ジョギングを終えて寮へ戻る頃には、
体がじんわり温まっていた。
首に掛けたタオルで汗を拭きながら
エントランスを抜ける。
外のまだ残暑が残る暑さから一転、
共有スペースへ入ると涼しい空気に包まれた。
「あ!綺羅おかえりー!走ってたの?」
ソファに座っていた芦戸が真っ先に気付いて
声を掛けてくる。
「うん!最近日課なんだー気持ちいいよ!」
軽く肩を回しながら答える。
走った後の体の軽さが心地良い。
頭もすっきりしていて、
個性の感覚も冴えている気がした。
「うむ!ジョギングは体力向上、
そして自律神経が整い、
一日の集中力高まるメリットがあるからな!
俺も早朝走っているぞ!」
飯田がいかにも委員長らしく胸を張って説明する。
「飯田くんも走ってたんだ!朝ご飯前とか?」
汗を拭きながら問い掛けると、
「うむ!食後は体が重いからな!」
と自信満々に返ってきた。
「食前かー、私朝起きてすぐお腹空いちゃうから
先に食べちゃってたけどその方が良いのかなー」
少し考え込む。
確かに食後は若干体が重い。
でも空腹状態で走るのも辛そうだ。
「やっぱインターン行った奴は意識がプロだなー」
瀬呂が感心したように言った瞬間、
「飯田行ってないだろ」
障子が冷静にツッコむ。
「優等生意識が違うんだよ」
瀬呂は全く折れなかった。
そのやり取りに思わず笑ってしまう。
「優等生意識は確かに上がったかも!
ジーニスト身嗜みとか規律に厳しいもん!」
そう言うと、
「あー爆豪ぼっちゃんだったもんな」
瀬呂が思い出したように言った。
「ぶふ!思い出してもダメだ俺!」
上鳴が吹き出しながら笑い始める。
職場体験の時、ベストジーニストに
髪型や姿勢を矯正されていた
爆豪くんの姿を思い出したのだろう。
綺羅も思い出して少し笑ってしまった。
あの時の爆豪くんは、本当に不機嫌そうだった。
「仮免補講どんなのやってるのかなー」
ふと思って口にすると、
「救助講習が多いって聞いてるぞ」
飯田がすぐに答えてくれた。
「そっか、戦闘力とか判断力も
ちゃんとあるもんね!」
だからこそ不足している部分を
重点的に鍛えるのだろう。
爆豪くんも轟くんも戦闘能力自体は十分高い。
だから今は“ヒーローらしさ”を
学んでいる最中なのかもしれない。
「インターン終わったら次なんだろうな?」
尾白がぽつりと呟く。
すると葉隠が勢いよく反応した。
「時期的に文化祭とか!?」
「がっぽーい!」
芦戸がテンション高く声を上げる。
その瞬間、一気に空気が明るくなった。
文化祭。
確かに“学校っぽいイベント”と言えばそれだ。
体育祭。
林間合宿。
仮免試験。
インターン。
ずっと何かが起き続けていた。
事件ばかりで、“普通の高校生活”からは
どんどん離れていた気もする。
だからこそ、文化祭という言葉に
少しわくわくした。
もちろん、雄英だから普通に終わる保証なんて
どこにもない。
それでも。
皆で何かを作って、笑って、
騒げる行事があるなら。
少し楽しみだと思えた。
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