『ド美人……』
「は???」
『あっ、すみません。えっと…ハリウッド俳優です???』
「…あんた頭大丈夫かよ。」
事の発端は30分前に遡る。帰る途中に見覚えのあるバイクを見つけたのだ。確かあれは泰宏のバイクだ。もしかしたら近場に居るかもと近寄った時だった。そこには泰宏の姿はなく、代わりに白髪の美男子が立っていたのだ。
何だあの美人は!!めちゃくちゃ最高な美人ではないか!!
そんなことを思っていたら、思わず声をかけてしまい、冒頭の会話が始まる。
『いや…ほら…こんな美しい美少年がいたら声かけちゃうじゃないですか。』
「……そんな声かけられた事ねぇから。」
『マジかー…』
うーん、と相手をじぃっと見つめればすごく嫌そうな顔でこちらを睨んでくる。口の傷はどうしたのだろうか。
『ねぇ、君その…痛っ!』
「お前、何やってんだ。」
ゴンっと頭に衝撃が走り後ろを振り返れば幼馴染の彼が立っている。どうやら私は彼のチョップを食らったらしい。彼にとっては軽い打撃としか思ってないだろうが、思ったより痛い。
『あれ…やす…あー、武藤くんだ。何って…何……ナンパ?』
「は?」
『いや、違うな。ちょっとこのド美人の子とどこで知り合ったの?めっちゃ美しすぎてびっくりしたんだけど。』
私の指さす方にいる人を見て、あぁ、三途なと呟く。成程、三途くんって言うのか。三途って名前なのかな。カッコ良い名前だ。どうやら三途くんが泰宏のことを隊長って呼んでいるし、もしかしてなんか今所属しているトーマンの子だろうか。
「はぁ…三途、悪いな。びっくりしただろう。俺の幼馴染だ。」
「…ああ、噂の…。どうも、三途春千夜です。いつも隊長にお世話になってます。」
『はるちよくん…!!名前までド美人じゃん。』
私1人が盛り上がっていると、全力で引いている泰宏。そんなに引かなくても良いのに。だって仕方がない。こんな美しい人誰でもテンションが上がるもんだ。
『いやぁ、私の周りにこんな美しい人居ないわけよ。だって武藤くんとか禿げだし』
「おい、テメェしばくぞ…スキンヘッ『あ、別にその髪型が嫌いって言ってるわけじゃないからね武藤くん』……。」
あれだね、春千夜君は髪の毛伸ばしても美しいイケメンだね。なんて言えばキョトンとしていた春千夜君がくすくすと笑い始めた。あれ、何か変な事言っただろうか。心配になり泰宏の方を見れば頭を抱えてる。あれ、やっぱ変なこと言ったかな。
「隊長の幼馴染って…マジで変わってますね。」
「はぁ…悪ぃ、三途。こいつテンション上がるとずっと止まらねぇから。」
『え?…え?なんかごめんね…?』
とりあえずこれは謝っておいた方が良いのではないかと、一応謝れば。にこりと笑顔を向けてくれた。これは大丈夫と言うことだろうか。良かった。
「…で、名前。バイク見つけて寄ってきたんだろ。乗って帰るか?」
『お、話が早いですね。武藤くん。でも先客いるなら大丈夫だよ』
「いや、別に俺は大丈夫ですよ。隊長も好「三途」…っとすみません。まぁ、俺家近いんで。」
『?』
春千夜くんの言葉に首を傾げていると、泰宏がいつの間にか取り出したヘルメットをがばっと私に被せた。
「おら、名前早く乗れ。じゃあな三途。また集会で。」
『え、あっちょっと!!春千夜くんまたね。これからも武藤くんの事よろしく!』
「ッス。」
ヘルメットの装着に手こずっている間に抱き上げられてバイクに乗せられる。子供じゃないのに。すぐに出発させる泰宏の服を握りしめて春千夜くんにひらひらと手を振った。
泰宏の大きな背中を見ながら乗るバイクは実はかなり好きだったりする。意外と私のことを気を遣いながら運転してくれるし、何よりこの逞しい背中が好きだ。運転中はあまり返事のない泰宏に話しかけるのも好きだったりする。それを前本人に話したら馬鹿じゃないのかって言われた。でも、好きだから仕方がない。
『泰宏ー。春千夜くん綺麗だったね。』
「ん、」
『口元の傷あれもカッコよかったけど、彼にとってはあの傷どんな思いがあるのかなー、嫌な思いとかあるならマスクとかで隠してもカッコいいかもねー。』
「おー…」
さっきから、返事が一言しか帰ってこない。バイクだし、多分ちゃんと聴こえていないのかもしれない。
『あ、春千夜君美人だけどね。泰宏の顔もかっこ良いと思ってるからねー。』
喋っている途中に大きなトラックが横切る。そっちの音の方が大きすぎて、は?と聞き返す彼に何でもないよと言えばそれ以上何も聞いてこなかった。