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地下のモニタールームは、
思っていたよりも静かだった。

コンクリートに囲まれた広い空間。
壁一面に並ぶモニターには、
演習用の建物内部がいくつも映し出されている。

廊下、階段、部屋の中――。
それぞれのカメラが、
建物のあちこちを捉えていた。

その前に並び、A組の生徒たちが
画面を見つめている。

誰も騒がない。

自然と息をひそめるような空気になっていた。

(始まるんだ)

視線の先、モニターの中ではすでに
戦闘の準備が整っている。

「さぁ君たちも考えてみるんだぞ!」

オールマイトの声がモニタールームに響いた。

最初に始まったのは、
爆豪くんと飯田くんのヴィランチーム、
緑谷くんと麗日ちゃんのヒーローチーム
の戦闘だった。

角から飛び出してきた爆豪くんに、
緑谷くんがとっさに体をひねって避ける。

その一瞬の攻防に、思わず身を乗り出しそうになる。

けれど――

向こうのやり取りの声は、
モニタールームには聞こえない。

講師のオールマイトだけが聞こえている状態で、
生徒達は見て状況を理解するしかなかった。

モニターの中では二人が何か
言葉を交わしているようだったが、音はない。

だからこそ、余計に目が離せない。

「爆豪ズッケぇ!!奇襲なんて男らしくねえ!!」

切島くんの声が響く。

するとすぐにオールマイトが言った。

「奇襲も戦略!彼らは今 実践の最中なんだぜ!」

その言葉に、確かに、と小さく頷いた。

ヒーローの戦いは、正々堂々だけではない。

「緑くん よく避けれたなー!」

芦戸ちゃんが楽しそうにモニターを見ている。

画面の中では、爆豪くんが右手を振りかざしていた。

次の瞬間。

緑谷くんがその腕を掴む。

そのまま――

背負い投げ。

爆豪くんの体が大きく宙を舞った。

「おお…」

思わず小さく息を漏らす。

そのあと、緑谷くんが爆豪くんに何か言っている。

けれど、それが爆豪くんの癇に障ったらしい。

画面越しでも分かるほど、
爆豪くんの動きが荒くなった。

怒っているのがはっきり伝わってくる。

「アイツ何話してんだ?
定点カメラで音声ないとわかんねえな」

切島くんがモニターを覗き込むように見ていた。

角度は変わらないのに、思わず近づいてしまう。

それに対して、オールマイトが説明をする。

「小型無線でコンビと話してるのさ!
持ち物は+建物の見取り図。
そしてこの確保テープ!
コレを相手に巻き付けた時点で
捕らえた証明となる!!」

そう言って、手元のテープを見せた。

なるほど、と小さく頷く。

「制限時間は15分間で核の場所は、
ヒーローに知らされてないんですよね?」

自然と口から質問が出た。

オールマイトがこちらを見る。

「Yes!」

その答えに、モニターを見ながら少し考える。

「ヒーロー側が圧倒的不利ですね コレ」

芦戸ちゃんが厳しい表情で
オールマイトを見上げた。

確かにそうだ。

敵は核の場所を知っている。

ヒーローは知らない。

時間制限まである。

かなり不利な条件だ。

オールマイトが答える。

「相澤くんにも言われたろ?アレだよ
せーのPlus Ul「あ ムッシュ 爆豪が☆!」…」

その途中だった。

青山くんがモニターを指差す。

画面を見る。

爆豪くんは――

麗日ちゃんをまったく見ていない。

完全に緑谷くんだけを見ている。

その隙に、麗日ちゃんが動いた。

建物の奥へと走っていく。

どうやら先に核を探しに向かったらしい。

(1対1……)

つまり、爆豪くんと緑谷くんが直接ぶつかる。

入試1位の爆豪くん。

そして――

まだ個性をうまく使えていない緑谷くん。

画面の中では、緑谷くんが避け続けていた。

爆発。

衝撃。

それを必死にかわしている。

やがて緑谷くんが距離を取った。

一度、爆豪くんから離れる。

作戦を立て直すつもりなのだろう。

だが――

モニター越しでも分かる。

爆豪くんは明らかにイラついていた。

ヒーローというより、
まるでヴィランのような迫力だった。

その間、別のモニターでは
麗日ちゃんが階段を上っている。

核がある階に来たようだ。

そこで飯田くんと対峙している。

何か言われたのか、麗日ちゃんが吹き出した。

その隙だった。

飯田くんが麗日ちゃんに気づく。

麗日ちゃんはすぐに無線で緑谷くんと
連絡を取っているようだった。

画面の中で、緑谷くんが立ち上がる。

動こうとした――

その瞬間。

爆豪くんに見つかった。

次の瞬間、爆豪くんが腕を向ける。

手榴弾のような装置。

引き金を引こうとした瞬間、
オールマイトが止めようとした。

だが――

次の瞬間。

建物の内部で、大きな爆発が起こった。

轟音。

モニターの映像が揺れる。

建物全体が大きく揺れた。

「授業だぞコレ!」

切島くんが叫びながら天井を見上げる。

何か落ちてこないか確認している。

オールマイトが無線に向かって叫んだ。

「緑谷少年!!」

モニターを見る。

コンクリートの壁に、大きな穴が空いていた。

その横。

緑谷くんの姿がある。

なんとか避けたらしい。

無事だった。

思わずほっと息をつく。

だが切島くんがオールマイトを振り返った。

「先生!止めた方がいいって!
爆豪あいつ相当クレイジーだぜ!
殺しちまうぜ!?」

確かに。

あの爆発は、訓練の域を超えている。

しかしオールマイトは無線を取った。

「いや……《爆豪少年 次それ撃ったら…
強制終了で君らの負けとする。
屋内戦において大規模な爆破は
守るべき牙城の損壊を招く!
ヒーローとしてはもちろん
ヴィランとしても愚策だそれは!
大幅減点だからな!》」

注意だけだった。

戦闘は続行。

モニターの中では――

爆豪くんと緑谷くんが、再び向き合っていた。

その空気は、さっきよりもさらに張り詰めていた。








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