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インターンを終えた補講組――
常闇くん、緑谷くん、お茶子ちゃん、
梅雨ちゃん、切島くん、そして私は、
放課後も教室に残って補講を受けていた。

夕方の教室は静かだった。

昼間みたいな賑やかさはなく、
窓の外から差し込む橙色の光だけが
机へ長く伸びている。

流石に少し疲れた。

インターン帰りからの授業、そのあと補講。

頭がじわじわ熱を持っている感じがする。

「今日はここまでだ」

相澤先生がそう言って、チョークを置いた。

その瞬間、教室の空気が一気に緩む。

「ふぅ…」

小さく息を吐きながら教科書を鞄へしまう。

隣では切島くんが大きく伸びをしていて、
緑谷くんはまだノートを見返していた。

本当に真面目だなと思う。

皆が立ち上がろうとした、その時だった。

「……あと、緑谷」

相澤先生の声。

ぴたりと教室の動きが止まる。

緑谷くんも鞄へ伸ばしていた手を止めて、
顔を上げた。

相澤先生は今度ははっきりと
緑谷くんの方を見て続ける。

「エリちゃんが、お前に会いたがっている」

空気が静かに変わった。

「え……?」

緑谷くんの目が大きく見開かれる。

驚き。

それから、すぐに滲むような希望。

表情が一瞬で変わった。

「エリちゃんが……?」

「正確には、緑谷と通形だ」

相澤先生が淡々と訂正する。

エリちゃん。

死穢八斎會で監禁されていた小さな女の子。

“巻き戻し”という個性を
利用され続けていた被害者。

インターン中に起きた事件の中心にいた子だ。

緑谷くん達から少しだけ話は聞いていた。

「お前たちの名前を出した。入院してから、
初めてだそうだ。……それは、かなり貴重だ」

静かな説明。

でも、その言葉には安堵が混じっていた。

エリちゃんが少しずつ前を向けている。

そういう意味なんだと思う。

「お前、ずっと気に掛けてただろ」

相澤先生に言われ、緑谷くんはすぐに頷いていた。

返事より先に身体が動いていた。

「通形と一緒に行くか?」

「はい!」

即答だった。

迷いが一切ない。

その声は、さっきまでの疲れを全部
忘れたみたいに明るかった。

「良かったね、デクくん!」

お茶子ちゃんがぱっと笑顔になる。

「元気になってるといいな!」

切島くんも明るく続けた。

その空気に、少しだけ安心する。

死穢八斎會の事件は重かった。

皆どこか無理してる感じもあった。

でも、こうして前に進める話があるだけで
少し救われる。

(エリちゃん、少し元気出てきたのかな)

そうだったらいい。

心からそう思った。

補講を終えて寮へ戻ると、
共有スペースはかなり盛り上がっていた。

「あ、綺羅ちゃん!」

葉隠ちゃんがすぐに気付いて手を振る。

「今ちょうど文化祭の話してたんだよー!」

どうやら補講組がいない間に、
出し物の方向性がほぼ決まったらしい。

「A組、バンド演奏とダンスやる事になった!」

「え!?」

思わず目を丸くする。

かなり本格的だ。

「そっか!ダンスは三奈ちゃん、
バンドは響香ちゃん専門だし、
経験者がいるからいいね!」

自然と声が弾む。

なんだか文化祭っぽくなってきた。

「綺羅にも教えてあげるね!」

三奈ちゃんが共有スペースでくるりと
スピンしながら言う。

その動きが本当に軽い。

(すご…)

無意識で身体が動いてる感じがする。

でも、

「もう役割分担決めたの?私ダンス?」

そう聞くと、

「芦戸悪い。
星宮は裏方で頼みたい事があるんだが、良いか?」

先に口を開いたのは轟くんだった。

(え、轟くんから?)

ちょっと驚く。

こういう学校行事って轟くんはあんまり
積極的なイメージがなかったからだ。

「えー!ステージでダンスする綺羅
絶対可愛いのにー!」

三奈ちゃんが不満そうに頬を膨らませる。

「つっても星宮を軸に考えてるしなー」

瀬呂くんも困ったように笑っていた。

(軸?)

「なんか私人気者?やれる事ならなんでも言って!
ダンスしながら光らせようか!?」

「ハードすぎんだろ」

瀬呂くんが即ツッコむ。

すると轟くんが、少し真面目な顔で言った。

「星宮には、ステージ全体の
イルミネーションを頼みてえんだ」

その言葉に、一瞬でイメージが浮かぶ。

光粒子。

ステージ。

音楽。

動きに合わせた光。

「イルミネーションいいね!」

思わず即答していた。

むしろやりたい。

かなり楽しそうだ。

「むー、仕方ないなあ」

三奈ちゃんはまだ少し不服そうにしている。

その顔が可愛くて、思わず笑ってしまった。

「今日はここまでにして、
明日相澤先生に報告してから詳細を決めよう!」

飯田くんがパンッと手を叩く。

その言葉に、皆も頷いた。

文化祭。

今度は“誰かを楽しませる為”に個性を使う。

そう思うだけで、少しわくわくした。







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