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広場に残った衝撃波が、まだ空気を震わせていた。

吹き飛ばされた怪物の姿はもう見えない。
代わりに残ったのは、砕けた地面と、
粉塵がゆっくりと落ちてくる音だけだった。

思わず目を見開く。

胸の奥が熱くなる。

(すごい……)

さっきまで戦っていたはずなのに、
思わず見惚れてしまう。

オールマイトの背中。

あの圧倒的な力。

オールマイトの圧倒的な強さに、
思わず目が輝いた。

これが――

平和の象徴。
No.1ヒーローの姿。

その本人は、少し肩で息をしていた。

スーツは破れ、ところどころ裂けている。
だが、それでも堂々と立っていた。

「やはり衰えた。
全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに
300発以上も撃ってしまった!」

思わず瞬きをする。

(……300発?)

その数字が現実離れしていて、
理解が追いつかない。

だが、確かにさっきまでの連撃は凄まじかった。

オールマイトはゆっくりと振り返る。

「さてとヴィラン。
お互い早めに決着つけたいね。」

そのまま、灰色の髪の男の前に立ちはだかった。

男の顔は相変わらず“手”で覆われている。

だが、その隙間から見える目が、
ぎらぎらと揺れていた。

「チートが…!『ガリ…』衰えた?
嘘だろ…完全に気圧されたよ よくも俺の脳無を…
チートがぁ…!全っ然 弱ってないじゃないか!!
あいつ…俺に嘘を教えたのか!?」

男は興奮したように、首元をガシガシと引っ掻く。

爪が肌を掻く音が、妙に耳についた。

「………どうした?来ないのかな!?
クリアとかなんとか言ってたが…
出来るものならしてみろよ!!」

オールマイトの声は揺るがない。

その姿を見て、自然と足が動いた。

出入り口の方へ。

切島くんも同じように歩き出す。

「凄えなオールマイト…」

思わず感心した声が漏れる。

「ああ…あれがNo.1ヒーローか」

轟くんも静かに頷いた。

その時だった。

少し後ろで足音が止まる。

振り向く。

「緑谷くん?」

緑谷くんが、その場で動かず立っていた。

「緑谷!もう俺らが出る幕じゃねぇぜ!
皆んなのところに戻ろう!」

切島くんが声をかける。

けれど緑谷くんは動かない。

その視線は、
ずっとオールマイトに向けられていた。

様子がおかしい。

(どうしたんだろ…)

そう思った瞬間――

「さぁ どうした!?」

オールマイトの声が広場に響いた。

灰色の髪の男は一瞬言葉を失っている。

「脳無さえいれば!!奴なら!!
何も感じず立ち向かえるのに………!」

その後ろに、黒い靄のヴィランが現れる。

静かな声だった。

「死柄木弔 落ち着いて下さい。
よく見れば脳無に受けた
ダメージは確実に現れている。
どうやら子どもらは棒立ちの様子…
あと数分もしないうちに
増援が来てしまうでしょうが、
死柄木と私で連携すれば
まだヤれるチャンスは充分にあるかと…」

黒い靄のヴィランが、男の背後に立っていた。

男は息を整える。

「そうだな…そうだよ…
そうだ…やるっきゃないぜ…
目の前にラスボスがいるんだもの…」

その言葉に、思わず息を呑む。

オールマイトも構える。

(え、来るの!?)

心の中で思わず突っ込んでしまう。

その瞬間だった。

前から影が飛び出す。

「オールマイトから 離れろ!」

緑谷くん。

拳を振り上げて飛び出していた。

「緑谷くん!?」

思わず声が出る。

次の瞬間。

黒い空間が開いた。

ワープゲート。

そこから灰色の髪の男の手が伸びる。

緑谷くんへ。

だが――

パンッ!!

乾いた音。

弾丸が男の手を弾いた。

間に合った。

「遅くなったね すぐ動ける者をかき集めてきた」

落ち着いた声。

振り向く。

小柄な影。

校長先生だった。

「1-Aクラス委員長 飯田天哉!!
ただいま戻りました!!!」

飯田くんが大きな声で報告する。

その後ろには、雄英の教師たちが並んでいた。

銃声が続く。

プロヒーローが銃を撃つ。

弾丸が灰色の髪の男を狙う。

だが――

黒い靄が広がる。

ワープゲート。

その空間が二人を飲み込む。

一瞬で、姿が消えた。

静寂が落ちる。

広場には、もう敵の姿はなかった。

こうして――

悪夢のようなUSJ襲撃事件は、幕を閉じた。








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