それではこれより!!表彰式に移ります!」
決勝戦で気を失っていた轟くんと爆豪くんが
目を覚まし、表彰式が始まった。
私は三位の台に立ちながら、
隣の一位の台を見上げていた。
そして、思わず苦笑いがこぼれる。
それが何故かというと――
「んー!んーーー!!!」
ガシャガシャン!!と激しい音がする。
爆豪くんが全身を拘束されていた。
両腕も、胴体も、さらには口まで。
鎖でぐるぐる巻きにされている。
それでもなお暴れようとして、
右隣の二位の台に立つ轟くんへ顔を向けていた。
今にも噛みつきそうな勢いだ。
鎖が激しく鳴る。
ガシャンガシャン。
狂犬どころではない迫力の形相に、
会場の空気が少し引いているのが分かった。
(うわあ……)
A組の席を見ると、みんなも苦い顔をしている。
というか、ほぼ全員ドン引きしている。
それはそうだ。
優勝者が鎖で拘束されている表彰式なんて、
普通ない。
「3位には綺羅さんと、
もう1人飯田くんがいるんだけど
ちょっとお家の事情で
早退になっちゃったのでご了承下さいな♪」
ミッドナイト先生の説明が入る。
私はその言葉に少し首を傾げた。
(急用……?)
飯田くんが体育祭を途中で帰るなんて、
相当なことだ。
少しだけ胸がざわつく。
でも、今は表彰式が進んでいる。
「メダル授与よ!!
今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
ミッドナイト先生が腕を広げた。
「私が!!メダルを持って来
「我らがヒーロー!オールマイトォ!!」」
二人の声がぴったり重なった。
次の瞬間。
上空から影が落ちる。
ドンッ!!
派手な着地。
会場が一気に沸き上がる。
(オールマイトだ……!)
だけど、ミッドナイト先生と
声が被ったのが少し気になったのか、
オールマイトはほんの一瞬だけ
ミッドナイトを先生を見て、
どこか寂しそうな顔をした。
その様子がちょっと面白くて、
私は思わず口元を押さえる。
でもすぐに、
オールマイトはいつもの笑顔に戻った。
そして私の前に立つ。
大きい。
ステージの上で見ると、改めてそう思う。
「星宮少女おめでとう!
光を操る個性を機動力重視させ、
見事な活躍だった!然し自由な個性だ!
もっと視野を広めてやれる事を増やすと
君は確実に強くなれる!」
(やれる事を増やす……)
さっきの試合を思い出す。
光を足に纏わせた瞬間。
まだまだ、工夫できることは多いのかもしれない。
「ありがとうございます!」
私は背筋を伸ばして頭を下げた。
オールマイトがメダルを首に掛けてくれる。
金属のひんやりした感触。
でも、それ以上に胸の奥がじんと熱くなる。
(No.1ヒーローからメダル……)
それだけで、すごいことだった。
次にオールマイトは轟くんの前に立つ。
「轟少年 おめでとう。
決勝で左側を収めてしまったのには
ワケがあるのかな?」
その問いに、轟くんは静かに答えた。
「緑谷戦でキッカケをもらって……
わからなくなってしまいました。
あなたが奴を気にかけるのも、
少しわかった気がします。
俺もあなたのようなヒーローになりたかった。
ただ…俺だけが吹っ切れて、
それで終わりじゃ駄目だと思った。
清算しなきゃならないモノがまだある」
私はその言葉を聞きながら、
少しだけ轟くんの横顔を見る。
(そういうことだったんだ……)
オールマイトは静かに頷いた。
「……顔が以前と全然違う。
深くは聞くまいよ 今の君ならきっと清算できる」
そして、思いきり轟くんを抱きしめた。
熱いハグ。
会場が少しざわつく。
そのままオールマイトは、
最後に爆豪くんの前へ立つ。
……そして、改めて見る。
(ひどい姿だなあ……)
鎖で拘束され、口まで縛られている。
オールマイトはため息をつくようにして、
爆豪くんのマスクを外した。
すると爆豪くんは、
すぐにオールマイトへ怒りをぶつけた。
「オールマイトォ…こんな1番…
何の価値もねぇんだよ…!
世間が認めても俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!」
怒りで血管が浮き出ている。
でもオールマイトは、まったく動じなかった。
「うむ!相対評価に晒され続けるこの世界で、
不変の絶対評価を持ち続けられる人間は、
そう多くない 受け取っとけよ!
"傷”として!忘れぬよう!」
「要らねっつってんだろが!!」
「まァまァ」
オールマイトはメダルを拒む爆豪くんに、
強引にメダルを口へ引っ掛けた。
爆豪くんはそれをくわえたまま、
怒りの視線を向けている。
その姿があまりにもシュールで、
私は思わず肩を震わせた。
オールマイトはくるりと振り返る。
会場全体を見渡した。
「さァ!!今回は彼らだった!!然し皆さん!
この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!
ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!
さらに先へと登っていくその姿!!
次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!
てな感じで最後に一言!!皆さんご唱和下さい!!
せーのーーー…「plu…」
お疲れさま「Uli….」でした!!!」
……あれ?
私は一瞬ぽかんとした。
てっきり「Plus Ultra」だと思ったのに。
会場も少しざわつく。
「そこはプルスウルトラでしょ オールマイト!」
ミッドナイト先生がツッコむ。
オールマイトは困ったように笑った。
「ああ いや…疲れたろうなと思って……」
会場に笑いが広がる。
ちょっと締まりの悪い終わり方。
でも、それもなんだか雄英らしい。
こうして。
一大イベント――雄英体育祭は幕を閉めた。
私は胸にかかったメダルを軽く握る。
そして、ステージの上を見上げた。
(来年は――)
あの一番高い場所に立つ。
きっと、
ここにいるみんなが同じことを思っている。
誰もが一番を狙い、全力で戦った。
熱い大会だった。
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