女というものはわからない


父は攘夷志士として我が道を生きそして立派に死んだと母に聞かされていた。それから俺を妊娠していた事に気付いてそれから俺が成人するまで女手1つで俺を育ててくれた。母は父と違い立派な医者でもあり研究者で世界でも有名と自負していたため金には困らなかった。母は普段凛としていて父がいない俺に対しても深い愛情をくれたので不自由も孤独も感じることもなく育った。俺は母に幸せになって欲しかったのもあり再婚を進めた時期もあったがかつてないほど殴られた。お前の父は自分の道を突き進んで死んだんだ、私も筋ってもんがある。だったかなそう言って泣いてた。俺はその時の涙はどういう意味なのかわからなかった。父が死んだときでも涙ながさないほどに普段は泣かない人らしいのに。
そんな母も俺が成人するとアルコールの過剰摂取が流石に祟ったのか肝臓を悪くして亡くなった。母は死ぬ直前でも俺に悪態ついていたがどうも幸せそうに笑って逝った。天涯孤独となった俺は今まであまり考えていなかった事を考える事が多くなった。母はどうしてあの時に泣いたのか、悲しかった?寂しかった?怒っていたから?そもそも俺がいるせいで泣けなかったのだろうか。ならば俺がいなければ母は幸せだったのか。少なくとも俺からすれば、母という愛してくれる者がいなくなってしまった世界で生きることが息苦しく思った。だから俺を愛してくれる人と沢山寝たりしたが物足りない。セックスの最後射精する瞬間だけは何も考えなくてもよかった。でも満たされることはなかった。俺の人生何処でミスった?そうだ父が死んでからだ。ならば歴史を変えようという結論に至った。
こんなに簡単に言うのも理由があり、当時母親から引き継いだ研究の中の1つでタイムマシンというものがあったからだ。父に会いたかったのか歴史を変えたかったのかわからないが母の性格上そう思ってきても絶対に肯定はしないだろう。しかしこんなもの作ろうだなんて並大抵じゃないことを考えるところに母の思いを感じた。研究はほとんど完成していてあとは実験するのみだったので披験者を申し出た。リスクがあるものだったので他に申し出る者もいなかった。
結果は成功と思われる。というのも俺が未来で調べた内容と少し歴史が違うからだ。資料では父が浮気がバレたり、流行り病にかかるとかあったがパラレルワールドかまたは俺がいるせいで次元が歪んでいるのかわからないが少しイメージが違った。
父は鬼兵隊の総督とのことだった組織に入り上手いこと母の監視役のポストに入ることもできた。
始めてみる父の印象は鬼。しかし母が絡むとただの一人の男だった。母もまたしかり。寂しさを紛らわすために酒を飲んでいたこともわかった。

ただ母は頑なに父と共に行くことをしようとしなかった。二人とも素直ではなかった。気づけば次に生まれる俺のためにも二人、三人でいる時間を増やすことが俺の目的となっていたが、互いに素直になれないのかどうかはわからないがそれを頑なに拒否してくる(特に母の方が)
それに流石母というべきか、俺の素性は見抜いていた。ビックリしたのは父だ。父も俺の事を見抜いていたらしく俺は母と一緒に置いていかれた。イライラした、俺は相変わらず足手まといなのだと実感してしまったからだ。
この世界でわかったことは両親は互いに素直ではないけど誰よりも互いを理解し信頼しているのだということ。ここに来て子として愛されることに実感できた。そして母が涙を流した理由、それは父の分身でもある俺に再婚という形で母の覚悟を踏みにじらせようとしたからだったのだ。並大抵の覚悟ではないものを俺を育てて背負ってきたのだ一人で。あのときもう母はそれに押し潰されそうだったのだ。あの涙は母が見せた唯一の弱さで本当は寂しくて寂しくて堪らなかったのだと感じた。しかしながらそれを家族として言わない母に家族として認められていないのではと感じてしまう所もあって釈然としないのも事実だ。そういう所で俺はまた孤独感を味わってしまう。

「零よ、ガスマスクを忘れた。取って来てくれ」

「アンタ戦場で何する気?!」
とにもかくにも女というものはやはりよく分からない。




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