光速スターライト

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スタンド席を降りて、内部通路を進む。
さっきまで耳を満たしていた観客の歓声は、
壁に遮られて少し遠くなった。
代わりに聞こえてくるのは、
モニター越しの実況と、
控え室に集まった出場者たちのざわめきだ。

トーナメント出場者控え室に入ると、
正面のモニターに試合の映像が映っていた。

(あ、まだ終わってない)

幸い、まだ試合は続いている。

ステージの上では、飯田くんと
サポート科の発目さんが向かい合って――
いや、正確には、走り回っていた。

最初は、飯田くんの圧勝になると思っていた。

エンジンの個性で一気に距離を詰めて、
そのまま場外。
そんな展開を想像していたのに。

モニターの中の飯田くんは、
全力でステージを駆け回っていた。

脚部には、見慣れない装置が装着されている。

(あれ……サポートアイテム?)

たぶん、飯田くんの装備は
発目さんの作ったものだった。

どうやら、発目さんが発明した
サポートアイテムを装着して、
実験台になっているらしい。

そして当の発目さんも、
いくつものサポートアイテムを身につけていた。

背中の装置が噴射し、
足元の補助装置が跳ねるように作動する。

飯田くんのスピードにも対応して、
紙一重で避けている。

その光景は――

まるで鬼ごっこだった。

「何これ?」

思わず声に出ていた。

モニターの前に立ったまま、思わず首を傾げる。

「飯田さん真面目だから
断れなかったのでしょうね…」

横から聞こえた声に振り向く。

控え室の椅子に座っていた八百万さんが、
少し呆れた溜息まじりにそう言った。

「飯田くんらしいねー!
それにしてもあのスピードを避けれてる
発目さんのサポートアイテムも凄いなぁ…!」

思わず感心してしまう。

ステージの上では、飯田くんが一直線に突っ込み、
発目さんがそれを避ける。

その繰り返し。

でも、そのたびに発目さんは
装備の説明をしている。

モニター越しでも分かるくらい、
身振り手振りが大きい。

体育祭はヒーロー科だけの舞台じゃない。

サポート科にとっても、自分たちの開発した
サポートアイテムを披露できる絶好の機会だ。

発目さんは、それをしっかり理解している。

飯田くんに試作品を装着させ、
実際の使用状態を見せながら解説する。

(抜け目ないなあ)

でも、それだけ自分の発明に
自信があるってことなんだろう。

ステージではまだ鬼ごっこが続いている。

飯田くんは真面目に追いかけ、
発目さんは楽しそうに逃げる。

その構図は時間いっぱい続いた。

そして――

発目さんが、ふっと立ち止まる。

次の瞬間、自分からステージの外へ歩き出した。

「ご協力ありがとうございました!」

そう言って、飯田くんにぺこりと頭を下げる。

満足そうな、清々しい表情だった。

そのまま発目さんは、ステージを後にする。

控え室のモニターに映る
実況席の映像が切り替わる。

(……次だ)

胸の奥が、少しだけ高鳴った。

そしてついに、私の番だ。

「わあーわくわくするー!」

思わず声が弾む。

普通なら緊張する場面なのかもしれない。

プロヒーローたちが観客席にずらりと並び、
この体育祭のトーナメント戦は
その目の前で行われる。

でも、不思議と怖さはなかった。

むしろ――

(見てもらえるチャンスだ)

ここで戦えば、
きっとたくさんのヒーローの目に留まる。

自分をアピールできる、絶好の舞台。

そう思うと、胸の奥がわくわくしてくる。

自然と、笑みが浮かんでいた。










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