退屈しのぎの一貫にすぎなかった。
ただの気紛れ。ただの手順違いと言えば簡単なハナシだった。
それなのに、この少女の面影を背負う青年は退屈そうに呟いた。
我ながら、中々死にきれなかったらしい。
いや、死の概念が限りなく薄いと実感する。
幾千も幾万も己を喰われ己を殺し己を生かしたこの輪廻からは容易く解放させてくれない。
そんなことを考えているうちに、限りなく擦りきれてしまったものだと半ば諦めた。
そんなときだった。自身に興味があると男は品定めをするようにそう告げて襲ってきたのは。
我には実態すら希釈できる。概念すらも、認識すらと。だから幾度も切りつけようが触れさせようが関係なかった。
するりと風を切るようになにも掴めない。
気付けばすり抜けて、気づけばその前から消えている。気づけば意識そのものすらも泡のように消えていく。
我はシュレディンガーの猫。存在と消失を渡り歩く稀有で危うい存在。
の、はずだった。
何でこの男は我を掴める。何故我を認識できる。
イレギュラーな力でも発現したとでもいうのか。
「あー、なんでかねぇ。アンタに触れようとしたらできただけだぜ?」
「バカなことを言うな。本来我に触れようとしただけでと存在を素通りするはずだ。皆が皆、そうだったからな。」
「へぇ、だったら俺は特別って訳かい?」
「そうね。特別な変態よ。」
変態って、と悪態をついたようだがそんなことはどうでもよい。
我を掴める、つまり認識で来たということは我の着手はここに一旦収まったということだ。
しかし、いずれ認識がそれたり薄まったらそれまで。いつまでもとどめられなくなるのがオチだ。
我自身も幾度も世界を変えて時を変えて、流されるがままに異端となった。
「ま、俺の魔鎌が反応しちまったのかもなぁ?」
「本当にたち悪いな。どうなっても知らんぞ。」
得意気に笑うその男にもやっともしたが、あまりなかった特集ケェスだ。
たまにはこんなこともあっていいか。
いずれ離れる世界なら、少し居座ったところでかわりないだろう。
そう、猫が微笑んだ。