文化祭、始動

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数日後の夜。

共有スペースで葉隠達と話していると、
玄関の方から複数人分の足音が聞こえてきた。

何となくそちらへ視線を向けた瞬間、
見慣れた顔が目に入る。

「帰ってきた…奴らが帰ってきた…!!」

峰田が勢いよく立ち上がって駆け出した。

その先にいたのは、緑谷くん、お茶子ちゃん、
そして梅雨ちゃん、切島くんだった。

「おかえり…!」

思わず立ち上がる。

自分だけじゃない。

共有スペースにいた皆も、
一斉に四人へ集まっていった。

「びっくりさせんなよもー!」

峰田くんが半泣きみたいな顔で言うと、

「なんかもー色々巻き込まれてこえーよお前ら!」

上鳴くんも珍しく本気で心配していたみたいで、
緑谷くんと切島くんの肩を強めに叩いていた。

「へへ…悪い」

切島くんはいつもの調子で笑っている。

でも。

(……なんか無理してる感じする)

明るく振る舞っているのに、少しだけ顔色が悪い。

疲れているだけじゃない。

事件の空気をまだ引きずっているように見えた。

「お茶子ちゃんと梅雨ちゃんも
無事で良かったよー!」

葉隠ちゃんが二人に駆け寄る。

「ええ、大きな怪我なく無事よ」

梅雨ちゃんはいつも通り落ち着いて答えた。

「うん…」

お茶子ちゃんは小さく頷くだけだった。

その様子に胸の奥が少しだけ重くなる。

四人ともちゃんと帰ってきた。

それなのに。

どこかまだ“向こう側”にいる感じがした。

久しぶりの寮。

皆の声。

騒がしい共有スペース。

いつものA組。

なのに四人だけが、
その空気に完全には戻りきれていない。

そんな風に見えた。

「今ハーブティーを淹れますわ!
心が休まりますの!」

百ちゃんがぷりぷりしながらキッチンへ向かう。

きっとずっと心配していたんだろう。

動きがいつもより少し忙しない。

「いやー何より無事で良かったな!
仲直りの印で労わねえのかよ?」

上鳴くんが軽口を叩きながら、
ソファに座っている爆豪くんへ話を振る。

爆豪くんは四人をちらりと見ただけで、

「ふざけんな。俺は寝る」

とだけ言って立ち上がった。

そのまま振り返りもせず共有スペースを出て行く。

「えーー!?おじいちゃんかよ!!」

上鳴くんが大げさに叫んで、
思わず少し笑ってしまう。

張り詰めていた空気が、ほんの少しだけ和らいだ。

その時だった。

途中で電話に出ていた轟くんが戻ってきて、

「みんな悪い。俺ももう寝るから」

と少し申し訳なさそうに言った。

「2人してジジイかよーー!?」

上鳴くんがまた騒ぐ。

「2人とも仮免補講で早いんだよー」

フォローを入れると、轟くんは小さく頷いた。

「うむ、4人も疲れているだろう。
話したい気持ちは抑えて
休んで貰うことを優先しよう!」

飯田くんが委員長らしく場をまとめる。

その言葉に、皆も納得したように頷いていた。

私も同じ気持ちだった。

ニュースで見た内容だけでも十分重かった。

でもきっと、それ以上に色々あったんだと思う。

怖かった事。

苦しかった事。

助けられなかった事。

助かった事。

全部ひっくるめて、
まだ整理なんて出来ていないはずだ。

だから今は。

無理に明るくするよりも。

この寮を、“帰って来られる場所”として
感じてもらえたらいい。

そんな風に思った。







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