結局、あの後風見の報告を受けたがろくな情報はなかった。
かなり裕福な生まれのようで兄が一人。
少し前まで一流商社に勤めていたが、上司のセクハラやストーカー紛いの行動を機に辞めていた。
慰謝料はがっちり掴んで辞めたようで、見た目の割に意外としっかりしているんだなと思った。
海外を転々とする生活から日本に戻ってきて以降の消息は掴めなかった。
しばらく働かなくてもいいような金額だったようなのでそれも最もだ。
しかしこの間の小料理屋のことも全く情報に上がってこないし、現在何をやっているのかもよく分からない。
家族構成もあまりにありふれたことしか書かれておらず、俺達の表向きの経歴を見ているようで逆に信用できたものかわからない。
ただの民間人ではなかったのだろうか。

しかし、意外なところから話は進んでいった。

「現代アートのマネーロンダリングか」

「はい、組対からあがった案件ですが色々なところが絡んでいるようで」

風見が提出した資料には長く公安の捜査線上に乗る大物の名前が登っていた。

「分かっているだろうが金崎だけは何がなんでも公安で押さえるぞ」

「もちろです。ですが組対の方でも金崎の足取りだけは追えていないようで」

「組対の情報をあてする暇があったら我々で掴もうという気はないのか」


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