
―ここにバトルシーンがあったはずですが省略―
「ぷはぁっ!ビックリしたぁ!!」
「……地盤が緩んでたんだね」
がらがらと音を立てながら、体を拘束する岩をどかす唯(ゆい)と狗縲(くるい)。
「げぇーっ!服砂まみれじゃん!またヒナに怒られちまう……」
「それにしても……さっきのはボクの完敗だね……」
はぁと溜め息を吐いて狗縲が肩を落とす。
その様子に唯はにひひと笑みを浮かべた。
「へっへ〜ん。オレなかなか強いだろ!」
「うん……君は強いんだね……」
静かに認めると、狗縲は目を細めて唯を見つめた。
その様子の変化に唯がきょとんとして狗縲を見つめ返す。
「何?どうかしたのか?……もしかして、負けると思わなかったとか?」
「そうだね……ちょっと舐めてたかも」
「かーっ!!どいつもこいつも!オレがチビだからってバカにしやがって!見た目なんて強さに関係ないのにさ!……でも、あんただって細いわりに力強かったしなぁ……。オレも最初ビックリしたしなぁ……お互い様か」
「嬉しいね……強者に誉められるなんて」
「うぇ?」
急に声音を変えた狗縲に唯は目を丸くする。
見れば狗縲は何やら視線を斜め下に向けて。手を後ろに組んで。何故か体をもじもじさせている。
「……え〜っと……どうしたんだ本当に?何か変だぞ?」
「……おかしくもなるさ……タイプな上に……強くて……ボクは相当……」
ボソボソと呟く狗縲に唯は何とも言い難い感情を抱く。
いきなり変わって変だとか、可笑しいとかそんなんじゃなくて、嫌な予感というか。
と、そんなことを考えていると急に狗縲が手を伸ばしてきた。
咄嗟に反応できず、あ、と目を見開いた瞬間。
視界が暗くなった。
いや、暗いんじゃない、黒が一面に広がったんだ。
しかも漆黒と言う訳じゃない、どこか柔らかい黒色。
あと、何故か温かい。
あと、何故か柔らかい。
どこから感じる感触だろう?顔のどこか、鼻?あ、違う、口だ。
口に温かくて、柔らかいものが、え?
そこまで認識して、唯は更に目を見開いた。
「……〜〜〜〜〜っ!!?」
驚いたと同時にちゅく、という小さな音が耳を刺激する。
「〜〜っっ!わああああぁぁっ!!!!」
ドンッと勢いよく突き飛ばして唯は荒い息を吐く。
心臓がドクドクして、顔が死ぬほど熱い。熱い。
「……痛い」
突き飛ばされた狗縲がむくりと起き上がる。
唯は突き飛ばした形のまま口をぱくばくと動かした。
「なっ、なななななななななな……!」
「……どうしたの獣刃(ししば)?」
「どうしたんだ?じゃない!!おおおお……お前今……」
「……顔が真っ赤だよ獣刃」
「うっさいやい!てか、オレが聞きたいのはそんなことじゃなくてだなぁ……!」
不意打ちと顔の熱の事で生まれた羞恥心を怒りに変え、唯は狗縲に掴みかかる。
当然狗縲はかわそうとする。それでも食いついて腕を伸ばす、が手は狗縲の胸元を掠めただけだった。そして、
「っ!?ひゃぁっ!!!」
何故か高い声をあげた狗縲に思いきり突き飛ばされた。
その勢いで唯は背後の岩に思いきり頭をぶつけ、その痛みに悶える。
「〜〜〜っ!てぇっ!何すんだよっ!!」
「そ……それはこっちの台詞だよ!い、いくら君でも、そんな……」
目尻にうっすら涙を浮かべながら唯は狗縲を恨めしげに睨む。
狗縲も唯を睨み返した。
何故か顔が赤いというオプション付きで。
何故か両腕で胸をかばいながら。
「…………え?」
ごしごしと目を擦って、再度狗縲を見た。
赤い顔。睨む眼光。震える体。胸を覆う両腕。
「……え、えぇっ!?!」
ある可能性に行き着いて唯は絶叫する。
胸元を掠めた唯の手。直後、突き飛ばした赤い顔の狗縲。
まさか、まさか。
「あんた……て……おん、な……?」
わなわなと震えながら問えばついと目を逸らされた。
絶句。
女。女だ。
失礼だけどぺったんこな体だからそうだと思い込んでいた。
細いのもそういう体質なんだと思った。
でも違う。
帰依(きえ)狗縲は正真正銘の女の子だ。
「……あ、でもだとしたって……何であんな、あんな……」
不意打ちのことを問いかけておいて、その場面を思い出してしまい再び顔が熱くなる。
いや、まだ精神衛生上異性であった方が先の行動のショックが薄れるが、やはり不可解な問題だ。
すると、狗縲がまだ僅かに頬を染めながら真っ直ぐに唯を見てくる。
思わずこくりと生唾を飲んだ。
「何で……って聞かれたら……答えづらいけど、言う。
その……ボクは多分。相当、君に惹かれてしまったみたい……その……思わず接吻がしたくなるくらい」
キス。
そしてカミングアウト。
彼―いや、彼女の答えに唯はただ呆然としてその場に立ち尽くした。
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実はこんな二人を書きたいがために考えられた緋雅哭一行だったりする。
のでメインは緋雅哭と唯に見せかけて唯と狗縲ちゃんなのです。
ちゃんですとも、ええ。
