光が、指先で弾けた。
空気の中に散った光の粒子が、
一瞬だけ星屑のようにきらめく。
スターライト。
私の個性。
放たれた光が、
一直線にロボットの関節へ突き刺さった。
――ガキン!!
金属が歪む音。
ロボットの腕が途中で止まり、
そのまま大きくバランスを崩す。
次の瞬間。
ドシン、と重たい音を立てて、
巨体が道路へ倒れ込んだ。
赤いセンサーが静かに消える。
(倒した)
試験開始から、まだ数秒。
胸の奥で心臓が強く跳ねている。
けれど、不思議と焦りはない。
むしろ――
(いける)
私は軽く息を吐いた。
その時だった。
「うわっ!?」
短い悲鳴。
視線を向けると、通りの角で
一人の受験生が後ずさっていた。
ロボットの腕が振り上がる。
距離が近い。
逃げ切れない。
(危ない)
考えるより先に体が動いた。
私は腕を振り抜く。
光の粒子が収束し、鋭い閃光となって飛ぶ。
――バン!!
衝撃音。
ロボットの関節に光が突き刺さり、
金属が大きく弾けた。
動きが止まる。
その一瞬の隙に、受験生が転がるように
距離を取った。
ロボットはそのままバランスを崩し、
ゆっくりと倒れていく。
ドシン、と道路が揺れた。
「……え?」
助けられた受験生が、驚いた顔でこちらを見る。
私は軽く手を振った。
「大丈夫?」
それだけ言うと、すぐに体を翻す。
試験はまだ終わっていない。
立ち止まっている時間はない。
背中で声が聞こえた。
「ありがと……!」
私は小さく笑った。
(救助もヒーローの仕事)
それだけのことだ。
むしろ――
私は建物の壁を蹴り、そのまま屋上へ跳び上がる。
視界が一気に広がった。
演習場のあちこちで戦闘が起きている。
衝撃音。
金属がぶつかる音。
瓦礫が崩れる音。
様々な個性がぶつかり、ロボットが倒れていく。
(すごい……)
思わず息を呑む。
雄英志望。
やっぱり、普通じゃない。
強い人たちがこんなにいる。
その中で戦えていることが、単純に嬉しかった。
私は思わず笑ってしまう。
(最高)
胸の奥が、わくわくしている。
もっと戦いたい。
もっとこの場所で、自分の力を試したい。
その時だった。
――ゴゴゴゴゴ……
低い振動。
足元の屋上が、わずかに揺れた。
(……?)
私は足を止める。
次の瞬間。
ドォン!!
遠くの建物が崩れた。
コンクリートの破片が舞い上がり、煙が広がる。
演習場の空気が一瞬で変わった。
「な、なんだ!?」
「揺れてる……!」
受験生たちの声が聞こえる。
振動は、さらに大きくなった。
ドォン。
ドォン。
重たい足音。
まるで、巨大な何かが歩いているみたいな――
(これ……)
私は煙の向こうへ視線を向けた。
そして。
ゆっくりと、その姿が現れる。
ビルと同じくらいの高さの巨体。
巨大な脚。
分厚い装甲。
赤く光るセンサー。
圧倒的な質量を持った機械の怪物。
――レベル0。
巨大ロボット。
地面が揺れる。
受験生たちが一斉に逃げ出した。
「うわあああ!!」
「逃げろ!!」
巨大な足が地面を踏みしめる。
ドォン。
その一歩だけで、道路が震えた。
私は屋上の端に立ち、その巨体を見上げる。
(……大きい)
想像以上だった。
説明で聞いていた“お邪魔虫”。
倒してもポイントはない。
むしろ危険なだけの存在。
私は静かに息を吐いた。
スターライトの粒子が、指先で小さく揺れる。
巨大ロボットの影が、街を覆う。
ヒーロー科入試。
試験は、まだ終わっていない。
その時。
遠くの瓦礫の近くで、
誰かが取り残されているのが見えた。
私は目を細める。
(あれ……)
✳︎
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