建物の中は静まり返っていた。
古びたコンクリートの廊下。
窓から差し込む光が、床に長い影を落としている。
口田くんが放った鳥たちは、
廊下の奥へと飛んでいった。
羽音が遠ざかっていく。
しばらくして――
一羽が戻ってくる。
口田くんの肩に止まり、小さく鳴いた。
口田くんが頷く。
そして静かに手で奥を指した。
(……いたんだ)
どうやら敵は二階らしい。
小さく息を吐く。
ポニーテールを軽く払った。
「ありがとう、口田くん」
小声でそう言うと、階段へ向かう。
足音を出来るだけ殺して上がる。
階段の先。
廊下の角。
そこから先は――敵のエリアだ。
(どう来るかな)
胸の奥が少しだけ高鳴る。
その瞬間だった。
シュッ――!
白いものが横から飛んできた。
反射的に体をひねる。
壁に張り付くテープ。
(瀬呂くん!)
次の瞬間。
天井から影が落ちた。
「うおらぁ!!」
切島くんだった。
硬化した拳が振り下ろされる。
床が砕ける。
綺羅はギリギリで横に跳んだ。
コンクリートの破片が飛び散る。
(やっぱり近距離……!)
切島くんの突進。
その後ろ。
瀬呂くんが天井からテープを撃ち出している。
立体的な連携。
「ナイス奇襲だろ!」
瀬呂くんが笑う。
その瞬間――
足元から、淡い光が漏れた。
ふわり、と。
空気がきらめく。
まるで星屑のような粒子が周囲に広がる。
「えっ」
瀬呂くんの声が止まる。
次の瞬間。
光が一気に弾けた。
「スターライト!」
体から光が放たれる。
強烈な閃光。
廊下が一瞬で昼のように明るくなる。
「うわっ!」
瀬呂くんが目を細める。
その隙。
床を蹴った。
一気に距離を詰める。
光が尾を引く。
走る軌跡が、まるで流星のようだった。
「速っ!?」
瀬呂くんが慌ててテープを撃つ。
だが。
その前に――
綺羅が跳んだ。
空中で体をひねる。
そして。
掌から光が弾ける。
閃光。
衝撃。
「うおっ!?」
瀬呂くんの体がバランスを崩す。
そこへ――
「女子に手を挙げるなんざ、
男らしくねえけど…!」
切島くんが突っ込んでくる。
硬化した拳が振り下ろされる。
床が大きくめり込む。
綺羅は後ろへ跳んだ。
コンクリートの破片が弾ける。
「逃がさねぇ!」
さらに追撃。
速い。
真正面からぶつかれば押し切られる。
(でも――)
怖くはない。
むしろ。
楽しい。
口元が少しだけ上がる。
「いいね……!」
ポニーテールが揺れる。
次の瞬間。
足元から光が弾けた。
ドンッ!
衝撃と同時に、体が前へ飛ぶ。
一気に接近。
「なっ!?」
切島くんの懐へ潜り込む。
そして。
掌を突き出す。
「スターライト・フラッシュ!」
閃光。
至近距離の光。
切島くんが思わず目を閉じる。
その一瞬。
背後へ回る。
確保テープを引き抜く。
シュッ。
切島くんの腕に巻き付く。
「しまっ……!」
だが。
まだ終わらない。
天井からテープが飛んできた。
瀬呂くんだ。
綺羅の足に絡みつく。
「捕まえた!」
体が引かれる。
空中に持ち上げられる。
次の瞬間。
瀬呂くんが引き寄せる。
「切島ァ!」
切島くんが振り返る。
拳を構える。
だが。
その瞬間だった。
空中で――
光が弾けた。
キラッ、と。
細かな光粒が広がる。
瀬呂くんの視界が白く染まる。
「まぶっ!」
テープの張力が一瞬緩む。
その隙。
体を回転させる。
テープを足で踏み、体をひねる。
そして。
着地。
「ごめんね!」
確保テープが走る。
シュッ!
瀬呂くんの腕に巻き付く。
同時に――
オールマイトの声が響いた。
「《ヴィランチーム捕縛!!
ヒーローチームWIN!!》」
静まり返った廊下に。
光の粒だけが、まだゆっくりと舞っていた。
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