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一戦目は、梅雨ちゃん、上鳴くん、切島くん、
口田くんの四人に心操くんが加わった五人チーム。

対するは、荊の個性を持つ塩崎さん、
ビーストの個性を持つ宍田くん、
空気を圧縮して壁を作る個性を持つ円場くん、
そして鱗を生成し投げたり防御にも使う個性を持つ
鱗くんの四人だった。

運動場γの端に設置された巨大モニターの前には、
試合を見守るA組とB組の生徒たちが
自然と集まっていた。

巨大な画面に映し出される工業地帯を
模した訓練場。

高く積み上げられたコンテナや建物が
複雑に入り組み、見通しは決して良くない。

物陰はいくらでもあり、敵がどこに潜んでいるのか
外からでは全く分からなかった。

これだけ遮蔽物が多い場所なら、
敵の位置を素早く把握できるかどうかで
戦況は大きく変わるはずだ。

「うちは響香ちゃんがいるから良かったね!」

「な。先手打ちやすい」

私の言葉に瀬呂くんも共感して、
隣に座る響香ちゃんは照れ気味だった。

響香ちゃんや障子くんのような
索敵向きの個性がいるチームなら、
きっとかなり有利になる。

でも逆に位置を把握できなければ、
不意打ちを受ける危険も高い。

改めて、個性の相性や役割分担の大切さを実感した。

開始の合図と同時に、双方のチームが一斉に動き出す。

皆それぞれ別方向へ散開し、
建物の陰へ姿を消していった。

「始まった……」

自然と前のめりになる。

試合が始まったばかりだというのに、
モニター越しでも緊張感が伝わってきた。

けれど、序盤の流れは明らかにB組優勢だった。

切島くんが拘束され、続いて口田くんも捕らえられる。

モニターに表示された残り人数が減るたび、
周囲から小さなどよめきが起こった。

「もう二人……」

思わず息を呑む。

開始してまだそれほど時間は経っていない。

それなのに二人が戦闘不能。

焦ってもおかしくない状況だった。

しかし、そんな空気を変えたのは梅雨ちゃんだった。

梅雨ちゃんの身体から分泌された粘液が、
上鳴くんと心操くんの身体へ付着する。

最初は何をしているのか分からなかった。

けれど、次の瞬間にはその意図を理解する。

「あっ……!」

宍田くんは鋭い嗅覚で敵を探知する。

だからこそ、その嗅覚を逆手に取ったのだ。

三人が同じ匂いを纏えば、
「誰かが近くにいる」ことは分かっても、
それが誰なのかまでは判別できない。

個性そのものを封じるのではなく、長所を逆利用する。

梅雨ちゃんらしい冷静な判断だった。

「すごい……」

感心している間にも、戦況は刻一刻と変化していく。

塩崎さんの荊が建物の隙間を縫うように
何本も伸び、周囲を覆い尽くしていく。

まるで生き物みたいだ。

逃げ場を塞ぐように広がる荊は迫力があり、
思わず息を呑む。

捕らえられた上鳴くんは反射的に放電する。

けれど、障害物が多い地形では電気は
思うように広がらず、
その攻撃は決定打にはならなかった。

(地形まで考えて動いてる……)

ただ個性が強いだけでは勝てない。

場所や状況を利用した戦い方も重要なんだ。

そんなことを考えていた、その時だった。

突然、塩崎さんの動きが止まる。

「え?」

画面の中でぴたりと動きを止めた塩崎さん。

その直後、心操くんの姿が映し出された。

「洗脳……!」

体育祭で見た個性。

でも、あの時とは違う。

今の心操くんは声を変えるヒーローアイテムを使い、
相手の隙を見事に突いていた。

以前よりずっと戦い方の幅が広がっている。

ヒーロー科編入を目指して努力してきたことが、
一目で伝わってきた。

その隙を逃さず、宍田くんが勢いよく
心操くんへ飛び込む。

鋭い爪。

圧倒的な脚力。

一直線に迫る姿に思わず肩へ力が入る。

けれど、その進路へ飛び込んできたのは、
梅雨ちゃんによって勢いよく投げられた
”仲間”――鱗くんだった。

「そう来るんだ!」

予想外の一手だった。

突然仲間が目の前へ飛んできた宍田くんは
避けきれず、そのまま激しく衝突する。

体勢を崩した二人は勢いのまま地面へ
叩きつけられ、完全に動きを止めた。

一瞬の判断。

一瞬の連携。

その僅かな差が勝敗を左右していく。

モニター越しでも、その凄さが伝わってきた。

心操くんは直接戦って相手を倒すタイプではない。

それでも、洗脳によって仲間同士の意思疎通を
断ち、敵の連携そのものを崩してしまう。

まるで盤面全体を動かす司令塔みたいだった。

(強い……)

素直にそう思う。

力で押し切る強さとは違う。

状況を読み、相手の動きを封じ、
味方が動きやすい流れを作る。

そんな戦い方もあるのだと改めて感じた。

やがて一戦目は終了し、
相澤先生とブラドキング先生による
フィードバックが始まる。

互いの良かった点と改善点が挙げられ、
モニターの前で聞いているだけでも
勉強になる内容ばかりだった。

今回はチームが別だったから
直接戦うことはなかったけれど、
もし対戦相手になっていたら――。

心操くんの個性は、
かなりの強敵になっていた気がする。

洗脳だけじゃない。

状況判断も、仲間との連携も、
体育祭の頃より確実に成長している。

第四試合で当たらなくて良かったと
少しだけ胸を撫で下ろしながら、
次の試合へと意識を切り替えた。







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