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インターンを終えて雄英の寮へ辿り着いた頃には、
もう外はすっかり暗くなっていた。

エントランスを抜け、共有スペースへ入る。

いつもなら誰かの笑い声やテレビの音が混ざって
賑やかな空間なのに、今日はどこか静かだった。

皆話してはいる。

でも、無理に明るくしているような空気がある。

「あ…!綺羅ちゃんおかえり!」

最初に気付いたのは葉隠だった。

ソファから立ち上がり、ぱたぱたと近付いてくる。

「今日インターン終わったんだ?」

耳郎も声を掛けながらこちらへ歩いてきた。

「ただいまー、今日でインターン終わったよ」

なるべく普段通りに返す。

でも、自分でも少し声が
落ち着きすぎているのがわかった。

ニュースを見てから、
胸の奥に重たいものが残ったままだった。

「そっか!でも他のインターン組は…」

葉隠が途中で言葉を濁す。

その先を言わなくても、何の話かはわかった。

「私もニュース見たから事情は知ってるよ。
緑谷くん達やっぱり帰ってきてないんだ…」

自然と視線が下がる。

耳郎が静かに続けた。

「うん。麗日と梅雨ちゃんも…
あと切島は結構怪我してて入院してるって」

「そっか…」

切島くんの顔が浮かぶ。

あの真っ直ぐで、熱くて、
いつも元気な切島くんが“入院”するほどの怪我。

どれだけ激しい現場だったのか、
想像するだけで怖くなる。

「相澤先生もチームアップに加わってるから、
HRも交代で代理の先生が来てたよ」

近くにいた尾白も会話に加わる。

なるほど、と納得した。

だからここ数日、連絡も簡素だったのか。

相澤先生も現場側に回っていた。

「皆んな無事で良かったけど、
インターン中に関わる事件としては重いよね…」

芦戸がぽつりと呟く。

その顔は珍しく沈んでいた。

いつも明るく場を盛り上げる三奈ちゃんが、
こんな風に声を落としているだけで、
今回の事件の重さが伝わってくる。

自然と共有スペースの空気も静かになる。

だからこそ、思った。

このまま暗い空気のままじゃ駄目だ、と。

「でも、私たちが暗くなっても何も出来ないし、
帰ってきたら皆んなが安心出来るように
温かく迎えよ!
暗い気持ち引きずらせないように!」

少しだけ大きめに声を出す。

すると、葉隠がぱっと顔を上げた。

「そうだね!寮を安心出来る場所にしてあげよ!」

ぴょん、と跳ねながら言う葉隠に、
思わず笑ってしまう。

耳郎も小さく肩の力を抜き、
芦戸も「うん…!」と頷いた。

ほんの少しだけ。

共有スペースの空気が柔らかくなる。

きっと、今必要なのはこういう空気だ。

帰ってきた時、
“戻って来られる場所”だと思える空間。

それが寮ならいい。

その後、夕食を食べ、風呂へ入り、自室へ戻る。

部屋へ入った瞬間、
ふわりとルームフレグランスの香りが漂った。

落ち着く匂い。

インターン中はホテルみたいな
整った部屋だったけれど、
やっぱり自分の部屋は安心感が違う。

荷物を整えながら部屋を見回す。

少し減っているフレグランスに気付いて、
スマホのメモ帳アプリを開いた。

“ルームフレグランス”

欲しい物リストへ追加する。

「インターンも終わって…
土日休んで…久しぶりの学校だ…」

ぽつりと呟く。

瞼が重い。

体も疲れている。

でも、不思議と気持ちは前向きだった。

ベストジーニストとの特訓。

最初は全然出来なかった同時制御。

防御。

拘束。

搬送。

複数の操作を同時に維持する感覚。

何度も失敗して、頭が痛くなるくらい集中して、
それでも少しずつ出来る事が増えていった。

光粒子の展開範囲も広がった。

意識を分散しても、崩れにくくなった。

前よりもっと、多くの人を守れる。

もっと、戦える。

実戦はまだない。

でも確実に強くなった感覚があった。

「早く授業で見せたいな…」

ベッドへ倒れ込みながら小さく呟く。

疲れているはずなのに、もう個性を使いたかった。

新しく出来るようになった動きを試したい。

戦いたい。

守りたい。

そんな気持ちが、胸の奥で静かに熱を持っていた。






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