虚ろな少年の笑み









「あ。」



志賀は別件で調べごとをしており、
資料室から執務室へ戻る途中。
森医師の後ろにいた少年と鉢合わせた。

志賀を見つけると太宰はこれを漏らし立ち止まる。
それを御構い無しに志賀は歩みを進めた。
距離がある長い廊下を歩き進めて、
志賀と太宰は向き合う形になった。



「……森医師は教育がなってないようだな。
目上の相手には道を開けるのが礼儀だ。」

「僕はポートマフィアじゃないから、
此処のルールなんて知らないよ。
貴方と話ししてみようと思って
わざと目の前に立ったんだ。」

「森の助手と云ったか….助手にしては
頼りのないただの餓鬼にしか見えんな。」

「ただの餓鬼だよ。
森さんは僕を監視してるだけなんだ。
勝手に死なないようにね。」

「何…?」

「僕は早く死にたいんだけど、
なかなか死ねずにいたら森さんと出会って
安眠の薬くれるかと思えば、
なかなか死なせてもらえないだ。」

「………つまらん餓鬼だな。」



志賀はそう云うと太宰の横を通り過ぎた。



「貴方は悪口ばかり云われてるみたいだね。」

「……」



太宰の言葉に志賀は立ち止まった。
組織の幹部である志賀に対し、
大変無礼な発言で普通なら殺される。
そうとも知ってか知らぬか、
太宰は平然と口元を緩ませていた。



「好き勝手に生きていれば、当然嫌う奴はいる。」



振り返り志賀がそう云うと、
太宰の目の色が少し変わった。
暗く深い色をしていた瞳に微かに光が入った。



志賀は「失敬」と云い、
再び前を向いて去って行った。








ーーーーー……



「あ、太宰くんどこ行ってたの?
急に居なくなってたからびっくりしたよ。」



森医師の医務室に太宰が戻ると
仕事をしていた森医師はホッとした表情だった。



「森さん、志賀さんって面白そうな人だね。」

「へえ〜、珍しいね。君が人に興味を持つなんて。」

「うん。もっとつまらないものだと思っていたよ。」



そう云いながら太宰は一人用のソファに腰掛けた。



「でも志賀くんは怖い人だよ。
私達の事を第三者に漏らし、監視させている。
直属の部下では無く、別の人間を使ってね。」

「………その第三者は志賀さんよりも頭が悪そうだね。
監視させて直ぐに見抜かれてしまうほどの
阿保な部下を使うなんて。」

「それも志賀くんは見抜いているさ。
私達の頭の良さを図っている最中だからね。
太宰くんも気付かないふりしててね。
暫くは静かに過ごして様子をみよう。」

「え〜…私はもっと志賀さんと話ししたいなあ。」

「それは構わないよ。存分に学ぶと良いさ。
ポートマフィアという裏社会を牛耳る組織をね。」



森医師の言葉に太宰は興味なさそうだった。