文化祭の出し物が決まった週末。
バンド組は響香ちゃんの部屋へ集まり、
ダンスチームは朝から外で練習を始めていた。
そして演出担当の自分達は、
共有スペースで打ち合わせをしている。
食堂の椅子へ座り、テーブルの上には
タブレットとメモ用ノート。
こういう“何かを作る会議”みたいなのは、
なんだか少し文化祭っぽくて楽しい。
「んじゃ、何から決めていく?」
椅子へ座りながら声を掛ける。
隣には轟くん。
向かいに切島くんと瀬呂くん。
少し離れた席には口田くんも座っていた。
「耳郎から貰った曲は4分10秒。
この中で見せ場をいくつか用意して、
コマ割りしていこうぜ」
瀬呂くんがタブレットを操作すると、曲が流れ始めた。
洋楽。
テンポが良くて、かなり格好いい。
自然と身体がリズムを取りそうになる。
「まずベースの照明を決めねえと
合わせられねえだろ」
轟くんが静かに言う。
「クラブみてえーな派手な感じだったよな!」
切島くんがノリよく続けると、
「まさか轟からクラブイメージ出してくるとは
思わんかったわ」
瀬呂くんが笑った。
確かに意外だった。
「轟くんが出したんだ!洋楽聴くの!?」
思わず食い付く。
すると轟くんは少し考えるみたいに
視線を逸らした。
「いや…仮免講習で子どもを楽しませなきゃ
いけなくて色々やったんだけどよ。
ヒーローってヴィランから助けるだけじゃなくて、
安心させるって事も大切だと思って…
最近色々考えてんだ」
その言葉に、少しだけ目を丸くする。
(轟くん、体育祭以降どんどん
柔らかくなってるなぁ)
前はもっと、自分の中だけで
完結している感じだった。
でも最近は、人を楽しませるとか、
安心させるとか。
そういう方向へ目が向いている気がする。
何だか嬉しかった。
「じゃあ、文化祭のステージは
お客さんを楽しませたいね!」
そう返すと、皆も頷いた。
「ライトアップは任せたぞ星宮!」
切島くんが期待いっぱいの顔で言う。
「任せて!色分けは出来ないけど
キラキラさせられるよ!」
ノリノリで返したところで、
ふと頭の中へ別のイメージが浮かんだ。
「あ!」
思わず声が出る。
「キラキラといえば、青山くんも
ネビルレーザーで光らせられるよね!
本人も目立つの好きだし、人間ミラーボール的な!
それに轟くんの氷も光を当てると
反射して綺麗になりそう!」
イメージをそのまま口に出す。
頭の中ではもう、
ステージ演出が完成し始めていた。
レーザー。
氷。
反射する光。
絶対綺麗だ。
「それいいな!轟の氷は俺が削れるぜ!」
切島くんがすぐ食い付く。
「でもダンス途中で青山が抜ける事になるし、
ミラーボールにするとしたら
吊るした状態で誰かが支えないとじゃね?」
瀬呂くんが現実的な問題を出した。
確かに。
青山くん一人で宙吊りは無理だ。
「ダンス君からパワー系1人青山と一緒に抜けて
支えればいいんじゃねえか?」
轟くんが提案する。
「それアリだな!早速芦戸に打診しようぜ!」
瀬呂くんが立ち上がる。
そのまま皆で外へ向かうと、
ダンス練習はちょうど
休憩に入るタイミングだった。
そして。
その輪の中に。
見覚えのある金髪が見えた。
「通形先輩?」
その隣には、小さな女の子がいる。
白い髪。
大きな瞳。
どこか不安そうに周囲を見ていた。
(もしかしてあの子がエリちゃん…?)
自然と目が向く。
すると、ぱちりと目が合った。
すごく綺麗な目だった。
まだ幼い。
本当に小さい子だ。
そんな子が監禁されていたなんて、
改めて考えるだけで胸が痛くなる。
「ダンス組ー、ちょっと相談あるんだけどー」
瀬呂くんが声を張る。
「ちょうど切りが良いし、休憩にしよっか!
緑谷行っていていいよ!」
三奈ちゃんが明るく声を掛けた。
「うん!ありがとう!」
緑谷くんは笑って、エリちゃんの隣へ向かう。
その顔が少し柔らかく見えて、何だか安心した。
「今の子がエリちゃん?」
近くに来た梅雨ちゃんへ小声で聞く。
「ええ、とっても可愛いでしょ。
文化祭見学に来るらしいから、
今日は慣らしみたいよ」
梅雨ちゃんが静かに説明してくれた。
「文化祭来るんだー!楽しみだね!」
思わず顔が明るくなる。
きっと。
楽しい思い出をたくさん作ってほしい。
怖い記憶より、“楽しかった”が
少しずつ増えていけばいい。
そんなことを考えながら、
演出案をダンス組へ説明する。
「青山くんを人間ミラーボールにしたいんだけど、
途中で支える人が欲しくて」
「何その字面!」
三奈ちゃんが爆笑した。
でも説明すると、皆かなり乗り気だった。
皆で相談した結果。
パワー面。
身体能力。
ダンス習得度。
全部込みで、
緑谷くんが途中で抜けて青山くんの
サポートをすることに決まった。
「よし!どんどん形になってきたな!」
切島くんが嬉しそうに拳を握る。
文化祭まで、あと少し。
皆で一つのものを作っていく空気が、
すごく楽しかった。
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