「くっそー……!」
切島くんが悔しそうに頭をかいた。
その隣で瀬呂くんも肩を落としている。
「マジかよー……あとちょっとだったのに」
二人の腕には、しっかりと
確保テープが巻かれていた。
戦闘が終わったあとも、
廊下にはまだ淡い光の粒が残っている。
さっきまでの激しい動きの余韻のように、
ゆっくりと空気の中を漂っていた。
その光を見上げながら、ふう、と息を吐く。
「ふぅ……」
体の緊張が、ようやく少し抜けた。
そのまま振り返る。
後ろでは、口田くんがずっと様子を見守っていた。
目が合う。
口田くんは、静かに――
親指を立てた。
グッ、と。
(……!)
その反応に、思わず笑みがこぼれる。
「やったね!」
ニカッと笑いながら、
こちらも同じように親指を立てる。
二人のグッドポーズが向かい合った。
口田くんは少し照れくさそうに目を伏せたけれど、
それでも嬉しそうだった。
ヒーローチームの勝利。
その小さな瞬間を、二人で分かち合った。
――
その後。
四人はモニタールームへ戻った。
扉を開けると、A組の視線が一斉に向く。
「おー!」
芦戸ちゃんが手を振った。
「綺羅ちゃんめっちゃ速かったじゃん!」
「光すごかったな」
切島くんの試合のあとだったからか、
空気はさっきよりも明るい。
オールマイトも大きく頷いていた。
「Good!!素晴らしいチームワークだったぞ!」
腕を組みながら評価する。
「まず、口田少年の索敵!
敵の位置を事前に把握できたのは非常に大きい!」
口田くんが少しだけ驚いたように目を瞬かせる。
「そして星宮少女の機動力!
光を利用した瞬間加速、視界妨害、接近戦の判断
――どれも実にヒーローらしい戦い方だった!」
そう言われると、少し照れくさくなる。
「えへへ……」
思わず頬をかく。
その時だった。
ふと、思い出したことがあった。
「あ!」
手を上げる。
「オールマイト先生ー!」
オールマイトがこちらを見る。
「どうした星宮少女!」
そのまま指をさす。
「確保テープ巻いたのに
切島くんが動こうとしましたー!」
モニタールームの空気が、一瞬止まった。
「え」
切島くんと瀬呂くんが横で固まる。
そして次の瞬間。
「お前が呼ぶから!」
切島くんが瀬呂くんを肘でつついた。
「いや、だって…」
「確かに……」
上鳴くんが腕を組みながら思い出す。
「俺も見た気がする」
「僕も見た」
常闇くんが静かに頷く。
数人の生徒が、うんうんと頷いた。
視線が一斉に集まる。
切島くんは一瞬固まったあと――
「あ」
頭をかいた。
「……悪ぃ」
隣の瀬呂くんも苦笑いしている。
「いやー、ついさ……」
「熱くなってたわ……」
二人とも、少し気まずそうだった。
戦闘の勢いのまま、ルールを忘れていたらしい。
その様子を見て。
思わず笑ってしまう。
「まあ……」
肩をすくめる。
「反則される前に勝ったから
セーフにしてあげる!」
にっと笑う。
その言葉に。
切島くんと瀬呂くんが顔を上げた。
そして――
「サンキュー!」
二人同時に声が揃った。
その勢いに、思わず吹き出しそうになる。
モニタールームには、
さっきまでの戦闘の緊張とは違う――
少しだけ柔らかい空気が流れていた。
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