1.こんにちは
良く出来たゲームシステムですね、と思わず口に出しかけた。喉まで出てきた言葉をぐっと飲み込む。
まるで、私がプレイヤーでそのトーケンダンシ達が操作キャラクター、時間素行軍とやらが敵キャラだ。
その後も、こんのすけ君はこの時間素行軍との戦い、ゲームシステムについて説明してくれた。
本丸というギルドの本部、部隊編成や隊員の装備の補充、ところどころにスキンシップのシステムまであるらしい。とにかく私は、本部でキャラクター達に指示を出す立場ということだ。
社長が何かかな?部下に指示出してお給金出す感じなのかな?と、現実世界に置き換えてみるけれどそれはそれで全く想像がつかない。何せ私はまだ学生だ。
ドッキリでした。なんて言われても、ですよね、と済ましてしまいそうな状況ですが、狐の説明はそれでも淡々と進みます。こんのすけ君クール。
けれど、とてつもなく大事なことがあるので、いったんその説明に待ったをかける。
「何点か質問いいですか?」
「なんでしょう」
こてん、と首を傾げた小動物に湧き出た疑問を投げかけた。
「まず、私今大学生活を送っているんですけれど本丸?てどこにあるの?私1人だけなの?そもそも私以外にその、さにわ?ているの?生活費とかあるの?」
そう、そもそも私は花の大学生活絶賛謳歌中の学生だ。
今、金に不自由しているわけでも世の中に不満があるわけでもない。凡人だ。いやむしろ、大学に行かせてもらえて学費払ってもらえるだけありがたい恵まれた学生だ。どこかの社長になりたいわけでもなければ、交友関係を広げることに労力を費やすつもりもない。
何より、この楽園を手放すようなことは容易にできない。
「私、今の生活を気に入ってるのであまりやりたくはないんだけどなー…」
「……貴方様の言い分はよくわかります。この時代の審神者様方は皆様揃ってそのようにおっしゃいます」
ということはこの人たちいろんな時代で新入社員募集しているのか。人員不足が深刻なのが浮き彫りになった。
「ただ、審神者になるには相応の神気が必要。その神気をまとう者は限られてくるので、こちらもおいそれと帰るわけにはいきません」
愛らしい狐とはいえ人事官。やはり、こんのすけ君は食い下がってくる。
けれど、私もよくわからない世界の為に今を手放すことなんてしたくない。
「とはいっても、私も」
「本丸はこの世界にはございません」
「……ん?」
この世界、という単語。まるで世に数多ある、とある種類のライトノベル特有の単語に私は思わずこんのすけ君の言葉に耳を傾ける。
こんのすけ君はそれを確認すると、1LDKの私の部屋にある間仕切りのドアの前に立った。
「こちらのドアを開けて下さいませ」
嗚呼、展開が何となく予想できるほど、私はこの世界に毒されている上にこの状況を甘受してしまっているらしい。
言われるがままにドアを開けると、
「……綺麗な日本庭園ですね」
1LDKの部屋の廊下ではなく見事な日本庭園が広がっていました。
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1.こんにちは