私と赤司の過去
年下の幼なじみと言うものがいた。小さい頃はよく遊んだが彼を私はよく泣かしていたが彼は懲りずに私の後ろを着いてきた。小さい頃ちゃんばらごっこなど勝負事が好きだったが彼との勝負は必ずといっていいほど私が勝っていた。小学生となり同学年との交流が増え彼との交流も段々と少なくなったかと思いきや何一つ変わらず私の後を着いてくる彼。当時私はうんざりとしていた。なぜならなよなよして弱い彼と遊ぶと皆と遊べなくなり、仲間外れになると思ったから。それでも彼と遊んであげてるのは彼に友達がいなかったから。私が遊ばないと彼はいつも一人なのだ。



「僕、翼ちゃんのこと大好き」

彼はある日私にそう言った。よく言われる言葉だったが、その時は腹の虫が悪かった。彼に酷いことを言った。

「私はあんたのこと嫌い」
いつもはあっそ。とか言葉を濁すのだが今回は突き放す。途端彼は予想通り大粒の涙を浮かべながら恐る恐るなんでと問う。

「そんななよなよして泣き虫で弱虫な男嫌い!あんたと遊ぶから皆と遊べないのよ!」

「…じゃあ、もっと男らしくしたら、一緒にいてくれるの」

「あぁ出来るならね!!」
今思えばなんと軽はずみなことを言ったのだろうと痛感している。その事件のあと彼は変わった。私が言うように一人称を俺にし男らしく振る舞いスポーツや勉強をこなすようになった。年を重ねるにあたって私達の関係は姉弟から幼なじみとなった。彼と遊ぶことはほとんどなくなったが会話する程度には関係は修復した。しかしやはり急に変わるのはぎこちなさを感じた。 中学生となり私は異性というものを知った。どんどんと同級生たちは私の身長を追い越していき、肉体的にも私は女になっていく。初恋をした。相手はバスケットボールをしていた。だからバスケのマネージャーとなった。彼にその事を言うと彼もバスケをし始めた。彼も中学生となり私の身長を追い越していた。昔は弱虫であった彼は今や才色兼備の王子様ポジションと化しているものの彼の私に着いてくる性質は変わらないようで彼もバスケ部に入ってきた。入ってきたのはいいが才能があるらしくすぐにスタメン副部長となった。女子にキャーキャー言われている彼だが私にはまだ弱く、私といるときは隠しきれず時々かつての素の彼が見え隠れしている。それに優越感を感じていた。

「ねえ、紺野さんは赤司君とは幼なじみなんだよね」

「そうだけど」

「好きなひととかいるのかなぁ?」
同じマネージャーがある日私に聞いてきた。そういえばそんな話聞いたことない。ちなみに私の初恋は既に華々しく散った。理由は言わずもながら素直になれない性格…今はそんなことどうでもいい。


「あんたさぁ、女の子に興味ないの?モテてるでしょ?」
部活の帰り道のこと、二人きりになったと同時に私は昼間の話題を振ることにした。彼はギクリと一瞬固まったがすぐに正常に戻り眼を合わせずに答える。


「え、あ、まぁ告白はされたが断った」

「まさか今はバスケ恋す「好きな人がいるから」

「え、そんな話聞いたことないけど」

「言ってないからな」

「酷っ私は言ったのに!」

「…勝手に言ってきただけだろう」
こいつっ

「報告連絡相談!」

「は?」

「で、誰なの?!」

全然眼を合わせずに話していたのもしゃくに触ったので彼の制服の裾を渾身の力で引っ張りこちらを向かす。するといつも涼しげな彼の顔は夕日と同じく赤く染まっていた。う、と彼のたじろぐ声が心地よく感じた。彼は好奇心に溢れた私の顔をちらりと覗いた後、浅くため息をつき、意を決した顔となり私を真剣な眼差しで見つめる。


「君だよ」

子供だと思っていた彼が夕日の効果だろうか綺麗で格好いいと不意に思った途端そう言われ、心拍数が上昇し呼吸が上手く出来ない。今度は私が立ち尽くす。からだ全体が熱くて焼けそうだ。彼は赤い顔で私をじっと見つめてくる。どこかで見たことがあるような少女漫画のような展開に、彼を男として見てしまったということに私は動揺を隠せなかった。


「え、無理無理無理無理。私は目が赤色で睨んだらなんか発動するような特殊能力持ちの完全無欠の絶対王者で勝利のためならどんなこともするダークヒーローがタイプなの。あんたみたいに王子様的なキャラで私に負けるような人間とは真逆。おとといきやがれってんだぁ!!!」
私は彼を思いっきり突き押して全速力で逃げていた。 その後彼、赤司と会うことはなかった。つまり私が避けて避けて避けて避けているからだ。そのまま私は引退、卒業となった。卒業式の日赤司が私の前に立ちはだかる。わいわいと皆で泣いたり笑ったりとしているとき異質の空気が私を支配した。


「少し、いいか」

「…うん」
回りの女子たちはキャーキャーと騒ぐ者と睨む者もいた。無理と言うのも言わせずまま私は引きつられて人気のない校庭の隅に追いやられる。久々にちゃんと見た彼はなんと冷たい瞳をしているのだろう。そしてまさかのオッドアイ。嫌な予感、これは以前にも体験したことがある。そう、彼が弱虫から王子へと変化した時と同じだ。


「雰囲気、変わったな」

「翼がそう望んだんだろう」
コイツが、私に告白した時私が言った特徴とまた合わせてきたのだ。噂ではいまやバスケ部は負けなしの帝王とまで言わしめていることは私の耳にも入っている。


「…で、要件は?」

「今後の事だ。お前は新設高に行くと勝手に決めたそうだな」

「新しいから綺麗かな、と思って。てかあんた何故その事を」

「山田川とかいう友達とやらに聞いたらすぐ吐いたぞ」
山田川てめぇっ

「着いてくるなよ」

「まさか、無名の新設高に僕が行くとでも思ってるのか。お前が来るんだ。」

「うんうん、あんたは推薦来てるからな、新設高なんか来ない、え、僕?」


「僕は洛山に行く。今年は仕方ないが来年はお前が来るんだ」

「ふざけるな!そんなこと」

「するんだ。これは相談ではない。決定だ」

「嫌!それに私の知っている赤司はそんなこと言わない!誰あんた?」

「僕はただお前の言うとおりにしてきただけだ。お前のために地位や名誉を手に入れた。お前の望んだ性格、能力を手に入れた。なのに何故お前は僕を見てくれない?」

「っ」

「なぁ翼。」
違う、私は、私は、そんなこと望んでいないっ。
でもこれは私が招いたことだった。あの時素直になっていたら、優しく出来ていれば彼はこうならずに楽しくバスケが出来ていたのかもしれない。あんなに一緒にいたのに、笑ったりしてたのに、凄く今は遠く感じる。


「まぁ、いい。いつか必ずお前は僕の所に来る。」
言葉がでない。言わなちゃいけないのに。彼は私に背を向けて遠ざかっていく。私はそれを見ていることしかできなかった。今までは一番近い存在だったのに。どんどん彼が彼じゃなくなっていく。それも私のせいで。それが嫌で嫌で堪らなかった。彼のこと、幼なじみとしての生活は私には心地よく、それを比喩にするならそれはぬるま湯。しかし彼の告白により崩壊する。私にとって彼は幼なじみであり、弟であったため恋愛なんて考えていなかった。悔しいが告白の時の彼はかっこよく見えてしまったことにより混乱しあのようなことを言ってしまった。 きっとこのままだと私はいつか彼をまた拒絶してしまうだろう。私は彼のことを忘れるようにした。 でもやっぱり心の片隅にはアイツがいて、自分の言葉が原因であって、謝れない素直になれない私が嫌いだった。謝りたい、でも素直になれない。だから容姿も変えて、素直になれるように本を読んだり女の子らしいしゃべり方をしたり誠凛高校でまたバスケットボール部のマネージャーを勤めたりした。結果として新設にしたらいい成績を納めて私自身も謝る覚悟もできた。それに当時は赤司と一年全く会わなかったため、もしかしたら彼は、新しい誰かを好いているかもしれない。それならそれでいい、ただ今までの事を謝りたいだけで拒絶されることも仕方ないことだと思っていた。むしろ私といることでまた彼が変わってしまうのではないかというほうが怖かった。

その時は私と離れれば元の赤司に戻ってくれるのではないかなんて思っていたがむしろ悪化していた。赤司達の全中決勝を見に行った時に見たものは私のしたことの重さが身に染みた。その夜に赤司の家に行き、その追求をした。


「おい、赤司。何だあの試合は!!」
決勝というのに、奇跡の世代はゲームをしていた。相手に一番失礼な仕方で。キャプテンである赤司はそれを止めることもなく、黙認していた。勝てればそれでいいのだろうと私を嘲笑うかのように赤司は私に言葉を投げた。


「久々に会ったのに、お前は相変わらず煩いな。まずは優勝を祝ってくれないのか」

「祝えるかあんな試合!お前、本当に変わってしまったのか?」

「変われと言ったのはお前だろう」

…ごめん、無理させて。それをいいに来ただけなのに。私はまた同じ過ちをしてしまった。


「いいか!貴様のそのだらけた根性鍛えてやる!!高校!!赤司、卒業式の件私達誠凛高校が貴様に負けた時結婚でも同棲でも子作りだろうでも処女でもくれてやろう」

「…乗った」

「あ、いや」

「僕が高校で全国制覇した暁には翼の処女を貰うことにしよう」

「おおおお女に二言はない!」

「それじゃあ、翼。…あぁ一応聞くけど僕が負けた時は?」

「一生私に付きまとうな中2病!」

ああ、死にたくなった。
この一年、誠凛で一緒にバスケしてきて、舐めたことをしてきた奇跡の世代達の敗北を見てきた、涙を見てきた、楽しそうに、必死にだ。そんな姿は久しく見ていない。私はそれを征十郎にまた思い出して欲しい。だから征十郎を倒したい。そして…



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