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あれから三日が経ち、教室の扉が勢いよく開いた。

「ご迷惑おかけしました!!」

大きな声とともに、深く頭を下げる緑谷くん。

(あ、戻ってきた)

その姿を見た瞬間、少しだけ空気が柔らぐ。

「デクくん、オツトメごくろうさま!!」

お茶子ちゃんが明るく声をかける。

「飯田くん!!ごめんね!!
失望させてしまって!!」

間髪入れずに飯田くんへ向かっていくあたり、
ほんとに真面目だなと思う。

「うむ…反省してくれればいいが…しかしどうした?」

勢いに少し戸惑いながらも、
しっかり受け止める飯田くん。

「この三日間でついた差を取り戻すんだ!」

力強い言葉。

(やっぱり前向きだなあ)

少しだけ安心する。

自分の席に座ろうとする背中に、
自然と声をかける。

「緑谷くんおかえりー
前後いなくて寂しかったよー」

振り返ると、少し驚いた顔。

「星宮さん!ご迷惑をおかけしました!」

(いや、そっちじゃない)

思わず口が動く。

「迷惑じゃなくて寂しかったって話だよ?」

軽くツッコむと、緑谷くんは一瞬固まってから、
少しだけ照れたように笑った。

(ほんと、真面目すぎる)

そんなやり取りをしているうちに、
チャイムが鳴る。

同時に、扉が開いて相澤先生が入ってくる。

「じゃ、緑谷も戻ったところで、
本格的にインターンの話をしていこう。
入っておいで」

その一言で、教室の空気がまた少し変わる。

(来るんだ…)

視線が自然と扉へ向く。

「職場体験とどういう違いがあるのか。
直に経験している人間から話してもらう。
多忙な中、都合を合わせてくれたんだ。
心して聞くように。現雄英生の中でも、
トップに君臨する3年生3名…雄英ビッグ3の皆だ」

(ビッグ3…)

その言葉とともに、
三人の先輩が教室へ入ってくる。

金髪を立ち上げた男子。

水色のロングヘアの女子。

そして――黒髪で猫背、顔が少し見えにくい男子。

(この人たちが…)

雰囲気はそれぞれ違うのに、
どこか共通して“只者じゃない”感じがある。

「びっぐすりー」

三奈ちゃんがぽつりと復唱する。

「めっちゃキレーな人いるし、
そんな感じには見えねー…な?」

上鳴くんも戸惑っている。

(そうかな…)

上鳴くんが想像していた“トップ”のイメージとは
少し違うみたいだ。

「じゃ、手短に自己紹介いいか?天喰から」

相澤先生に促され、黒髪の先輩
――天喰先輩が少し顔を上げる。

その瞬間。

空気が、変わる。

(……っ)

一瞬で分かる。

強い。

圧がある。

でも――

「駄目だ、ミリオ…波動さん…
ジャガイモだと思って臨んでも…、
頭部以外が人間のままで、
依然人間にしか見えない。
どうしたらいい、言葉が…出てこない。
頭が真っ白だ…辛いっ…!帰りたい…!」

(ええ!?)

思わず目を見開く。

さっきのオーラはどこへ。

完全に背を向けて黒板と向き合ってしまう。

周りも同じ反応で、ざわっと空気が揺れる。

「雄英…ヒーロー科のトップ…ですよね……?」

尾白くんの疑問に、全力で同意したくなる。

その空気を切り替えるように、

「あ、聞いて天喰くん!そういうのノミの心臓って
言うんだって!人間なのにね!不思議!」

水色の髪の先輩――
波動先輩が、明るく話し始める。

「彼はノミの天喰環。それで私が波動ねじれ。
今日は”インターン”について、
皆にお話してほしいと頼まれて来ました」

(この人はちゃんとしてる…!)

そう思ったのも束の間。

「ねえ!星宮さんだよね!?
個性使う時、キラキラしてて眩しくないの!?
不思議!」

「ん?え、え?」

いきなり話を振られて、思わず声が裏返る。

(速い速い速い)

「彼は轟くんだよね!?ね!?
なんでそんなところを火傷したの!?」

「それは…」

轟くんが答えようとする前に、

「芦戸さんはその角、折れちゃったら生えてくる?
動くの!?」

次々と話題が飛んでいく。

止まらない。

「ね?峰田くんのボールみたいなのは、髪の毛?
散髪はどうやるの!?蛙吹さんはアマガエル?
ヒキガエルじゃないよね?
どの子も皆気になるとこばかり!不思議」

(すごい勢い…)

完全に圧倒される。

「凄え、星宮を5歳児にしたような勢いの人だ」

「赤ちゃんみたい」

(ちょっと待って)

切島くんと三奈ちゃんの言葉に、思わず振り返る。

「私の5歳児のイメージこんな感じなの?」

納得いかない。

「オイラの玉が気になるって
ちょっとちょっとー!?
セクハラですって、先パハァイ!!」

後ろで峰田くんが騒いでいるけど、
もう情報量が多すぎる。

「合理性に欠くね?」

相澤先生の低い声。

視線の先には、最後の一人。

金髪を立ち上げた先輩。

「イレイザーヘッド、安心して下さい!!
大トリは俺なんだよね!」

慌てて前に出てくる。

「前途ー!!?」

突然の大声に、教室が一瞬で静まる。

(何!?)

「多難ー!っつってね!
よォし、ツカミは大失敗だ!」

(あ、こういう人だ)

一瞬で理解する。

「何…この人たち…」
「風格が感じられん…」

響香ちゃんと常闇くんの感想に、
少しだけ頷きたくなる。

でも、その人は全く気にせず続ける。

「まァ、何が何やらって顔してるよね。
必修てわけでもないインターンの説明に、
突如現れた三年生だ。そりゃ、わけもないよね」

軽い口調。

でも、その奥に余裕がある。

「一年から仮免取得…だよね、フム。
今年の一年生ってすごく…元気があるよね…
そうだねェ何やらスベリ倒してしまったようだし、
君たちまとめて、俺と戦ってみようよ!!」

「「「ええ〜!?」」」

思わず声が揃う。

(いきなり!?)

理解が追いつかない。

「俺たちの”経験”をその身で経験した方が
合理的でしょう!?どうでしょうね、
イレイザーヘッド!」

振り返る先。

「……好きにしな」

短い返答。

(いいんだ…)

こうして、話は一気に進む。

体操服に着替えて、体育館へ移動。

(インターンの話…戦うってこと?)

頭の中がまだ追いついていない。

でも――

(やることは一つだよね)

考えるより先に、身体が準備を始めていた。







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