スタジアムの空気は、
準決勝に入ってさらに熱を帯びていた。
先ほどの試合の余韻がまだ残る中、
次の対戦者がステージへと上がる。
プレゼント・マイクの声が
観客席いっぱいに響き渡った。
「《実力と運が備わったキラキラガール!
ヒーロー科星宮綺羅!
対するは女子と当たるの多いな!?
ヒーロー科爆豪勝己!!》」
歓声が響き渡る中、
その中央、コンクリートのステージの上で、
二人は向かい合っていた。
星宮綺羅は背筋を伸ばして立ち、
爆豪を見てにこりと笑う。
「よろしくね爆豪くん!」
対する爆豪は、面倒くさそうに舌打ちをした。
「チッ……」
そして口元を歪める。
「来いや星」
「《START!!》」
プレゼント・マイクの合図と同時だった。
爆豪の掌が閃く。
BOOM!!
爆破。
地面が弾け、爆煙が一気に広がった。
観客席が一瞬視界を失う。
だが次の瞬間――
綺羅の姿が、そこにはなかった。
実況が叫ぶ。
「《消えたぁ!?速すぎて見えねえ!!》」
爆煙の外、空中で光が弾けた。
綺羅の足元に小さな光が生まれる。
それを蹴る。
さらに次の光を作る。
空中を跳ねるように、綺羅の身体が駆け上がる。
それを追うように爆豪が爆破で飛び上がった。
爆炎を推進力にして高度を取る。
実況がさらに声を張り上げる。
「《空中戦だ!!爆豪も空を取ったァ!!》」
二人が空中で交差する。
綺羅が手を振る。
光粒子が弾けた。
「当たれっ!」
小さな光弾が爆豪へ飛ぶ。
パパンッ!
だが爆豪は即座に爆破を放った。
弾丸は爆炎で弾き飛ばされる。
「んなの効くか!」
綺羅はすぐ次の動きに移る。
手のひらが強く光った。
次の瞬間。
閃光。
スタジアムの中央で白い光が弾けた。
観客席から悲鳴が上がる。
実況が叫ぶ。
「《目くらましか!?星宮の光が炸裂!!》」
爆豪は一瞬だけ目を細める。
だがすぐに爆破。
「舐めんな!」
BOOM!!
距離を一気に取る。
煙が広がる。
その煙の中を、光が走った。
綺羅の機動はさらに速くなる。
爆豪の爆破がそれを追う。
BOOM
BOOM
ステージが振動する。
実況が興奮して叫ぶ。
「《速ぇ!!速ぇ!!星宮の機動力すげぇ!!》」
煙を突き抜けて、綺羅が一気に踏み込んだ。
爆豪の死角。
「よっと!」
回し蹴り。
だが爆豪は爆破で体をひねる。
蹴りは空を切った。
距離が開く。
爆豪が笑う。
「速ぇな」
綺羅は空中で体勢を整えながら、
小さく息を吐いた。
(爆豪くんと比べて威力が足りない…
なら、)
綺羅の視線が自分の足元へ落ちる。
いつも足場にしている光粒子。
それを――
足に集める。
光がまとわりつく。
粒子が圧縮され、ブーツのように足を包み込んだ。
綺羅はそのまま踏み込む。
光が弾けた。
爆発的な加速。
「いくよ!」
蹴り。
ドン!!
爆豪の身体が吹き飛んだ。
観客席が総立ちになる。
実況が叫ぶ。
「《入ったァ!!爆豪吹き飛んだ!!》」
爆豪は空中で体勢を整え、地面へ着地した。
砂埃が舞う。
そして、笑う。
「やるじゃねぇか」
その手のひらから汗がにじむ。
次の瞬間。
BOOM!!
爆破。
さらに爆破。
BOOM
BOOM
BOOM
爆炎の嵐がステージを覆う。
実況が叫ぶ。
「《爆破の嵐だ!!ステージが持たねぇ!!》」
綺羅は両手を広げる。
光が広がる。
半透明の防壁。
爆破が正面からぶつかった。
衝撃が押し寄せる。
「っ……!」
防壁がきしむ。
それでも綺羅は踏み込む。
光ブーツで地面を蹴る。
横へ回避。
さらに加速。
爆豪に接近する。
その瞬間。
爆豪が言った。
「そこだ」
爆破。
逃げ道が塞がれる。
綺羅はそれでも突っ込んだ。
光ブーツで踏み込む。
そして叫ぶ。
「まだ……!」
光の防壁が再び広がる。
実況が叫ぶ。
「《防ぐ!!星宮まだ耐える!!》」
爆豪の掌が強く光った。
次の瞬間。
最大爆破。
実況が絶叫する。
「《ぶち抜いたァ!!!》」
光の防壁が砕けた。
衝撃。
綺羅の身体が宙へ吹き飛ぶ。
そのままステージの外へ落ちた。
ミッドナイトが手を上げる。
「星宮綺羅 場外!
爆豪勝己 決勝進出!!」
実況が響く。
「《爆豪決勝進出ーー!!》」
スタジアムが歓声に包まれた。
綺羅は地面に転がり、
しばらくそのまま動かなかった。
爆破の衝撃で体の奥がじんと痛む。
そして綺羅はゆっくり体を起こすが、
立ち上がらない。
その場に座り込んだまま小さく笑った。
「……強いなあ」
その言葉は、悔しさよりもどこか楽しそうだった。
ステージの上では、
爆豪がすでに背を向けて歩き出している。
歓声がスタジアムを満たす中、
準決勝の決着が告げられた。
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