家族の欠片
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方舟の中でゲームが始まった。
旧型方舟。
かつてノア達が暮らしていた故郷。
そして今はエクソシスト達を閉じ込める巨大な迷宮となっている。
崩壊は既に始まっていた。
ダウンロードの終わった空間から順番に消えていく。
エクソシスト達は頂上を目指し、
脱出の鍵を探さなければならない。
間に合わなければ死ぬ。
ただそれだけだった。
洋室ではロードが退屈そうにソファへ寝転び、
ティキは煙草を吸っている。
エレナはウィングチェアに腰掛け、
静かに本を読んでいた。
すると。
不意に。
胸の奥が軋んだ。
息が詰まる。
理由もなく涙が溢れた。
ぽたり。
本の上へ雫が落ちる。
止まらない。
悲しい。
何が悲しいのか分からない。
けれど。
マーシーマが酷く悲しんでいる。
それだけは分かった。
エレナは静かに本を閉じる。
その時だった。
「おやすみぃ、スキィーン」と
ロードは呟きながら飴を持ち上げる。
ティキが「甘党の負け?」と質問すると、
エクソシストと相打ちだったらしい。
ふと顔を上げると、
窓際のティキも涙を流していた。
静かに。
そしてロードも。
マーシーマだけでなく、
二人のノアも泣いているらしい。
器の意思とは関係なく、
家族を失った事にノアが泣いている。
その瞬間。
勢いよく扉が開いた。
ジャスデビだった。
「ロード、ティッシュある?」
デビットは入って早々ロードに聞く。
何故なら彼らのノアも涙を流し、
パンクな化粧の象徴である
黒い目元が涙で濡れて流れたからだ。
化粧は滲み。
黒い筋が頬を流れている。
拭っても。
拭っても。
止まらない。
ティキはその様子を見て煙を吐く。
「お前らの涙って黒いんだ」
ティキの皮肉に対して直ぐに
「バカティキ!」
「化粧が落ちたんだよ!ヒッ!」
ジャスデビは同時に怒鳴った。
涙を流しながら。
文句を言いながら。
化粧を気にしながら。
それでも涙は止まらない。
ロードはソファに埋もれたまま鼻をすすっている。
ティキは困ったように煙を吐く。
騒がしい声が洋室に響いていた。
その部屋の隅で。
エレナだけは静かだった。
ウィングチェアに腰掛けたまま。
大粒の涙が頬を伝っている。
ぽたり。
ぽたり。
膝の上へ落ちていく。
何故悲しいのか分からない。
何を失ったのかも分からない。
ただ。
マーシーマが悲しんでいる。
その感情だけを受け入れるように。
エレナは無表情のまま涙を流し続けていた。
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