女と旦那
「んで、なんで私がここにいるんだよ」
目が覚めると布団の中にいて斬られたと思われる腹の痛みが込み上げると同時に現状を把握した。揺れる地面ここは船の中、そして目の前には会いたくてそして憎い男がいた。しかも旨そうな酒片手に。
「起きたかよ。」
「最悪な気分よ。アンタの部下のせいで」
「そうかい。今回は勝手な部下が勝手な事したからなぁ。」
「ほんとね、傷口痛いし。」
「まぁ、どっかの誰かが挑発したせいだがなぁ」
バレたか。
「…それになんでここにいるのかしら、私」
「あぁ、ヅラ殺ったと聞いてからお前の事マークしてたら案の定な。遅くなったがな。騒ぎになりそうだったから治療かねて拉致した」
拉致って…
「そう、零は?」
「あ?アイツは大したことねぇよ。」
「そ、よかった」
腹の痛みがあるため寝返りしながら体を起こし、窓ぶちにもたれる晋助に近付いた。
「…」
「なに嫉妬?」
「…そんなんじゃねぇって何しやがる」
晋助の持っていたお猪口を取り上げて一気に飲み上げた。
「何って人斬りのせいで居酒屋で酒が飲めなくなったんだぞ、責任とれや」
「家で飲めばいいだろうが」
「ふざけんなよ。人が作るつまみと酒が上手いんだよ。」
「知るかよ、それに怪我人だろうが」
「んだよ、器が小さい男だな物理的にも」
「物理的ってなんだ物理的って」
「そういうところだよ」
「…このまま俺とこねぇか」
「なに急に、本当に私のこと好きだな」
「あ?その言葉そっくりそのまま返すぜ」
「でも駄目よ。貴方は貴方のやるべきことがあるのだから。今回の件では感謝してるけどそれをすれば私がいればそれが枷になる。それくらいなら死を選ぶわ。前にも言ったが忘れたの。脳萎縮してんじゃない?いい医者紹介しようか?」
「…ほんと可愛くねぇな」
「そうね、って」
お猪口を取り上げ自分の方へ引っ張った。腹が痛い私には体を支えきれずそのまま奴に抱き付く形になった。煙管臭さが鼻についた。増やしやがったな、コイツいつか肺炎で死ぬだろうななんて思ってそのままの体勢でいたら晋助は左手に触れ始めた。違和感を感じたので手を見ると薬指に指輪がはめられていた。相変わらずムードのない男だな。
「なにこれ」
「付けてろよ、男避けだ」
「…独占欲強かったのお前」
「そんなもんだろ」
「貰ってあげるけどサイズ合わないわよ。なにこれ買ってきたのにサイズ合わないとかないでしょ?どや顔台無しよププ」
「あ?!知らねぇよ!んなもんなもん初めてなんだから適当だ!!」
「爪が甘いわね!本当に!!」
「それなら返せや」
また指輪を取ろうとする晋助の手を逆に握りしめて私は体にきつく抱きついた。
「嫌よ!質屋で売ってそれで酒買うから」
「やめろ!」
「てか最近煙管の量増やした?臭いんだけど」
「それ言うならお前は酒臭いんだけど嫌ならなら離れろや。」
「嫌」
「は?」
「…」
嬉しくてにやけてるところ見られたくないだけだけど?!
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