オールマイトに注意された爆豪くんは、
今度は接近戦に走った。
距離を一気に詰める。
次の瞬間、拳が振るわれる。
緑谷くんが避ける。
だが、すぐに次の攻撃が来る。
右、左、肘、膝。
爆豪くんの動きは止まらない。
連続する打撃。
その一つ一つが鋭い。
(速い……)
思わず息を呑む。
ただ力任せに暴れているわけじゃない。
体の使い方が上手い。
細かいステップ。
体重移動。
無駄のない攻撃。
大味な爆発だけじゃなく、
こういう細かい動きまで出来る。
(凄い……)
モニター越しでも分かる強さだった。
テープを巻けば、とっくに終われるはずだ。
それなのに。
爆豪くんは止まらない。
拳を振るい続ける。
まるで、相手を痛ぶっているかのようだった。
(……まるでヴィランみたい)
そう思った瞬間。
「然し変だよな…爆豪の方が余裕なくね?」
切島くんがぽつりと言った。
改めてモニターを見る。
確かに。
爆豪くんの表情には余裕がない。
むしろ――焦っているようにも見える。
対して。
緑谷くんの目には、力が入っていた。
逃げ続けているのに。
不思議と、負けているようには見えない。
(……)
このまま二人とも熱くなれば――
また、さっきのような爆発が起きるかもしれない。
そうなれば。
訓練どころじゃない。
「〜〜〜!!《双方…中止……!》」
オールマイトが無線に手を伸ばす。
爆豪くんと緑谷くん。
二人が初めて真正面からぶつかっている。
出来れば止めたくはない。
けれど――
二人の個性の衝突は危険だ。
中止を告げようとした、その瞬間だった。
モニターの中で。
緑谷くんが動いた。
拳を振り上げる。
個性を使う。
だが。
爆豪くんへではなかった。
拳は――
上へ。
衝撃。
空気が弾ける。
風圧が天井に叩きつけられる。
次の瞬間。
核がある部屋の真上。
その床が、瓦礫ごと吹き飛んだ。
破片が落ちてくる。
その隙間から――
麗日ちゃんが見えた。
柱を浮かせている。
そのまま。
瓦礫を飯田くんへ向かって打ち出した。
突然の攻撃に、飯田くんの視界が塞がれる。
その一瞬。
麗日ちゃんが跳ぶ。
ふわりと浮き。
一直線に核へと飛び込む。
手を伸ばす。
触れた。
つまり――
「《ヒーロー…ヒーローチーム…
WIーーーーN!!!!!》」
モニタールームに、オールマイトの声が響いた。
緑谷くんと麗日ちゃんチームの勝利である。
だが。
モニターを見ているこちら側は、
どこか妙な気分だった。
「何だこれ…負けた方がほぼ無傷で
勝ったほうが倒れてら…」
切島くんが呟く。
確かにそうだった。
画面の中では――
緑谷くんが倒れている。
対して。
爆豪くんは立っている。
「勝負に負けて試合に勝ったというところか」
常闇くんが静かに言う。
「訓練だけど」
梅雨ちゃんが冷静に言った。
その通りだった。
小さな担架ロボが現れ、気を失った緑谷くんを
乗せて保健室に運び出していく。
残った爆豪くん、飯田くん。
そして、まだ酔いが残っている様子の麗日ちゃん。
三人はモニタールームへ戻ってきた。
空気が少し重い。
その中で、オールマイトが言う。
「まあつっても…今戦のベストは
飯田少年だけどな!!!」
その言葉に。
「なな!!?」
飯田くんが驚いた声を上げる。
「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」
梅雨ちゃんが質問した。
オールマイトがクラスを見渡す。
「何故だろうなあ〜〜〜?分かる人!」
その時。
一人が手を挙げた。
「ハイ!オールマイト先生」
八百万さんだった。
そして、そのまま迷いなく話し始める。
「それは飯田さんが一番
状況設定に順応していたから。
爆豪さんの行動は戦闘を見た限り
私怨丸出しの独断。
そして先程先生も仰っていた通り
屋内での大規模攻撃は愚策。
緑谷さんも同様の理由ですね。
麗日さんは中盤の気の緩み。
そして最後の攻撃が乱暴過ぎた事。
ハリボテを核として扱っていたら、
あんな危険な行為出来ませんわ。
相手への対策をこなし尚且つ、
核の争奪をきちんと想定していたからこそ、
飯田さんは最後対応に遅れた。
ヒーローチームの勝ちは訓練だという
甘えから生じた反則のようなものですわ」
よどみのない説明だった。
思わず感心する。
オールマイトが大きく頷いた。
「正解だ!」
その瞬間。
モニタールームに拍手が広がった。
初戦にしては、あまりにも濃い内容だった。
一回戦目はこれにて終了。
次の戦いは――
轟くん・障子くんのヒーローチーム。
葉隠ちゃん・尾白くんのヴィランチーム。
別の建物で、次の戦闘が始まることになった。
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