先に腹ごしらえを終えた後、
綺羅達は近くのベンチに集まり、
文化祭のパンフレットを広げていた。
どこへ行くか決める時間も、文化祭の醍醐味だ。
「ねえ!普通科お化け屋敷あるよ!」
激辛たこ焼きのダメージを
クレープで回復させた三奈ちゃんがすっかり
元気を取り戻してパンフレットを指差した。
一年C組。
確か体育祭で活躍していた
心操くんがいるクラスだ。
「楽しそー!」
透ちゃんもすぐに食いつく。
「良いじゃん!早速行こうぜ!」
上鳴くんまでノリノリだった。
一方で、切島くんは別ページを見ながら、
「おい爆豪!これ見ろよ!
障害物コース体験だってよ!」
と、アスレチック系の出し物を勧めていた。
確かに二人とも好きそう。
「綺羅もお化け屋敷行こー!」
三奈ちゃんが腕を振る。
「いいよー!」
三奈ちゃんと透ちゃんが行くなら楽しそうだ。
そう思って即答する。
すると。
「爆豪行こうぜ!」
切島くんが当然のようにアスレチック側へ誘った。
だからそのまま別行動になると思っていたのに、
「あ?肝試し行ってからだろ」
爆豪くんは普通にこちらへ来た。
「良いけど……お前肝試しとか好きだったっけ?」
切島くんが不思議そうに首を傾げる。
「別に良いだろ」
爆豪くんは素っ気なく返し、
そのままズカズカ歩き出した。
(大人数についてくる爆豪くん珍しいな……)
爆豪くんって、興味ないものは本当に来ない。
だから少し意外だった。
つい物珍しそうに見てしまうと、
「んだよ」
鋭く睨まれる。
「いや、珍しいなーって!」
そう返すと、爆豪くんは
「チッ」と舌打ちだけ返した。
でも付いてくるのには変わりなかった。
そして普通科のお化け屋敷へ到着する。
思ったよりかなり混んでいた。
「四人ずつでお願いしまーす!」
受付の生徒が案内している。
その場でグーとパーを出し合った結果、
先発が三奈ちゃん、透ちゃん、上鳴くん、峰田くん。
後発が自分、爆豪くん、切島くん、瀬呂くんになった。
「きゃー!絶対怖いやつじゃーん!」
「峰田前行って!」
「はあ!?」
騒がしい四人が入っていく。
綺羅は思わず笑いながら手を振って見送った。
「星宮お化けとか大丈夫なん?」
待っている間に瀬呂くんが聞いてくる。
「人だと思えば割と大丈夫だよー。
衝撃音とかでビックリするくらい」
そう答える。
「確かにドッキリみたいなところあるよな」
瀬呂くんも納得していた。
すると。
「次の方どうぞー!」
受付に呼ばれる。
四人で中へ入った。
入った瞬間、空気が変わる。
薄暗い廊下。
じめっとした湿った空気。
遠くから聞こえる水音。
かなり本格的だ。
(普通科凄いな……)
遊園地のお化け屋敷みたい。
でも。
先に入った三奈ちゃん達の悲鳴が
奥から響いてきて、思わず笑ってしまう。
「三奈ちゃん達楽しんでるなー」
「叫びすぎだろあいつら」
瀬呂くんも苦笑していた。
薄暗い通路を進む。
途中、長い髪の女の人形が立っていて、
一瞬動くかと思い身構える。
でも何も起きない。
(人形かあ)
少し安心した、その時。
「無視しないで……」
耳元で声がした。
同時に。
爆豪くんの肩へ白い手が伸びる。
「お」
爆豪くんがビクリと小さく反応した。
かなり珍しい。
その隣で、
「うお!!」
切島くんが大声で飛び跳ねる。
「え、何!?」
びっくりして声が出た。
瀬呂くんだけが、
「驚きすぎだろ」
と笑っている。
さらに奥へ進む。
その時だった。
「バアッ」
天井側から勢いよくゾンビが飛び出してきた。
「わ!!」
反射的に足を止める。
そのまま後ろへ下がって――
どんっと背中に何かがぶつかった。
振り返ると爆豪くんだった。
「あ、ご、ごめん!」
慌てて振り返る。
すると、
「おい、後ろ危ねえぞ」
爆豪くんが腕を引いた。
後ろにも墓石があったらしく、
危うくぶつかるところだった。
「ありがとう……!」
お礼を言うと、
「前見て歩け」
爆豪くんはぶっきらぼうに返した。
それからも、
お化けが飛び出してくるたびに驚かされる。
怖いというより、
音と勢いにびっくりする感じだった。
その度に三奈ちゃん達の絶叫が前方から聞こえてきて、
なんだかおかしくて笑いそうになる。
文化祭のお化け屋敷。
思った以上に楽しかった。
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