ヒーローコスチュームに着替えたA組は
グラウンド・βに集まった。
巨大な訓練施設の前に並ぶコンクリートの建物。
窓の少ない無機質な構造が、
ここが実戦訓練用の施設だと物語っている。
その前に、色とりどりの
ヒーローコスチュームが並んでいた。
同じ制服を着ていたさっきまでとはまるで違う。
それぞれの個性や戦い方を形にした
コスチュームは、まるで
別々のヒーローが集まったチームのようだった。
軽くポニーテールを払う。
コスチュームは体にぴたりと馴染み、
驚くほど軽い。
肩や腕を少し動かしてみると、
動きもほとんど制限されない。
(動きやすい……)
光エネルギーを扱うために設計されたスーツ。
スターライトの力を最大限に活かすための
作りになっている。
胸の奥が少し高鳴った。
その時だった。
「良いじゃないか皆んな…!かっこいいぜ!!」
オールマイトの声が響く。
思わず顔を上げた。
大きな体。
金色の髪。
テレビで何度も見た“平和の象徴”。
そのヒーローが、目の前で自分たちを見ている。
(褒められた……)
胸の奥が少し嬉しくなる。
すると、クラスの中から手が上がった。
「先生!ここは入試の演習場ですが
また市街地演習を行うのでしょうか!?」
飯田くんだった。
だが一瞬、誰なのか分からなかった。
白いアーマーが全身を覆い、
顔まで装甲に包まれている。
声を聞かなければ、誰だか判断できないほどだ。
(すごい装備……)
まさにヒーローという感じのコスチュームだった。
飯田くんの質問に、オールマイトが答える。
「いいや!もう二歩先に踏み込む!
屋内での対人戦闘訓練さ!!」
ざわりと空気が動く。
対人戦闘。
つまり――人と戦う訓練。
「敵退治は主に屋外で見られるが
統計で言えば 屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ。
監禁・軟禁・裏商売…このヒーロー飽和社会
ゲフンッ 真に賢しい敵は闇(屋内)にひそむ!
君らにはこれから敵組とヒーロー組に分かれて
2対2の屋内戦を行ってもらう!」
胸の奥が少しだけ高鳴る。
戦闘。
それも、対人。
昨日の個性把握テストとは
また違う種類の緊張だった。
その時、梅雨ちゃんの落ち着いた声が聞こえた。
「基礎訓練も無しに?」
確かにそうだ。
いきなり戦闘訓練。
普通の学校ならありえない。
だが、オールマイトは迷いなく言う。
「その基礎を知る為の実践さ!
ただし今度はブッ壊せばオッケーな
ロボじゃないのがミソだ!」
その瞬間、あちこちから声が上がった。
「勝敗のシステムはどうなりますの?」
「ブッ飛ばしてもいいんスか」
「また相澤先生みたいな
除籍とかあるんですか……?」
「分かれるとはどのような分かれ方をすれば
よろしいですか!」
「このマントやばくない?」
質問が一斉に飛び交う。
思わず少し笑ってしまう。
クラス全体が、どこか前のめりだった。
オールマイトが説明を続ける。
「いいかい!?状況設定は敵がアジトに
核兵器を隠していて、ヒーローはそれを
処理しようとしている!
ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか 、
核兵器を回収する事!
敵は制限時間まで核兵器を守るか、
ヒーローを捕まえる事!
コンビ及び対戦相手はくじだ!」
次の瞬間、オールマイトが取り出したのは
くじ引きBOXだった。
「適当なのですか!?」
飯田くんの驚いた声が響く。
その横から緑谷くんの声が聞こえた。
「プロは他事務所のヒーローと
急造チームアップする事が多いし、
そういう事じゃないかな…」
ヒーローの話になると、急に詳しくなる。
(ヒーロー好きなんだな)
そんなことを思っていると、
飯田くんがすぐに納得した。
「そうか…!先を見据えた計らい…
失礼いたしました!」
そして直角に頭を下げる。
「いいよ!早くやろう!」
オールマイトがそう言うと、くじ引きが始まった。
箱の中から紙を引く。
誰と組むのか。
誰と戦うのか。
小さく紙を開いた。
そこに書かれていた番号。
顔を上げる。
視線の先にいたのは――
岩のように大きな体格の男子。
口田甲司。
屈強な見た目とは対照的に、
目はどこか優しそうだった。
にこっと笑う。
「よろしくね!」
そう声を掛けると、
口田くんは少し驚いたように目を瞬かせた。
そして。
照れくさそうに、こくりと頷いた。
どうやら見かけによらず、かなりシャイらしい。
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