視線
「神童ほんっとありがとう!」
朝、学校で神童に向かって思い切り頭を下げる。神童ガールズの視線がとっても痛いが、謝らずにはいられない。あんな泣いておいてありがとうも言えず、ハンカチも洗えずに終わってしまったのだから。
「気にするな。それに仲直りしたんだからそれが一番のお前からのお礼だよ」
「神童は神か……!!」
あ、でもハンカチくらいは洗濯させてね、と言うと神童は困ったように笑う。その様子を見た蘭丸が私の頭にチョップを落とす。
「あんまり神童を困らせるな」
「昨日は俺に嫉妬していた癖に」
「うんうん」
「う、うるさいぞ!」
悪い悪い、と言って笑う神童につられて、私も思わず吹き出してしまう。むう、とふくれている蘭丸の頬をつつきながら笑うと「からかうな」と言って怒られた。
「まあとりあえず、仲直りしただけでなく進展もしたみたいでよかったよ」
「ウッ、神童はやっぱり神だった……」
まるで菩薩のような笑みを浮かべる神童はきらきらと輝いて見える。まぶしいから蘭丸を盾にすると、「何やってんだよ」と笑いながら頭を撫でられた。…くやしいけど、この人も顔が良いから様になって見えてしまう。
「霧野、 で、 なんだから、 頑張れよ?」
「ああ、ありがとう。 だったから…お前のお陰だ、神童」
「…二人とも?なに話してんの?」
「秘密だ」
途中から二人は耳打ちをして話し始めたので、所々しか会話が聞こえなくてその内容を聞いてみると、蘭丸は人差し指を立てて言った。いつもなら追求するのだが、何故だか今日はそんな気は起こらず「そっか」と適当に流した。
私は蘭丸の背中にしがみつきながら、頭をこつん、とぶつける
「蘭丸」
「ん?」
振り返った蘭丸に、ふにゃりと笑ってみせる。
「だーいすき」
(幸福に押しつぶされそうだ)
他の人に盗られないように注意しましょう
fin.