「《スターーート!!!!》」
合図と同時に、人の波が一斉に前へ雪崩れ込む。
耳をつんざく歓声。
地面を蹴る無数の足音。
スタートラインに並んでいた生徒たちは、
まるで堰を切った水のように一斉に走り出した。
だが――
出入り口はあまりにも狭い。
前方の通路は瞬く間に詰まり、
押し合いへし合いの混乱が起きる。
「うおっ!」
「押すなって!」
人の肩がぶつかり、誰かがよろめく。
その瞬間だった。
轟くんが、一歩前へ出る。
「最初のふるい」
静かな声。
次の瞬間――
パキパキッ…!!
氷が割れる鋭い音が響いた。
冷気が地面を這う。
一瞬で足元が白く凍りついた。
「うわっ!?」
「滑る!!」
悲鳴とともに十数人が動きを止められる。
足を取られ、転ぶ者まで出た。
(やっぱり…!)
A組の面々は、その動きを読んでいた。
個性を使い、一斉に回避する。
光を足元に集める。
スターライト。
足元が淡く輝く。
そして――
瞬間加速。
体が前へ弾けるように進む。
凍った地面の上を一気に飛び越え、
先行した轟くんの背中を追う。
(速い…!)
スタジアム外周のコースへ飛び出した瞬間、
視界に巨大な影が現れた。
第一関門――
巨大ロボ。
視界いっぱいに立ちはだかる、二体の巨大機体。
まるで鉄の壁だ。
観客席からどよめきが上がる。
轟くんは迷わない。
手を振り下ろす。
氷が一気に地面を覆い、ロボの脚へと伸びる。
巨大な氷の道が作られる。
その上を滑るように走り抜ける。
すぐ後ろでは爆豪くんが爆破で空中へ跳び、
ロボの腕を避けて突き進む。
(さすが…!)
迫る巨大な脚。
振り下ろされる鉄の塊。
その瞬間――
スターライトを発光。
足元に光を集める。
瞬間加速。
身体が一気に前へ跳ぶ。
巨大ロボの股の間をすり抜ける。
鉄の脚が背後で轟音を立てて落ちた。
そのまま走り抜ける。
観客席から歓声が上がった。
「今の速っ!」
「誰だあれ!?」
視線が一瞬集まるのを感じる。
しかし考えている暇はない。
すぐに次の関門が見えてきた。
第二関門――
落下ゾーン。
地面が途切れ、崖が点々と続いている。
各崖は縄で繋がれているが、
すでに多くの生徒がそこへ群がっている。
縄は揺れ、押し合いが起きていた。
(縄は無理だな)
足場が不安定すぎる。
一瞬判断する。
足元に光を集める。
スターライト。
崖の縁を蹴る。
瞬間加速。
空中へ。
崖から崖へ。
足場に触れる瞬間だけ光を強める。
再び加速。
三角跳びのように、崖を渡っていく。
「飛んでる!?」
観客席から驚きの声。
だが、胸が少し苦しくなってきた。
(やっぱり連続はきつい…)
呼吸が少し荒くなる。
その間に――
前方で轟くんと爆豪くんが並んでいた。
二人はすでに次のゾーンへ突入している。
(さすがに速いな…)
でも、まだ距離は離れていない。
第三関門――
地雷原。
地面に無数の地雷が埋まっている。
踏めば爆発。
土煙が上がり、あちこちで爆発音が響いている。
呼吸が少し荒くなる。
(ここも加速で抜けるのが一番…)
そう判断する。
しかし、少しだけ足を止める。
前を見る。
轟くんと爆豪くんが激しく1位争いをしている。
(今無理に突っ込むより…)
一度呼吸を整える。
その方が結果的に速い。
その時だった。
横で奇妙な動きをしている人がいた。
緑谷くんだ。
ロボの破片の鉄板で、地雷をかき集めている。
(何してるんだろ…?)
思わず目を瞬く。
次の瞬間。
――ドンッ!!!!
凄まじい爆発。
土煙が吹き上がる。
そして。
緑谷くんの体が――
空へ吹き上がった。
「うおおおおお!!?」
観客席がどよめく。
地雷原を利用した大爆発。
その勢いで緑谷くんが一気に前へ飛んでいく。
(そんな方法…!)
順位が変わる。
そう直感する。
すぐに足元に光を集める。
スターライト。
瞬間加速。
地雷を踏まないよう軌道を調整しながら、
爆発を避けて突き進む。
煙を抜ける。
そして――
ゴールラインが見えた。
最後の加速。
ラインを越える。
息が大きく乱れる。
胸が上下する。
結果は――
4位。
掲示板に順位が表示される。
1位 緑谷出久
2位 轟焦凍
3位 爆豪勝己
4位 星宮綺羅
(4位か…)
呼吸を整えながら顔を上げる。
視線の先。
1位になった事に驚いている緑谷くん。
(すごいな…)
個性を使わずに工夫した作戦で1位を取った。
そんな彼を思わず見つめていた。
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