轟くんと障子くんのヒーローチーム、
葉隠ちゃんと尾白くんのヴィランチームの戦いは
――驚くほどあっという間に終わった。
モニターの中で、轟くんが片手を軽く掲げる。
次の瞬間だった。
床が、壁が、廊下が――
白い氷に覆われていく。
氷は波のように広がり、
建物そのものを飲み込んでいった。
「うわ……」
思わず小さく声が漏れる。
凍った建物の中では、
葉隠ちゃんと尾白くんの足が
床ごと氷に閉じ込められていた。
動けない。
そのまま轟くんは氷の上を歩いて建物の奥へ進み、
核を探し当てて確保した。
それだけだった。
戦闘と呼べるような攻防は、ほとんどない。
完全な一方的勝利だった。
(……すごい)
ただ、それだけははっきり分かる。
建物ごと制圧してしまう力。
規模が違う。
けれど、その強さのせいで問題も起きた。
建物が氷で固まってしまい、
このままでは次の試合ができない。
結局、氷を溶かすために一度仕切り直し。
別の建物へ移動することになった。
A組の生徒たちもぞろぞろと移動する。
さっきまでの、爆豪くんと緑谷くんの熱い戦い。
その余韻を――
まるで氷がすっかり冷やしてしまったようだった。
新しい建物に移動し、
再びモニタールームに集まる。
試合は次々と進んでいく。
勝敗が決まり、歓声が上がったり、
悔しそうな声が上がったり。
そして――
ついに順番が回ってきた。
私と口田くんのヒーローチーム。
切島くんと瀬呂くんのヴィランチーム。
建物へ入る前、短い作戦会議をすることになった。
まず、口田くんの個性を聞いておこうと思った。
「口田くんって、どんなこと出来るの?」
そう尋ねると、口田くんは少しだけ
驚いたように目を瞬かせる。
それから、静かに説明してくれた。
動物や鳥類と意思疎通ができる個性。
そして、命令も出せるらしい。
「へぇ……!」
思わず目が輝く。
「それってすごくない?
動物園とか行ったら絶対楽しそう!」
想像しただけで、わくわくしてしまう。
けれど口田くんは少し困ったように目を伏せた。
この建物の周りにいる動物は、せいぜい鳥くらい。
ライオンや象がいるわけでもないし、
広い場所でもない。
鳥を操るだけでも精一杯らしい。
「そっか……」
少し残念な気持ちにはなる。
でも、それでも十分だと思った。
「じゃあ――」
ポニーテールを軽く払う。
自然と気合いが入る。
「口田くんが索敵して、対人なら私に任せて!」
そう言うと、
口田くんは一瞬驚いたような顔をした。
けれどすぐに、小さくうなずく。
声は出さない。
でも、その視線はどこか頼もしそうだった。
作戦はそれで決まり。
建物の入口に立つ。
中は薄暗く、静まり返っている。
奥に核があるはずだ。
「行こう」
そう言って、建物の中へ入った。
廊下には誰もいない。
足音だけが静かに響く。
その横で、口田くんが窓の外へ視線を向けた。
小さく口を開く。
何かを呼びかけているようだった。
すると――
窓の外に影が現れる。
一羽。
また一羽。
鳥たちが窓辺に集まり始めた。
(すごい……)
思わず見入ってしまう。
口田くんは、その鳥たちに静かに何かを伝える。
そして――
鳥たちは羽ばたいた。
建物の中へ入り、廊下の奥へと飛んでいく。
索敵が始まった。
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