グラウンドの空気は、
さっきまでとは明らかに違っていた。
誰もが黙っている。
除籍処分。
その言葉が、まだ頭の奥に残っている。
入学初日。
それなのに――
最下位になれば終わり。
(厳しいな)
私は小さく息を吐いた。
春の風が、ポニーテールを揺らす。
肩にかかった髪を、軽く後ろへ払う。
でも、不思議と。
怖い、という感覚はあまりなかった。
むしろ――
(ちょっと、ワクワクする)
ここは雄英高校ヒーロー科。
入試を突破してきた人たちばかり。
つまり。
本気で競う場所だ。
その空気が、体の奥を少しだけ熱くする。
「じゃあ始めるぞ」
相澤先生の声で、生徒たちが動き始めた。
最初の種目は――
50メートル走。
グラウンドに引かれた白線の前へ、
生徒たちが並ぶ。
「位置について」
スタートの合図。
次の瞬間。
地面を蹴る音が、一斉に響いた。
砂が弾ける。
一瞬で距離が開く。
速い。
普通の中学生とは、明らかに違う。
個性を使う者。
純粋な身体能力で走る者。
それぞれのスタイルで、
ゴールへと突っ込んでいく。
(やっぱりレベル高い)
私は順番を待ちながら、前の走者を見る。
黒い影のような何かが地面を滑るように進む。
反対側では、信じられない速度で加速する男子。
このクラス、やっぱりすごい。
私の番が来た。
スタートラインに立つ。
前には、白線。
たった50メートル。
でも――
ここでは、それが単なる体力測定じゃない。
(スターライト)
私は軽く息を吐いた。
足元に、光の粒子が集まる。
星屑みたいな小さな光。
静かに、でも確かに集まってくる。
「スタート」
地面を蹴る。
その瞬間――
光が弾けた。
足元で、小さな閃光。
体がぐっと前へ押し出される。
風が頬を叩く。
(速い)
光の推進力。
スターライトの加速。
私はそのまま一直線に駆け抜けた。
白線を越える。
砂が靴の裏で止まった。
振り返ると、何人かの生徒がこちらを見ている。
「今の……」
「光?」
小さなざわめき。
私は軽く息を整える。
(うん)
ちゃんと使える。
雄英でも。
テストは次々と進んでいく。
立ち幅跳び。
握力。
反復横跳び。
それぞれの能力が、
グラウンドのあちこちで発揮される。
腕を巨大化させる者。
体をバネのように使う者。
見ているだけでも面白い。
(すごいな)
ここにいる全員が、ヒーローを目指している。
その時、ふと思い出す。
さっきのソフトボール投げ。
爆発の衝撃。
705メートル。
(あれはすごかったな)
思わず小さく笑う。
でも。
胸の奥には、別の感情もあった。
(負けたくない)
その気持ちが、少しだけ強くなる。
その時だった。
相澤先生の声が響く。
「次、ソフトボール投げ」
生徒たちが、一斉にそちらを見る。
私はボールを受け取った。
手のひらの中の重さ。
ただのボール。
でも――
(これは、ちょっと面白くなりそう)
指先に、光の粒子が静かに集まり始めていた。
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