ステージが始まる三分前。
慌ただしく動いていた体育館二階へ、
青山くんが戻ってきた。
「青山くん!じゃあ緑谷くんは…!」
思わず身を乗り出して聞く。
すると青山くんはキラリとポーズを決めながら、
「ギリギリ間に合ったよ⭐︎」
と返した。
「よかったぁ……!」
胸の奥の緊張が一気に抜ける。
エリちゃんに嘘をつくことにならなくて、
本当に良かった。
下を見れば、ちょうど緑谷くんが慌てて
ステージ裏へ駆け込んでいくのが見えた。
かなり息が上がっている。
でも間に合った。
それだけで十分だった。
そして。
ついに。
皆んなが本気で準備してきた
文化祭ステージの本番が始まる。
体育館の照明がゆっくり落ちた瞬間。
静かに両手を開く。
光粒子を展開。
細かな粒子を天井一面へ広げていく。
まるで夜空。
小さな星々が瞬くように、
体育館全体が静かな光に包まれる。
その瞬間。
観客席から、
「わぁ……」
と小さな感嘆の声が漏れた。
(よし…!)
掴みは成功。
そして次の瞬間。
「雄英全員……音でやるぞォ!!!」
爆豪くんの叫びと同時に、ステージ演出が爆ぜた。
轟音。
閃光。
合わせるように、自分の光粒子も
一気に弾けて広がる。
そのままビート音が流れ始め、
ステージへ照明が落ちた。
ダンス組が踊り出す。
後方ではバンド組の演奏が始まる。
耳郎ちゃんの歌声が体育館へ響いた瞬間、
空気が一気にライブ空間へ変わった。
それに合わせるように、光も動かす。
爆豪くんのドラムと
百ちゃんの電子ピアノのリズム。
上鳴くんと常闇くんのギター。
響香ちゃんのベース。
全部へ合わせて粒子を流す。
流星みたいに走った光は、
観客席の上空でふわりと弾ける。
まるで光に包まれているみたいだった。
観客席の雄英生徒達から歓声が上がる。
中心では、命綱で吊られた青山くんが
回転しながらネビルレーザーを放つ。
レーザーが光粒子へ反射して、
体育館中へ散っていく。
百ちゃんの個性で飛び出した紙テープと
紙吹雪が、その光を受けてキラキラと舞った。
さらに。
轟くんが作り出した巨大な氷の橋へ光を照射する。
内部で乱反射した光が、
体育館全体へ広がっていく。
そこへ切島くんが硬化で氷を削る。
細かな氷片が空中へ散って、
まるで星屑みたいに輝いた。
(綺麗……!)
自分でやっているのに、思わず見惚れそうになる。
さらにステージ下では、
梅雨ちゃんがお茶子ちゃんへ
舌を巻き付けて観客席側へ放り投げていた。
浮遊した生徒達から歓声が上がる。
ぶつからないよう、即座に光粒子を動かして
軌道をサポートする。
誰も怪我をしない。
でもちゃんと楽しい。
そのギリギリを維持し続ける。
ベストジーニストとの特訓が、全部役立っていた。
終盤。
響香ちゃんの歌声が、少しずつ
エンディングへ近づいていく。
音が緩やかになる。
それに合わせて、天井から光粒子を
ゆっくり降らせた。
星の雨。
観客席へ降り注ぐ光に、
観客が手を伸ばして歓声を上げる。
でも触れようとすると、ふわりと逃げる。
そして。
サビ前。
最後の盛り上がりに合わせるように、
体育館一面へ粒子を展開する。
天井。
壁。
空間全部。
まるで銀河みたいに体育館全体が輝いた。
その時。
ふと視線の先に、エリちゃんが見えた。
通形先輩の腕の中。
最初は不安そうだった顔が、今は全然違う。
両手を思い切り上げて、
目をキラキラさせながら笑っていた。
(良かったあ……!)
胸がいっぱいになる。
戦う為だけじゃない。
誰かを笑顔にする為に個性を使う。
その光で、皆んなが笑っている。
この空間そのものが、すごく幸せだった。
そして。
A組のステージは、大きな歓声と
拍手に包まれながら幕を閉じた。
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