「ステージ成功して良かったね!」
観客が引いた後の体育館。
紙吹雪やテープが床いっぱいに散らばる中、
箒を動かしながら自然と笑みが零れた。
さっきまでの歓声が、
まだ耳の奥に残っている気がする。
あんなに沢山の人が笑ってくれて、
盛り上がってくれて。
本当にやり切れた。
氷の撤去をしていた轟くんも、
火で氷を溶かしながら「ああ」と答える。
その表情はいつもよりずっと柔らかかった。
「練習でも見ていたけど、
個性の使い方だいぶ変わったんだな」
轟くんがこちらを見る。
「うん!特訓の成果が発揮出来て良かったよ!」
そう返しながら、少しだけ胸が熱くなる。
ベストジーニストの元でやってきたこと。
マルチタスク。
同時制御。
空間全体へ光を巡らせる感覚。
全部ちゃんと活かせた。
文化祭だから戦いではない。
でも、実践は実践だ。
ちゃんと“使える力”になっている実感があった。
「観客席まで制御飛ばしてたろ」
「うん!衝突したら危ないからね!」
「色々見れて凄えな」
褒められると思っていなかったから、
思わず顔が上がる。
「えへへ、ありがとう〜」
自分でもかなり集中していた。
浮遊した観客同士が
ぶつからないように軌道調整しながら、
照明演出まで同時維持していたから、
終わった瞬間どっと疲れが来たくらいだ。
でも、その疲れすら心地良い。
そうして一通りの片付けを終えると、
各々自由行動になった。
文化祭を回っていい時間だ。
(私は誰と回ろうかなー、三奈ちゃん達どこだろ…)
辺りを見渡す。
すると。
「星宮、周る奴いねえのか?」
轟くんが自然に声を掛けてきた。
「あ、うん!特には決めてなくて…」
そう答えかけた瞬間だった。
「星、こっち来いや」
横から急に声が飛ぶ。
同時に、左手首を掴まれた。
「えっ!?」
そのまま勢いよく引っ張られる。
歩くというより、ほとんど連行だった。
「え?え、あ、轟くん!大丈夫そう!」
慌てて後ろを振り返る。
轟くんは一瞬だけこちらを見て、
「ああ」
と短く返した。
それ以上は何も言わない。
そのまま静かに背を向け、
飯田くん達の方へ歩いて行った。
(なんだったんだろ…?)
引っ張られながら爆豪くんを見る。
相変わらず歩幅が大きい。
ズカズカ進むせいで、ついていくのが大変だ。
「爆豪くんどうしたの?」
聞くと、
「黒目と透明が探してたんだよ」
真っ直ぐ前を向いたまま返ってくる。
黒目は三奈ちゃん。
透明は葉隠ちゃん。
相変わらず特徴呼びだ。
「あ、そうだったんだ!わざわざありがとう!」
素直にお礼を言う。
すると爆豪くんは「チッ」とだけ返した。
やっぱりちょっと機嫌悪そう。
そうして人混みを抜けると、
前方に三奈ちゃんと透ちゃんが見えた。
向こうもすぐこちらに気付く。
「あ!綺羅ー!一緒に……って、
え!?もしかして2人で…!?」
三奈ちゃんが急に顔を赤くした。
「もしかしてもしかして!?」
透ちゃんまで飛び跳ねる。
「違えわ!テメェらが探してたから
ついでに引っ張って来たんだよ!」
爆豪くんが怒鳴りながら、掴んでいた腕を離す。
そのまま少し乱暴に押し出されて、
三奈ちゃん達の方へ渡された。
「なんだー」
透ちゃんは露骨に残念そうだった。
「気がきくじゃん爆豪!」
三奈ちゃんは普通に感心している。
「2人ともこっちいたんだねー!」
状況がよく分からないまま、とりあえず笑う。
すると今度は、
「おい爆豪!たこ焼き食いに行こうぜ!」
切島くんが手を振りながら近付いてきた。
「アタシもたこ焼き食べたい!」
三奈ちゃんも即反応する。
「いいねー!文化祭っぽい!」
透ちゃんも乗り気だった。
気付けば自然な流れで、
皆んな一緒に移動を始めていた。
爆豪くん。
切島くん。
三奈ちゃん。
透ちゃん。
そして自分。
賑やかで、騒がしくて。
でも、それがなんだか凄く文化祭らしかった。
✳︎
..