高まるのか…そうなると、手元から出力じゃなく対象周辺に光粒子を集めてから攻撃に移れば避けられる率が格段に低くてかなり有利な戦法を編み出せられるんじゃ…」

ぶつぶつと、いつもの調子で分析を始めた。

(出た)

でも私がやろうとしてる事もう見つけてる。

思わず、

「プハッ…!さすが緑谷くんは目ざといなあ」

耐えきれず吹き出してしまう。

「ごごごごめん!また癖でブツブツと…!」

慌てて謝る緑谷くんに、私はグットポーズをした。

「大丈夫!それが緑谷くんだから!」

本当にそう思う。

それが強さにも繋がってるし、見てて面白いし。

「あ、ありがとう!」

少し恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに笑う。

そのまま、もう少しだけ足の使い方を見てあげる。

「今のいい感じ!でも蹴る前に一回ためて!」

「ためる…!」

「そうそう、その一瞬で全然変わるから!」

何度か繰り返すうちに、
さっきよりも安定してきた。

(うん、ちゃんと形になってきてる)

満足して頷く。

「こんな感じかな!あとは慣れ!」

「ありがとう!すごく分かりやすかった!」

「いえいえー!」

軽く手を振って、その場を離れる。

体育館γの使用時間は限られている。

(私もやらないと)

視線を巡らせると、
少し離れた場所でまた爆発が弾けた。

爆豪くん。

変わらず、容赦なく
エクトプラズムを吹き飛ばしている。

(……よし。似てるなら、一応ね)

軽く息を整えて、
私はそのまま爆豪くんの方へ足を向けた。





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