
皇族の息子で、たかが平民の自分に声をかけ、「友達になろうよ」そう言った変わり者。
本当は生き別れた兄。
最期まで、家族として触れ合うことのなかった兄さん。
貴方の首は何処へいったの?
巫女の一族だから、力があるからと、性別を偽らされた弟。
互いが唯一の家族だった双子の弟。
巫女でなくなったら、一緒に遊ぼうと交わした約束。
でも君はそれが叶わないと知っていたの?
赤い紅い朱い緋い地面。
目の前で噴き上がる噴水も紅い。
おレの手も真っ赤。
ポタリ、ぽたり、滴る雫も黒が混じった緋色。
“逃げて!”
叫んだ途端に胸を貫かれた弟。
何も分からず頭と体が別々になった兄。
取り残されたのは……おレだけ。
生きているのは、おレだけ。
そう、生きているのは……今この場所に、この国に生きているのは……おレだけ。
半乾きの血液がまた地面に堕ちる。何も、ない。
*された。兄と弟。
*した。この国の全ての人間。
あ、あ・・・でも、それでも、それでも。
それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも、それでも……足りない。
兄と弟を喪った悲しみは癒えない。
屠った筈の憎しみと哀しみは、消えない。
まだ足りない。まだまだ足りない。*さなきゃ。まだまだ*さなきゃ。割に合わない。
兄に何も教えないまま閉じ込めていた罪も。
弟に無理矢理重責を担わせ続けた罪も。
消えてない、償われていない、購わせなければ。罪の――贖罪を、払わせなければ、充たされない。
もっと、もっともっと、もっともっともっと――――――――…………。
何度時間が廻っただろう。
魔力が消え、光と闇が生まれて、混ざって消えて、魔力が生まれて、満たされて。
幾つの輪廻が巡った。
おレは長く彷徨った。
おレは永く姿がなかった。
嗚呼……けれど、やっと見つけた。
黒い髪、暗い部屋に一人、愛もろくに届かず、外をも知らない。
嗚呼……その兄にも、弟にも似たその容貌。
ミツケタ。
タダイマ。
ハジメマシテ、“綾廻”。
「……?……だぁれ?」
キョロキョロと辺りを見渡した瞬間、激しい騒音と振動が部屋を揺らす。
次いで響く誰かの怒声、罵声、騒がしい足音。
「な、に……?おとーさ……おかーさん?」
コワイノカイ?“綾廻”。
「っ……!?だ、れ……だぁれ?」
ソンナコト、ドウデモイイジャナイカ。ソレヨリモハヤクイコウヨ。
「行、く?どこに……?」
キマッテルダロウ?
オトーサント、オカーサンノトコロニ。
「あ……!お、おとーさん!おかーさん!」
駆け出して、入ってはいけないと言われた部屋へ。
さぁ“綾廻”。
これが、ハジマリダヨ。
…………。
なんだかまぶしくて目を覚ました。
あれ?どうしてぼくはねてたんだろう?
たしかいつもみたいに一人であそんでて……。
あ・・・そうだ。おっきな音がしたんだ。
それでおとーさんとおかーさんのとこに行こうとして……。
あれ……?
ここはおへやの中なのに、どうしてこんなに明るいんだろう?
あれ?どうしてじゅうたんがぬれてるんだろう?
それにおうちのじゅうたん、こんなに赤かったかな……?
そうだ、おとーさんとおかーさんは?
あ、そこにいた。
あれはおかーさんのおててだ。
おかーさんねてるのかな?
おこしてあげなきゃ。
……あれ?
どうしておかーさんの、手しかないんだろう?
あれ?あっちにはおとーさんの足がある。
あれ?でもなんで足りないの?
あれ?このおっきい玉はなに?
あれ?このふわふわしたものはなに?
あれ?このどろどろしたのはなに?
あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?あれ?
どうして?
どうして……おかーさんのおかおと手がはなればなれになってるの?
どうして……おとーさんのおかおがどこにもないの?
ぴちゃん。
あれ?手になにかついた。
……絵の具?真っ赤な絵の具?
あれ?とれないよ。
あれ?手が真っ赤だよ。
あれ?ふくも真っ赤だ。
……おとーさんとおかーさんも、真っ赤だよ?
真っ赤 だ よ ?
「……ぁ……ぁぁ…………あああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
さぁ“綾廻”。
始めようか。
哀しみを世界にぶつける物語を。
