男は、脳裏にちらつく情景を振りほどく様に女を組み敷いた。
「まっ、や」
「待たないですよ」
ぐちりと子宮口に亀頭を押し付ければ嬌声が響き渡った。それが麻薬の様に脳に響き渡り、そこから送られた信号により三好は己の熱が昂ぶるのが感じられた。
「みよしさ、これ、だめ」
「何がです?」
きちんと言葉にして下さい、と耳元で囁き耳孔を犯せば彼女が握りしめていたシーツに皺が増えた。
ひとつひとつ、彼女が纏っている理性の蔓を解きほぐし、中心にある千歳という、ただ一人の女を手中に収めるこの過程に三好はひどく興奮していた。
焦ることはない、じっくりと自分から求める様になるまでその身体を己の手で弄ぶことはどんな薬よりも効果がある。
三好は亀頭を左右に動かし、更に奥へと昂ぶる熱をねじ込もうとした。
「ひっ、やっだぁ」
逃げようとする彼女の腰を固定する。奥底にある彼女自身を捉えて自分に溺れさせるまで逃がす気はない。
「ほら、気持ち良いでしょう?」
「ちがっ、やっ、もう」
「嘘つきはいけませんね」
「っ、」
股からの汁で濡れた秘豆をぎゅっと摘めば全身を硬直させて彼女は果てた。
収縮した膣に締め付けられた己の肉棒は悦ぶ様に質量を増した。その感覚に千歳は虚ろな目を三好に向けながら首を横に振った。
「三好さんっ…もう、いや」
苦しさと悦楽が交錯する曖昧な感覚は彼女の思考を狂わせている。正常な判断はもう、出来ない。
三好はそんな姿に舌舐めずりすると、再び律動を開始した。
「まだですよ」
「ひっ、」
「逃がしませんから」
目を見開いた千歳の瞳に、欲に眩んだ己を焼き付けさせる。そのまま深く口付けて咥内を蹂躙しながら激しく腰を打ち付けた。
もっと、自分を刻み付けたい。消えない刻印を残して、自分の所有物として飼い慣らし、壊してしまいたい。
三好らしからぬこの激情に、彼自身もひどく苦しんでいた。
見られてはいけない、囚われてはいけない。けれど駄目なのだ、彼女を捉えてしまいたい。
堕ちて堕ちて、いっそ千歳という個人を
『殺してしまえ』
「やっ、もう、ひぁあ!」
ドクンと三好の熱の塊が脈打ち白濁が彼女の中に注がれる。それが注がれるたびに三好は充足感に包まれた。
ひとつひとつの理性の蔓が彼女から剥がれていく。彼が己の欲を注ぐたびに確実にそれは彼女を蝕み汚している。
何度も何度も腰を打ち付け白濁を注ぎ込む行為を繰り返して行く内に、千歳の口から抵抗する言葉は消えていった。
「みよ、しさっん」
千歳というベールが脱がされていく。何者にもなっていない、ただの人間として己を曝け出していく彼女に三好は囁いた。
「我慢しなくてもいいんです」
「あ…」
「ねぇ、千歳」
早く、千歳ではない貴女をこの手に。
「っ、気持ち、いい、のっ」
たった一言。しかしその言葉は、千歳という人間が崩壊したことを表していた。
理性に絡め取られていた彼女が、丸裸となり堕ちてきた。三好は目を輝かせる。
「何処がですかっ?」
「ひゃっ、あ」
「口に出して、何が気持ちいいんですか」
「あっ、奥っ、やっ、だめっ」
「どうして?好きなんでしょう?」
「ちがっ、やっ、ぁあ!」
羞恥に染まった顔はしかし恍惚に震えていた。理性に支配されていた苦しみから解放されれば、彼女はただ自分を求める女と化す。
手に入れたい。暴きたい。
「ねぇ、千歳」
子宮口に亀頭を押し付け、悪魔の囁きを彼女の耳に届ける。
「一緒に、堕ちましょう」
「あ、もっと、下さ、いっ、」
「っ、良いですよ、いくらで、もっ」
「ひゃっ、あ、ぁん!」
注がれる男の子種に女の身体は悦びに震えた。女の劣情に溺れた果ての姿に男は口元を歪めた。
全てを捨ててしまった女の居所は自分しかいないと、そう教え込む様に男は何度も腰を打ち付けた。その度に女は彼にしがみつき彼に懇願する。
「ら、めっ、おかしく、なるっ、や、ぁあ!」
「はっ、良いんですよっ、それ、で」
何も考えなくていい。ただ、
(貴女を手に入れさえすればそれでいい)
弧を描いた口元に似合わず、彼の目は哀切の色を映していた。
彼女が自分を求める事だけが、自分を此処に生きさせる。
彼女が堕ちている間だけ、自分を見つめるその間、彼が彼女を捉えている間だけ彼は自分を認識できるのだ。
互いが互いに捕らえられ、抜け出せない負の連鎖。
それでも、彼は彼女を欲した。
腰を打ち付け、もう何度目になるかわからない白濁を彼は注ぎ込んだ。もはや孕むだろう。
ーーそれならそれでいい。
「千歳、千歳」
「あっ、三好さっん、ひぁ!あ」
彼を求めた彼女の瞳にもまた同じ色を見て取れた。
彼はその瞼にキスを落とすとひどく哀しげに笑んだ。
「千歳」
もう戻れなくていい。
「もっと、狂って下さい。滅茶苦茶になって、俺を、俺も」
殺してくれ
放たれた言葉に懺悔するように瞳を閉じた三好に、柔らかな声が届く。
「三好さん」
さらりと撫でられた髪、ゆっくりと目を開けた視界の先には困ったように笑む彼女がいた。
「ひゃっ、あ、らめっ、もっ、気持ちいいのっ、」
「っ、あ、千歳」
「みよしさ、んっ、きてっ、頂戴」
「千歳、千歳っ、う、ぁ」
二人は互いに付けられた鎖を愛おしむようにまぐわい、そしてその名を捨てた。
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忘却、再生
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