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A組と分断された状況で、
周囲の空気が一気に変わるのを感じた。
さっきまでばらけていた視線が、
はっきりと一点に集まってくる。
自分に向けられている
――そう理解するのに、時間はかからなかった。

囲まれている。

それも、ただの包囲じゃない。
距離を詰めるタイミングを揃えた、
明確な“狩り”の配置。

「雄英だ!」

「一気にやるぞ!」

その声と同時に、じり、と
一歩踏み込まれる気配が重なる。

(容赦ないなぁ)

思わず小さく息を吐いて、口元がゆるくなる。
怖くないわけじゃない。
でも、それ以上に
――この状況をどう切り抜けるか、
頭の中が静かに冴えていく。

相手がその気なら、受けて立つしかない。

足元の感覚を確かめると同時に、
周囲へ光粒子を広げる。
視界の端で淡くきらめく粒子が、
半径の内側を満たしていくのが分かる。
この範囲に入った瞬間、全部、私の間合い。

一瞬だけ上空へ意識を向けて、粒子を引き上げる。

「メテオシャワー!」

放たれた光が、
次の瞬間には流星のように降り注いだ。

軌道をばらけさせ、密度を揃えず、
視線を奪うように散らす。
正確に当てるためじゃない。
動きを止めるための雨。

「うわあ!」
「眩しい!」

想定通り、足が止まる。
視線が上を向く。その一瞬で十分。

(今)

止まった隙を逃さず、
圧縮した光粒子を円盤状に整える。
数を揃え、角度をずらし、
逃げ道を潰すように配置する。

「コメット・レイン!」

放たれた光の円盤が、滑るように空間を走る。
ぶつかるというより、“切り取る”感覚に近い軌道。
避けきれない角度から確実にポイントへ当てていく。

無防備になった一人の体に三つの光が正確に当たる。

一人目、撃破。

あと一人。

「この…!」

苛立ち混じりの声と同時に一人が踏み込んでくる。正面から一直線。力任せの突破。

(速いけど――単純)

シューティングスターで身体を軽く弾き、
軌道をずらす。足場を蹴る感覚もほとんどなく、
空中へ滑るように退く。

だが、視界の端で別の気配が動いた。

後ろ。

「背中がガラ空きだ!」

振りかぶる動作が、はっきりと見える。

(ちょうどいい)

振り返りざまに、粒子を一点へ集める。
圧縮、収束、限界手前まで引き絞る。

「ごめんね!ノヴァ・フレア!」

閃光。

視界が白く弾けると同時に、
圧縮された光が衝撃となって弾けた。

「うわあ!」

体勢を崩したまま、
相手の身体がふらりと落ちていく。
反射的に、落下軌道へシールドを滑り込ませる。

ネビュラ・シールド。

柔らかく受け止めるように展開した光が、
衝撃を吸収してそのまま支える。

(怪我させる必要はないもんね)

ふっと息を吐く余裕が戻る。

一瞬だけ、周囲に意識を向けた。

(他のみんな大丈夫かな…)

同じように散らばっているはずのA組の姿は、
この広い会場の中では簡単には見つからない。
人の流れも速い。
探そうとすれば、それだけで隙になる。

(大丈夫…皆んなを信じよう)

そう決めた瞬間――

「今だ!」

別方向からの声。複数の気配が一斉に動く。

来る。

反射的にシールドを展開。
正面からの攻撃を受け止め、
そのまま間合いを維持する。

同時に、足元から光を走らせる。

ハロー・バインド。

円を描くように広がった光が、
周囲の相手を一斉に絡め取る。
足、腕、動線。動こうとした瞬間に締まる拘束。

一瞬の静止。

次の瞬間、拘束されていない者たちの
空気が変わった。

(引いた)

危険だと判断したのか、
すぐに距離を取っていく気配。
無理に追わない。ここで無理をする必要はない。

「くそ…お前ら1年だろ…俺らは後先ねえんだよ…」

拘束された上級生の言葉が、少しだけ胸に刺さる。

近づきながら、ほんの一瞬だけ迷いがよぎる。

(……でも)

ここで手を止める理由にはならない。

自分たちも、これから先、
もっと強くならないといけない。
狙われた時、守られる側で終わらないために。

「ごめんなさい。
私達も強くならなきゃいけないんです」

静かにそう告げて、ポイントへ正確に光を当てる。

二人目、撃破。

次の瞬間、周囲の空気が切り替わる。

――合格。

その瞬間、張り詰めていた空気がふっと緩む。
周囲の喧騒が一歩遠のいたように感じて、
思わず小さく息を吐いた。

《現在通過者7名!いや…13名!
次々と通過者が出ております!》

実行委員の目良さんの実況が聞こえる。

次々と通過者が出て皆んな凄いな…。

視界の端がわずかに白く滲む。
使いすぎ、まではいかないけど、
確実に負荷はかかっている。

(……ちょっと使いすぎたかも)

軽く瞬きをして、焦点を戻す。

次の瞬間、試験官の指示が響いた。

合格者は速やかに控え室へ移動――

(そっか、もう終わりなんだ)

さっきまでの緊張が一気にほどける。

みんなの様子も気になるけど、今はまだ試験中。
ここで動くわけにはいかない。

(大丈夫、みんななら)

そう心の中で呟いて、ゆっくりと歩き出す。

控え室へ向かう足取りは、どこか軽かった。

 





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