0.歴史の始まり
自慢じゃないが、私は日本史には些か自信があった。中学校、高校と習ってきた社会、特に日本史は私にとって得意分野だった。
そこにあるのは只の事実で、数学のようにパズルを解いて答えを導き出す必要はない。国語のように登場人物の心情を述べる必要もなければ、化学のように元素記号を組み合わせる必要もない。他の科目のように、思考すること、がほぼないに等しい。
歴史とはただそこにあった事実。過去の出来事。
少々ページを多めに割いてある近現代史さえ乗り切ってしまえば、あとは日本史という大河の流れに沿って大きな出来事を暗記してしまえばいい。そこさえ押さえれば、前後の流れも自ずと理解ができる。
難解な数式、意味の分からない昔言葉、辞書を引かないと問題文すら理解のできない外国語。それらすべてに比べて日本史はとても理解しやすかった。
だからこそ、こうして選択科目の記入欄の中の日本史という箇所にマルをつけて私はここに居る。
前後左右から聞こえる紙を擦る、鉛筆を走らせる音。それに加えて微かに時を刻むのは、この時の為に購入した電波時計。
カチリカチリと秒が刻まれて長針がひとつ進んだ。
視線を落とせば、目に映ったのは『日本史』という文字。
(全問正解なるかな)
ニンマリ、口元を歪めて端から見たら悪い顔だろうけど生憎この場に他人を気にする余裕のある人間なんかいない。
ゆったりとペンをとり、一枚捲った先、過去の出来事が私に笑いかけた。
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0.歴史の始まり