自分の血は赤い










外回りの仕事を終えて執務室に戻ると、
志賀は人の気配がして扉の前で立ち止まる。
少し考えそのまま扉を開けると、
特に読みもしない本棚から抜き取った
本をソファで寝そべりながら読む太宰がいた。



「あ、来た来た。お疲れさま、志賀さん。」



志賀を見て太宰はパッと顔が晴れていた。
読みかけの本もテーブルに置いて
足軽やかに志賀の前へ歩み寄って来た。



「何の用だ。」

「志賀さんともう少し話したくて来ちゃった。」



何処かの女が男の自宅まで来たような
甘ったるい言葉に志賀は苛立ちを感じた。
ストーカーになりそうな重い女を想像させる。



「俺には無い。出て行け。」



そう促して扉へ道を開けるが、
太宰は一歩も動かず両手を絡めてねだった。



「そんな事言わないでよ。
僕 森さんとしか話してなくて退屈なんだ。
志賀さん頭良さそうだから楽しそう。」

「お前の退屈凌ぎするほど暇じゃ無い。」



志賀はそう云って太宰の横を通り過ぎると、
大量の書類が積み上がった執務机から
目的の書類を手に取ってソファに座る。
苛立っていたからか雑に抜き取られた書類の山は
ドサドサと床へ崩れ落ちていった。



「あーあ。整理整頓出来ないほど忙しいんだね。
マフィアってただ人殺してるだけかと思ったけど
意外と事務作業多いよね。サラリーマン並みに。」

「これ以上居座るなら、殺してやろうか?
自殺志願者なら願っても無いだろう。」

「本当?でも駄目駄目、まずは志賀さんと話を」

バン!

銃声が鳴り、一瞬で太宰の肩に神経が走った。
白いシャツに滴る赤い液体は自分の血だった。
志賀はまだ少年の太宰にさえ、銃弾を放つ。



ダダッ
「志賀幹部今銃声が……!(汗)」

「!、この子どもは…!?」

「興味本位で近付くもんじゃ無い。
森のとこで大人しくしておく事だな。
ただの餓鬼に殺した理由さえ必要ない。」

「…はは……怖い人なのは本当だ…」

「手前らは其処の血掃除しとけ。
餓鬼は放っておいて良い。」

「し、然し…」

「掃除を増やしたいか?」

Σ「い、いえ…!直ぐに片付けます!」

「ついでに机の書類も捨てておけ。」

「はい!」



駆け付けた二人の部下は志賀の圧に恐怖を抱き、
慌てた様子で一人は掃除道具を取りに部屋を出て行き
もう一人は志賀が崩した書類の山を
持てるだけ持って慌てて出て行く。

撃たれた肩を押さえる太宰は
自分が零した血を見て口角を上げた。
それを見た志賀は眉間に皺を寄せた。
面倒な奴に好かれたと溜息を吐く。







ーーーーー……



「だから云ったじゃないか、怖い人だって。」

「うん。本当に怖い人だった。一瞬で撃たれた。」



太宰は森医師の医務室に帰ってきて
すぐに肩の止血をやって貰っていた。



「これは彼なりの忠告だよ。
次失礼な事したら本当に撃たれちゃうよ。」

「それはそれで僕にとっては嬉しいけどね。
どうせなら痛みなく一瞬で死にたいけど。」

「全く、君が嫌われてたら僕までやり辛いんだからね。」

「好き勝手に生きてれば、嫌われても当然だって
志賀さんは云っていたよ?」

「嫌われたくないから今は好き勝手しないの。
肩身狭く今はやり過ごすべきなんだよ。」

「ふーん。退屈だなあ。」



太宰はそう云うと診察用の椅子で
くるくると身体を回転させていた。

頭の良い彼のはずなのだが、
時折見せる行動や発言にまだ子供らしさを感じる。
森医師はそう感じでやれやれと溜息を吐いた。