「《よーしそれじゃあトーナメントは
ひとまず置いといて、イッツ束の間!
楽しく遊ぶぞレクリエーション!》」
プレゼント・マイクの甲高い声が
スタジアムに響き渡る。
その声に合わせて、
グラウンドの中央では普通科と経営科、
そしてトーナメントに進めなかった
ヒーロー科の生徒たちが整列し始めた。
競技は体育祭らしい、どこかお祭りめいた内容だ。
玉入れのようなものや、リレーのようなもの、
観客も思わず笑ってしまうような競技が
次々と準備されていく。
歓声が上がる。
観客席の空気も少しだけ柔らかくなる。
そんな中、こちらはチアガール姿のまま
応援に立っていた。
芦戸ちゃんと葉隠ちゃん、
そして麗日ちゃんが並んで、
ぴょんぴょんと元気に飛び跳ねている。
「いけーー!!」
「がんばれーー!!」
ポンポンを振りながら、三人とも楽しそうだ。
それにつられて、こちらも自然と身体が弾む。
ぴょん、と軽く跳ねる。
ポンポンがふわりと揺れる。
その横では、梅雨ちゃんが落ち着いた様子で
軽くポンポンを振っていた。
ぴょんぴょんと跳ねるこちらたちとは対照的に、
静かな応援だ。
さらにその隣では耳郎ちゃんが
しゃがみ込んでいた。
「……なんで私チアやってんだろ」
ぼそっと呟きながら、
不貞腐れた顔でポンポンを揺らす。
その後ろで八百万さんが、
控えめにポンポンを振っていた。
恥ずかしさがまだ抜けきっていないらしく、
動きはかなり小さい。
けれど、レクリエーションは
予想以上に盛り上がっていた。
競技に参加している生徒たちも、
観客席も、実況も、みんな笑っている。
「《いいぞいいぞ普通科ァ!!
その走りだァ!!》」
プレゼント・マイクの実況に合わせて、
歓声が一層大きくなる。
その光景を見ながら、ポンポンを振る。
でも、視線は自然と
グラウンドの端へ向いてしまった。
トーナメントに進んだ男子たちは、
グラウンドの端でそれぞれ準備をしている。
腕を組んで静かに立っている人。
軽く体を動かしている人。
じっと試合場を見つめている人。
それぞれが、それぞれのやり方で
次の試合に備えているようだった。
体育祭で結果を残せば、
全国のプロヒーローに名前を覚えてもらえる。
人気ヒーローに目を付けてもらえれば、
そのまま事務所へ呼ばれる可能性だってある。
そうなれば、将来の道は大きく開ける。
きっと多くの人が、そのことを考えている。
もちろん、こちらも同じだ。
人気ヒーローの元で強くなりたい。
もっと強くなって、
沢山の人を救えるヒーローになりたい。
だから。
ぴょん、ともう一度跳ねながらポンポンを振る。
応援は楽しい。
こうやってみんなで盛り上がるのも好きだ。
でも。
胸の奥では、ずっと同じことを考えていた。
(次の試合)
青山くんとの一戦。
そして、その先のトーナメント。
笑顔で応援しながらも、
頭の中では何度も動きをなぞっている。
レーザーは一直線。
避けるなら――横。
距離は一気に詰める。
迷う時間はない。
ぴょん、とまた軽く跳ねる。
ポンポンを振る。
観客席の歓声が耳に届く。
でも、心の中では、もう次の試合が始まっていた。
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