洗練された希望

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数日後の朝、教室へ入ると、
インターンへ行っていた緑谷くんが
今日は登校していた。

でも――どこか様子がおかしい。

席には座っている。
ノートも開いている。
いつものように真面目に授業の準備もしている。

なのに、空気が重い。

ぼんやりしているというより、
何かをずっと考え込んでいるような顔だった。

「緑谷くんおはよー!」

声を掛けると、緑谷くんはハッとしたように
顔を上げた。

「星宮さん!おはよう!」

返ってきた声は明るい。

でも、少しだけ無理に切り替えた
みたいな速さがあった。

(やっぱり変だな)

そう思いながらも、普段通りの調子で話しかける。

「緑谷くんもインターン一時的に落ち着いたの?
サーナイトアイだっけ?」

鞄を机の横に掛けながら、自分の席へ座る。

「う、うん!星宮さんはベストジーニストから
特訓を受けてるんだよね?」

緑谷くんはすぐにこちらの話題へ変えた。

(話逸らした?)

少しだけそう思ったけれど、深追いはしなかった。

「そー!先週やって、また来週から
特訓始まるんだけど、特訓の内容を
忘れないようにしなきゃだし、
授業にも追い付かなきゃいけないしで、
今週頭パンパンだよ!」

そう言って笑うと、緑谷くんも
つられるように少し笑う。

「そ、そっか…!補習はインターン後って
相澤先生言ってたもんね!」

「そうなの!しかもジーニスト、
めちゃくちゃ細かいんだよ!
“その角度が美しくない”とか
“今の操作は無駄が多い”とか!」

思い出して肩を落とすと、
緑谷くんは「わあ…」と苦笑いした。

ちゃんと会話は続く。

返事もしてくれる。

でも、少し間が空くたびに、
緑谷くんの目線はまた下へ落ちていった。

まるで頭の中が別のことでいっぱいみたいに。

(インターンで何かあったのかな)

そう思う。

でも、無理に聞き出したいわけじゃない。

言いたくないことだってある。

だから、それ以上は聞かずに普通の雑談を続けた。

その時、

「おっはよーございまーす!」

勢いよく教室へ入ってきた上鳴くんが、
空気をぶち壊すみたいに大声を出した。

「ねみぃ〜〜〜!!」

「朝からうるさいよ上鳴」

響香ちゃんが呆れた声を返す。

いつものA組の朝。

その空気に少しだけ安心したように、
緑谷くんの肩から力が抜けるのが見えた。

やっぱり、何か抱えている。

そう確信したところで、チャイムが鳴った。

前へ向き直る。

ほとんど同時に相澤先生が教室へ入ってきた。

「ホームルーム始めるぞ」

いつも通り低い声。

合理的に必要最低限だけを話して、
すぐにHRは終わる。

そして入れ替わるように教室の扉が
勢いよく開いた。

「HEY!!英語の時間だブラザー!!」

プレゼント・マイク先生だった。

相変わらず朝からテンションが高い。

「今日もノってくぜー!!」

教室中に響く大声に、思わず少し笑ってしまう。

その横で、緑谷くんも小さく笑っていた。

でも。

ほんの一瞬だけ笑ったあと、また表情が沈む。

(やっぱり、何かある)

英語の教科書を開きながら、
ちらりと後ろを振り返った。

緑谷くんはもう、
ノートの上を見つめたまま考え込んでいた。








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