女と被害者と加害者
ふふふふ、やっと完成したぞ。私はここに来て素晴らしいものを開発してしまった。媚薬というものがこの世に普及している時代だがこれはその逆、つまり性欲抑制剤。今まで酒ばかりで仕事をしていないと思っていた諸君、私とて新しい薬の開発もまたこっそりと行っていたのだよ。ふふふ、これが世に渡れば更に金が入り酒が嗜めるぞ。私は笑いながら洗濯物を干している零に向かい声をかけた。てか主婦かお前は
「零君や」
「な、なんですか?!その笑顔は?!」
「師匠命令だ、これを飲んでくれ」
「なんですかこのどす黒い液体は?!!」
「え?美味しいよ」
「味じゃない!その効果が知りたいんですよ!!」
「…飲めばわかるよ」
「それが一番怖いんだって」
「そっか、じゃあオレンジジュースと混ぜる?美味しいかもよ」
「話聞いてました?割っていい代物なんですか!」
「大丈夫よ、たぶん。きっと大丈夫恐らく」
「曖昧な表現しかない!!」
「ちっ糞使えない奴だな」
「ここに来てボロクソ?!」
相変わらず察しがいい奴だ。これが本能的に自分にとって不利益なものだということがわかってしまうなんて。
「邪魔するぞ」
後方から声がしたので振り返ると珍しい客がいた。
「あ、陸奥ちゃん!」
彼女は陸奥といい、私の戦友である坂本辰馬という糞野郎の下で働いている苦労人である。そんな奴が貿易会社の社長と来たものなので恐ろしい。たまに江戸に降りてきたと思えばこうして遊郭やらキャバクラやらに脱走した社長の捜索に私のもとへ訪れる事が多くなり、そして親しい間柄となっていた。被害者同士として。
「先生、あの糞ヘタレはここに来ておらんか?」
「珍しく江戸に来たのか!来ていない」
「あぁ、物資調達にじゃ。あとついでにホレ土産じゃ」
陸奥ちゃんは懐から宇宙語でかかれた酒を出してきた。
「おお、これはあの伝説の…有難い」
「アンタら仲良かったんですか?いつの間に、てかまた酒かよ」
「まぁ、互いに身近の人間が女癖が悪いのでな。被害者の会を開いている」
「何それ?!」
「お前の事だよ」
えー、と他人事のように声をあげる零を投げ飛ばした。お前の女癖のせいでどれだけ被害を被ったと思ってるんだコイツは
「そうだ。代わりに今完成した薬をやろう。性欲抑制剤だ」
「これはありがたい」
「お、陸奥もおったか!久々じゃのう桃子!!」
やはりきたな、とそう声のする方を振り返ると陸奥ちゃんの探していた相手である坂本辰馬糞野郎があっけらかんとした感じでいた。煩いから毎度毎度ここに来なくてもいいのに。
そうだ、
「相変わらず煩い男だな。そうだこれ飲んでくれ」
「なんじゃこの毒々しい液体は?酒か?」
「坂本さん!同じ立場としてやめ、「おーなかなか上手いのぉ!!」
私が差し出した液体を零の静止を遮って辰馬は一気に飲み干した。傍らで零が震えていた。
「ん、あれ?」
すぐに辰馬の体に変化が現れた。股間に違和感を感じた辰馬は下衣に手を突っ込んで確認し顔を真っ青になった。
「ワシのダイナマイトがなくなっちゅう?!!何故じゃ!これがなくてはおなごを楽しませる事ができん!」
「せんでいい!」
「つめた!」
「最大まで貴様のダイナマイトとやらを小さくした。効力は性器の委縮で一週間以上は何をしても勃起できないはずだ。これ予備ね。一週間に一回で良さそうだ」
「まてまて!ワシのダイナマイトは一週間もこのままということか!?」
「まだ試薬段階だからもっと早いか遅いかわからんよ」
「そんな、」
「陸奥ちゃん。これ予備ね。ただであげるから副作用とか持続時間とか経過を教えて欲しい。」
「了解した 。」
「「人体実験!?」」
「馬鹿言え、お前達が仕事をすればそもそもこんな会開く事もなかった。自業自得だ。因みにあまり飲み続けると男性ホルモンなくなって本当に女性になるかもな」
「それはそれでいいかも」
「おっとすまぬ、どうも足癖が悪くてな」
辰馬の言葉に陸奥ちゃんが本人を蹴り飛ばした。相変わらずすごい威力だ。
「構わないよ」
「零、まだここにも予備があるんだ。どうする?」
「すみません、もうしません、勉強します仕事もします迷惑かけないです」
当分の間、零は大人しかった。
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