昼食を終え、芦戸ちゃん、葉隠ちゃん、
梅雨ちゃんと一緒に校舎から
グラウンドへ向かって歩いていた。
体育祭の午後の部。
騎馬戦を突破した者も、
惜しくも敗れた者も、
まだ競技は終わっていない。
校内全体がどこか浮き足立ったような
空気に包まれていた。
そんな中だった。
「星宮さん達お待ちください!」
後ろから声がかかる。
振り返ると、八百万さんが
こちらへ駆け寄ってくるところだった。
その後ろには耳郎ちゃんもいる。
「ヤオモモどうしたー?」
芦戸ちゃんが首を傾げて聞く。
八百万さんは少し息を整え、
それから少し言いづらそうに口を開いた。
「実は……」
事情を聞いた瞬間、思わず顔を見合わせた。
なんでも、上鳴くんと峰田くんから――
女子はチアガールになって
レクリエーションを応援すると聞いたらしい。
確かに体育祭ならそういう演出があっても
おかしくはない。
けれど、相澤先生からは何も聞いていない。
(うーん……怪しい気もするけど……)
とは思ったものの、
もう午後の部が始まりそうな時間だった。
八百万さんの表情は真剣で、
冗談を言っているようには見えない。
「急いだ方が良さそうだね」
「だね!」
結局、考えている時間もなく、
A組女子は急いで更衣室へ向かった。
そして――
着替え終えて、なんとか
グラウンドに戻ってくると、ちょうど
プレゼント・マイクの実況が始まっていた。
「《最終種目発表の前に
予選落ちの皆んなへ朗報だ!!
あくまで体育祭!ちゃんと全員参加の
レクリエーション種目も用意してんのさ!
本場アメリカからチアリーダーも呼んで
一層盛り上げ……ん?アリャ?》」
実況の声が途中で止まる。
プレゼント・マイクが目を細めて
こちらを見ていた。
その隣では、担任の先生がぼそりと呟く。
「なーにやってんだ……?」
「《どーした A組!!》」
実況によって、スタジアム中の視線が
一斉にこちらへ向いた。
……しまった。
A組女子、全員チアガール姿だった。
手にはボンボン。
葉隠ちゃんは姿が見えないから
衣装だけ浮いているように見えるけれど、
それ以外の女子はみんな顔を青くしていた。
周りを見渡す。
他クラスの女子は――
全員体操服のまま。
(……あ。)
理解した。
「……騙されたね」
耳郎ちゃんがぼそっと言う。
つまり。
上鳴くんと峰田くんは――
チアガールが見たかっただけ。
「何故こうと峰田さんの策略に
ハマってしまうの私…」
八百万さんは深刻そうに頭を抱えていた。
「アホだろあいつら…」
耳郎ちゃんは顔を赤くして腕を組む。
ただ一人。
「まァ本選まで時間空くし張り詰めてても
シンドイしさ…いいんじゃない!!?
やったろ!!ヒュー!」
葉隠ちゃんがやたらテンション高く
飛び跳ねていた。
それを見て、思わず笑ってしまう。
「確かに!チアガールの衣装可愛いし
テンション上がるね!」
衣装は思ったよりちゃんとしていて、
動きやすいしデザインも可愛い。
「透ちゃん、綺羅ちゃん好きね」
梅雨ちゃんが呆れたようにこちらを見る。
そんなやり取りをしているうちに、
実況が再開された。
「《さァさァ 皆んな楽しく競えよ
レクリエーション!
それが終われば最終種目!進出4チーム
総勢16名からなるトーナメント形式!
1対1のガチバトルだ!!》」
スタジアムが一気に沸く。
トーナメント。
つまり――
完全な個人戦。
「トーナメントか…!
毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ…!」
胸が高鳴る。
観客席を見渡す。
無数の観客。
そして、プロヒーローたち。
「去年トーナメントだっけ?」
「形式は違ったりするけど例年サシで競ってるよ」
周りでもそんな会話が飛び交う。
その時。
ミッドナイトが前へ出てきた。
手にはくじ引きボックス。
「それじゃあ 組み合わせ決めのくじ引きするわよ!
組が決まったらレクリエーションを挟んで
開始になります!レクに関して進出者16人は
参加するもしないも個人の判断に任せるわ。
息抜きしたい人も温存したい人もいるしね。
んじゃ1位チームから順に…」
その瞬間だった。
「あの…!すみません 俺 辞退します」
声が響く。
視線が集まる。
手を挙げていたのは――
尻尾のある男子。
尾白くんだった。
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