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「ってな感じでやってきました!
県内最多店舗数を誇る ナウでヤングな最先端!
木椰区ショッピングモール!
腕が6本のあなたにも!
ふくらはぎ激ゴツのあなたにも!
きっと見つかるオンリーワン!」

三奈ちゃんがまるでこの施設の
宣伝スタッフみたいな勢いで両手を広げる。
そのテンションの高さに、思わず笑いそうになる。

目の前に広がるショッピングモールは、
とにかく大きかった。
ガラス張りのエントランスから差し込む光が
明るくて、人の流れも多い。
週末らしい賑わいが一気に押し寄せてくる。

(すごい…ほんとに人多いなあ)

A組のメンバーも自然と集まっていて、
こうして制服じゃない姿で並ぶのは
なんだか新鮮だった。

(あ、こういう服なんだ)

勉強会に来ていなかった人たちの
私服は初めて見るから、
なんだか新鮮で少しだけワクワクする。

私はというと、いつものポニーテールに、
ペールブルーのTシャツ。外の光を受けて、
ほんのり明るく見えるその色が気に入っている。
動くたびに揺れる髪と、軽い足取りが
なんだか気分まで軽くしてくれる。

「個性の差による多様な形態を
数でカバーするだけじゃないんだよね。
ティーンからシニアまで幅広い世代にフィットする
デザインが集まっているからこの集客力…」

緑谷くんが早速ブツブツと分析を始めていた。

「幼児が怖がるぞ よせ」」

常闇くんが淡々と止める。

(確かにちょっと圧あるかも…)

そんなやり取りをしていると、

「お!アレ雄英生じゃん!?1年!?」

「体育祭ウェーーイ!!」

急に声をかけられて、視線を向けると
チャラそうな年上の人たちがこちらを見ていた。

「うおお まだ覚えてる人いるんだぁ…!」

お茶子ちゃんが少し圧倒されながらも答える。

(体育祭の影響すごいなあ…)

改めて、あの舞台の大きさを実感する。

「とりあえず ウチ大きめの
キャリーバッグ買わなきゃ」

「あら。では一緒に回りましょうか」

百ちゃんが上品に提案する。

「俺アウトドア系靴無えから買いてえんだけど」

「あー私も私もーー!」

切島くんと三奈ちゃんがすぐに反応する。

「ピッキング用品と小型ドリルって
どこ売ってんだ?」

(それは絶対ダメなやつ…)

聞かなかったことにする。

「靴は履き慣れたものとしおりに書いて……!
あ、いや…しかし成る程
用途にあったものを選ぶべきなのか…!?」

飯田くんは真剣に悩み始めていた。

「綺羅は何買うのー?」

私は透ちゃんに声をかけられる。

「私もスポーツ用品見るよ!
大きめのカバン欲しい!」

今回の合宿は一週間。
動きやすさも考えないといけない。

「目的バラけてっし 時間決めて自由行動すっか!」

上鳴くんの提案で、
自然とグループが分かれていく。

私は三奈ちゃんと透ちゃん、
それから切島くん、常闇くん、障子くんと
一緒にスポーツ用品店へ向かった。

店内に入った瞬間、視界が一気に広がる。

天井は高く、奥までずっと商品が並んでいる。
種類も量も圧倒的だった。

「うわあー凄いねえ!」

透ちゃんがはしゃいでいる。

「個性に合わせた品揃えで
考えたらこれくらい広くはなるよねえ」

と自然に声が出ていた。

普通のスポーツ用品店とは全然違う。
個性対応の道具も多くて、見ているだけで面白い。

「綺羅はカバンだっけ?」

三奈ちゃんに聞かれて、私は頷く。

「うん!あっちの方だから行ってみる!」

自然と足が鞄エリアへ向かう。

「あたしもー!」

透ちゃんがすぐ隣に来て、
常闇くんも後ろからついてくる。

鞄コーナーに着くと、
様々な形や大きさのバッグが並んでいた。

「キャリーも一応ここにあるみたいだね」

そう言いながら視線を動かすと、
常闇くんは真っ黒なキャリーケースを
じっと見ていた。

(似合いすぎる…)

「綺羅ちゃんはボストンバック?」

透ちゃんに聞かれて、手に取っていた
バターイエローのボストンバッグを見る。

「うん。キャリーは楽だけど、
動きに制限かかるし、
向こう洗濯出来るだろうから、
着替え最低限でいいかなって」

持ってみると軽くて、ショルダーにもできる。

(これ動きやすそう)

「確かに!私は最悪裸で何とかなるし!」

「何とかなるんだ…」

思わず素で返してしまった。

(いや、なるのかな…?)

透明とはいえ、ちょっと大胆すぎる。

そのまま透ちゃんは水筒を手に取り、
私たちはレジへ向かう。

――その時。

「……麗日からグループメッセージが来た。
緑谷が不審な男に絡まれていたらしい」

常闇くんの低い声が、空気を一変させた。

「え?」

(不審な男…?)

さっきまでの明るさが、一瞬で遠くなる。




急いで中央広場へ向かうと、
そこには警備員が集まっていた。
人だかりの中に、見慣れた顔がいくつも見える。

(何があったの…)

胸がざわつく。

話を聞くと、緑谷くんがUSJ襲撃事件にいた
死柄木弔に話しかけられていたらしい。

(死柄木…?)

あの時の空気が、一瞬で頭をよぎる。

お茶子ちゃんが戻ってきたことで、
大きな被害はなかったみたいだけど――

(怖い…)

さっきまでの楽しい空気が、
嘘みたいに消えていた。

警察が到着し、事情聴取のために緑谷くんと
お茶子ちゃんはそのまま連れて行かれる。

「……」

私は何も出来ず、
ただその背中を見送るしかなかった。

さっきまで笑っていた場所が、急に遠く感じる。

(……大丈夫かな)

心の中に残るのは、不安だけだった。

楽しかったはずのショッピングも、
そのまま続ける空気ではなくなっていた。







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